世界的な株高が続く背景
2021年は日経平均株価が2月に3万円を突破し、米国株も史上最高値更新が続いています。私の身の回りで今まで株式投資に関心がなかった人たちの中でも、そろそろ株式投資を始めたいという人が増えてきているような気がします。
現在は世界的な金融緩和や財政投資の拡大が続いているところですので、今後さらに株価が上昇していくと予想しても良い局面かと思います(もちろん、将来のどこかの時点でインフレなどが問題になり、金融緩和が終わって、その後に金融引き締めに転換するところで株価が下がる可能性を頭に入れておく必要はあるわけですが)。
初心者にとって株式の売買判断が難しい理由とは
ただ、人間の心理を考慮すると、初心者にとって上昇し続けている、しかも史上最高値を更新している株を購入するのは、かなりの抵抗感があるのも事実だと思います。普段の買い物では値頃感をもとに売買の判断をしているので、つい株式市場でも値頃感をもとに売買の判断をしてしまいがちです。
例えば、昨日、八百屋でキャベツが200円で売られていました。ところが今日見たら特売で100円になっていた。「安い!だから買おう」というように値頃感で判断するのが日常の売買基準だと思います。そして、つい株式投資でも同様に値頃感で売買判断をしてしまいがちです。しかし、株の売買判断をこれでやると上手くいかないことが多いのも事実です。
というのも、株式投資で一番重要なことの1つはトレンドであり、トレンドは1回発生すると長引く傾向があるためです。例えば、ある銘柄を見たら、2週間前に1,100円の株価だったところ、今日見たら1,000円だった。「安い!だから買おう」という風に値頃感で買ってしまうケースです。
もちろん、このような場合でも上手くいくケースもありますし、数年以上の超長期投資の場合、この方法が正しいとも言えますが、投資期間が短期になればなるほど失敗の可能性が高まるようにも思います。株価のトレンドは長続きするものですから、2週間前に1,100円だった銘柄が今日1,000円になっているとすると、下落トレンドに入っている可能性があるのです。つまり、そこで買うことは当面下落トレンドに乗ることになってしまいますので、損をする可能性が高まると考えられます。
中国株は長期的に注目出来るか、2大銘柄アリババ、テンセントの動向とは
心理的にハードルがあるために株価が高いタイミングから買い始めるのは難しいでしょう。そこで注目したいのが現在の中国株です。中国株というと不安定なイメージを持たれる方も少なからずいらっしゃると思います。確かに中国当局の意向で株価が急激に変動する可能性があるなど、先進国の株式投資よりも不安定な側面もあります。しかし、時価総額の上位銘柄に限って言えばそんなことはありません。
具体的には、中国株で時価総額がダントツに大きい2大銘柄はテンセント(00700)とアリババ(09988)の2大IT企業です。この2銘柄は米国のGAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と同様に本稿執筆時点では世界の時価総額ランキングのトップ10位以内に入っています。これらの企業は巨大な時価総額を活用して、株式交換や調達資金によってイノベーティブなハイテク企業を買収し、自社の価値をより高めてきました。
また、株式報酬を従業員に渡すことで、国内最優秀のハイテク人材を、キャッシュを動かさずに維持できています。そして、これらの企業の株価推移を長期で俯瞰すると、時折調整はあるものの成長が続いています。つまり時価総額の規模の大きさだけでも他社を上回る優位性があると言ってもよいでしょう。
もちろん、企業業績の拡大も続いています。たとえば、アリババを見ると、これだけの規模になっても成長スピードが下がらず、採算に乗っているコア事業は非常に高い利益率をもたらしています。
アリババの強みはマーケットプレイスと充実した各種実店舗、そして自慢の物流を繋いだ小売の仕組みであり、品揃えという供給網と決済機能を合わせた小売インフラは強力です。さらに各種ネットサービスが消費者と売り手を繋ぐ役目を果たしています。
アリババのeコマースプラットフォーム「Taobao Deals(淘宝天天特売)」のモバイルMAU(月間利用者数)が1億人となり、「Taobao Live(淘宝直播)」、「Taobao Grocery(淘宝菜)」などの新サービスも急速に育っています。先行投資がなければもっと利益を残せたはずですが、現状においては、先行投資による将来の成長に重点を置く段階です。つまり、その先行投資が実った時には、同社はさらに評価されても良いはずです。同じようなことはテンセントについても言えます。
ところが、アリババもテンセントも足元の株価推移は冴えない動きとなっています。株価が冴えない理由は大きく分けて理由は2つあります。1つは中国当局が体制批判を懸念し、ITハイテク大手への監視体制を強化していることです。そしてもう1つはナスダックを中心にグロース株が世界的に調整していたことです。しかし、世界的なグロース株の調整は終わり、株価は反発基調にあります。また、中国当局の動きについてはアリババが巨額の制裁金を支払うことになり、それで一服したとの見方もあります。
この2つの理由によって株価は軟調に推移していますが、それだけに成長力から見た現在の株価は割安だと私はみています。これらのITハイテク大手のファンダメンタルズは極めて強く、調整を乗り越えた先に次の投資機会があると思います。