銅価格が正しければ、長期金利は3%まで上昇?

これまで米国株式市場を強烈なまでに牽引してきたハイテク株の足元がぐらつき始めている。米国株式市場におけるグロース株とバリュー株のパフォーマンスのギャップは2000年のハイテクバブルを大きく上回る水準にまで開いていた。ところが、2月、長期金利の急激な変動をきっかけに、この流れが逆回転し始めている。

2月24日付のブルームバーグの記事「金利上昇で変わる米株市場、ハイテク銘柄から1兆ドル吹き飛ぶ」によると、金利上昇に伴い、ハイテク銘柄中心のナスダックからの資金流失が続いており、バリュー株に対するグロース株の2月の月間パフォーマンスはITバブル期以降で最悪となったと言う。

【図表1】銅価格/金価格と米10年債利回りの推移
出所:ゼロヘッジ

原油価格や穀物価格などコモディティ価格が上昇しており、インフレ懸念が高まっている。銅価格やニッケル相場も高騰している。銅価格は経済の先行指標とされているが、金の価格に対して銅価格が高騰する中、その指標との相関性が指摘されているのが米10年債利回りの動きである。銅価格が正しいとすれば、利回りは2021年中に3%に達する可能性もありそうだ。

インフレの足音は着実に近づいてきているように思われる。一過性のものであれ、長期的なものであれ、何らかの種類のインフレが発生する可能性が高いと言われてきたが、いくつかの指標の中ではっきりと見られるようになってきた。JPモルガンは、コモディティにおける長期のダウンサイクルは終わり、新たなコモディティの上昇、特に原油の上昇サイクルが始まったと指摘している。世界は次のコモディティの「スーパーサイクル」に突入したという予測である。

過去100年間で、一般的に4回のコモディティスーパーサイクルがあったと言われている。前回の1つは1996年に始まった。そのスーパーサイクルは2008年(拡大の12年後)にピークを迎え、2020年(12年の収縮後)に底を打ち、新しいスーパーサイクルの上昇局面に入ったというものだ。

【図表2】原油のスーパーサイクルとそのドライバー
出所:ゼロヘッジ

1996年からのスーパーサイクルを牽引した重要なドライバーは、中国を含む新興国の経済的な台頭であった。当時、米ドルは弱含んでおり、資産運用会社はポートフォリオを分散させるためにコモディティへのエクスポージャーを追加するケースが増えていた。

その後、2008年の世界的な景気後退は、欧州(2011年)と中国(2015年)のさらなる減速と相まって、コモディティ価格を下押しし、トランプ前米政権時代の「貿易戦争」や、それに続く世界的な製造業の不況、そして原油価格を史上初めてマイナスの領域に送り込んだ悲惨なコロナ禍を経て、12年間のダウンサイクル(価格下落サイクル)の終わりを告げたと見ている。

インフレ期に強いのはエネルギー株

金利の動きとインフレへの期待の高まりが株式市場に一様に打撃を与える訳ではない。コモディティ価格の上昇によってメリットを受ける業界や企業もある。2021年に入り、目覚ましい反発を見せているのがエネルギー株である。テキサスを襲った大寒波の影響などもあり、エネルギーに対する需要が急激に高まっている。

ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイがシェブロン(CVX)を新たにポートフォリオに追加していたことも話題となった。シェブロン以外にも、エクソンモービル(XOM)、サンコー・エナジー(SU)、BP(BP)、マゼラン・ミッドストリーム・パートナーズ(MMP)、エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ(EPD)など、関連企業の株価はいずれもしっかりとした展開だ。

【図表3】S&P500エネルギーセクターは1年前に比べて17%以上、上昇している
出所:S&P Dow Jones Indices

例えば、米国とカナダで天然ガス・原油の探鉱、開発、生産、販売を行うEOG リソーシズ(EOG)は、シェール生産者としても最大だ。年初に50ドルを割り込んでいた株価は直近では70ドル台まで上昇している。EOGは最もコストを抑えたシェール生産の1つでもあり、原油価格が1バレル約36ドルで収支均衡となる。現在、原油価格が損益分岐点を大きく上回っているため、EOGはフリーキャッシュフローを負債の返済、自社株買い、さらには配当金の増額に充てることを計画していると言う。

過去のデータによれば消費者物価の上昇期にエネルギー株は実績を上げる傾向にあることがわかっている。2月22日付のブルームバーグの記事「インフレ不安高まる中の株式投資-ゴールドマンやソシエテのお勧めは」によると、ネッド・デービス・リサーチの調査から、エネルギー株は過去50年にわたり一貫して高インフレ時の勝ち組だったと言う。同記事はネッド・デービスによれば、「1972年以降の高インフレ期9回中7回で、エネルギー株はS&P500種株価指数を中央値で14ポイント上回った」と伝えている。

出遅れのリチウム関連に投資妙味あり?

米カリフォルニア州が2035年までに州内におけるガソリン車やガソリントラックの新車販売を停止することを決定した他、欧州では2021年から大幅な二酸化炭素(CO2)排出削減を求める新規制を本格的に導入する。英国はガソリン車やディーゼル車の新規販売を2035年に禁止すると表明している。さらに一大市場である中国においても2025年以降、新エネルギー車の販売割合を現行の5倍程度まで引き上げることが検討されている。

世界的な電気自動車(EV)シフトは止めようのない潮流になっている。そこで世界的に湧き起こっているのがEVブームである。しかし、バッテリーの主要部材のひとつであるリチウムはその波から置き去りにされていた。

リチウムの主要生産者の1つであるアルベマール(ALB)は、EV需要が爆発的に増加する中、価格が回復して拡張のための資金を調達しなければ、2025年の秋までに世界のリチウム供給が大幅に不足する可能性があるとの警告を発した。

【図表4】リチウム価格の推移
出所:TRADING ECONOMICS

リチウム価格は長い低迷が続いており、既存の生産者たちは新たな投資が出来ない状態が続いていた。新たな投資が不足すれば、リチウムが足りなくなり、EV車の販売価格が急騰するリスクも抱えていた。ところが2021年に入り、コモディティ価格全般が上昇する中、リチウム価格も底打ち反転の動きを見せている。

アルベマールは車載用電池向けに炭酸リチウムの生産能力を拡大すると報じられている。米ネバタ州にある生産拠点では年5000トンから1万トンに倍増させる他、豪州とチリで合わせて10万トンを超える増産計画を進めている。

米国市場に上場するリチウム大手はこのアルベマールとライベント(LTHM)の2社である。EV技術を巡って多くの企業が熾烈な競争をしている。主要部材の1つであるリチウムはバッテリーの命運を握っていると言っても過言ではない。リチウム価格が上昇し、新たな設備投資が増えて生産が拡大すれば、出遅れが著しかったリチウム大手2社にとっては強い追い風となるであろう。

石原順の注目5銘柄

シェブロン(CVX)
出所:トレードステーション
エクソンモービル(XOM)
出所:トレードステーション
EOGリソーシズ(EOG)
出所:トレードステーション
アルベマール(ALB)
出所:トレードステーション
ライベント(LTHM)
出所:トレードステーション