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Q.Fedの国債購入と日銀のイールドカーブ・コントロールは同じ?
日本のメディアで、Fedが月800億ドルの資産(国債)の購入継続を3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で決定したと報道していました。しかし、実際のどの年限の国債を購入しているのか分かりません。
2年債も10年債も買っていますか?もしそうならば日銀のYCC(イールドカーブ・コントロール)と同じのような気がするのですが、認識違いでしょうか。
回答
FEDのオペレーションは、FEDの事務局的な役割を担うNY連銀がおこなっています。そのためFRBのウェブサイトをみても国債購入の実際のところはわかりません。NY連銀のウェブサイトから必要な情報をとるのは一般の方では難しいと思いますが、NY連銀が購入した国債の銘柄ごとの詳細はNY連銀のウェブサイトでご覧いただけます(※1)。幅広い年限の国債を購入していることがわかります。なお、買入れ予定(スケジュール、年限、金額)は事前に発表されています。(※2)買入れに関するFAQもウェブサイトに掲載されています。(※3)
日欧米の中央銀行の方針は、何が違うのか
「日銀のYCCと同じのような気がするのですが、認識違いでしょうか。」とご質問いただきましたが、ざっくり言って、いま日欧米の中央銀行の方針は基本的に同じです。ただ、日銀は明確に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と謳ってやっているところが違います。
さらに日銀は「2016年1月のマイナス金利導入以降の経験により、日本銀行当座預金へのマイナス金利適用と長期国債の買入れの組み合わせが有効であることが明らかになりました。これに加えて、指値オペや連続指値オペといった手段を備えることで、長短金利操作の円滑な実施を図っています。」と、国債購入だけでYC(イールドカーブ)をコントロールするのではないとも言っています。
一方、FEDは戦時中のペギング政策をしているわけではなく、あくまで量的緩和の手段として国債を買っているわけです。結果として金利は低位に押し下げられますが、主眼は量=マネーを出すことに置かれています。ですから、実際に2020年夏から長期金利は一本調子に上昇してきましたがFEDは静観しています。金利のコントロールがFEDの目標なら手を打っているはずです。そういう意味で、日銀のYCCとFEDの国債購入は違うものと言えますが、前述の通り、ほとんど同じと言えば同じです。
(※1)NY連銀が購入した国債の銘柄ごとの詳細
https://www.newyorkfed.org/markets/desk-operations/treasury-securities
(※2)NY連銀:国債買入れ予定(スケジュール、年限、金額)のスケジュール
https://www.newyorkfed.org/markets/domestic-market-operations/monetary-policy-implementation/treasury-securities/treasury-securities-operational-details
(※3)NY連銀:国債買入れFAQ
https://www.newyorkfed.org/markets/treasury-reinvestments-purchases-faq