毎年恒例、バークシャー・ハサウェイの「株主への手紙」が公開
先週末バフェットファンが毎年楽しみにしている米バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の「株主への手紙」が公開されました。その中でバフェット氏は、バークシャーの4つの「宝石」と呼ぶ4つの事業を紹介しています。そのうち3つの事業は自分で運命をコントロールでき、残りの1つは自分で運命を決められないものであると言います。
バークシャーの4つの「宝石」、1つ目は
1つ目の運命を決めることができる「宝石」とは、53年の歴史があるバークシャー事業のコアである損害保険部門です。バークシャーの損害保険部門事業の保険料収入は全米で2位であり、マーケットシェアは6.51%の規模となっています。
保険部門で最も有名なのは米国のテレビを見ているとよく出てくる「話すヤモリ(GECKO)」のキャクラターのCMでおなじみの保険会社GEICO(ガイコ)です。バフェット氏によると、バークシャーは、同業他社と比べても莫大な現金を保有し、運用していると言います。
これに加えて、毎年バークシャーの保険外の事業の利益から得る莫大な現金の投資も行っています。そのためバークシャーは株式投資に力を入れることができる一方、多くの同業他社は業界の規制や格付けを気にしなければならないため、債券に特化した投資を余儀なくされていると説明しています。
現金は王様(キャッシュ・イズ・キング)だが、債券には投資妙味なし
バフェット氏は、「1981年9月に15.8%あった米10年債利回りが2020年末には94%下落し、0.93%まで落ち込んだことを信じられますか?」と株主に問いかけています。
この事態は世界的に債券投資を行っている年金基金、保険会社、退職者たちにとって暗い将来が待っていることを示唆しています。このような中、一部の債券投資家は、利回りは高いものの、格付けの低い債券に投資をして、なけなしのリターンを稼ごうとしていると言います。30年前に米国では貯蓄金融機関がそのような投資行動を取り、業界全体が破綻したという苦い歴史があります。ここにバークシャーの優位性があるように思えます。
「宝石」の2つ目、3つ目は
2つ目と、3つ目に価値のある資産は、バークシャーが100%保有するBNSF(バーリントン・ノーザン・サンタフェ)と91%保有するBHE(バークシャー・ハサウェイ・エネルギー)です。
BNSFは貨物の輸送量で米国最大の鉄道会社であり、1年間で米国の長距離輸送貨物の約15%を輸送していると言われています。これは鉄道、トラック等の地上だけでなく、空輸貨物も含めてのことです。
2020年、この2つの事業は83億ドル(1ドル=106.4円で換算すると約8830億円)の収益を稼いだ大事な事業です。BNSFは公共事業ですが、過去21年間で年間の収益を1.22億ドルから34億ドルへと成長させており、バフェット氏は公共事業として「非常に珍しい」事業部門だとしています。
4つ目の「宝石」、アップル株と自社株買いの魅力
4つ番目の宝石はアップル(AAPL)株です。ここでバフェット氏は自身の投資哲学を披露しています。
バークシャーは、2016年にアップルに投資を開始し、2018年には10億株を超えるアップル株を保有するに至りました。当初アップルのバークシャーの保有比率は5.2%で、バークシャーのアップル株の簿価は360億ドルです。その後バークシャーは、2020年に保有しているアップル株の110億ドル分を売却しました(バークシャーは一般勘定口座でアップル株を大量保有しており、売却したのは分けて運用されている別勘定の口座分です)。
これでアップルのバークシャー全体の保有比率は減るはずなのですが、実際はと言うと、逆に5.4%に増えているのです。その訳はアップルの積極的な自社株買いによるものです。つまり、株主還元の一環として、自社株買いを行った結果、発行済み株式数が減り、持株比率が高まったことによるものです。
バフェット氏は、このことを「バークシャーにとって追加コストなく、アップルという素晴らしい会社の恩恵をより多く受けることができた」と高く評価しています。
加えて、バークシャーは過去2.5年間でバークシャー・ハサウェイの自社株買いを行っています。これにより、バークシャーの株主は間接的にですが、2018年7月当時と比べ10%以上多くのアップルの資産と将来の収益の恩恵を受けることになり、これはすべて自社株買いのなせる技であるとしています。
この説明を読んでわかる通り、バフェット氏は自社株買いには大賛成です。アップルが引き続き自社株買いを行っていくことに触れると同時に、バークシャーも引き続き自社株買いを継続していくと言明しています。
バフェット氏は、米国の喜劇女優のメイ・ウエスト氏の言葉を引用し、自社株買いがいかに素晴らしいことかを説いています。
「良いことをやり過ぎると、素晴らしいことになります」と。
※マネックス証券では、バークシャー・ハサウェイ クラスB(NYSE: BRK.B)の取扱いはありますが、バークシャー・ハサウェイ クラスA(NYSE: BRK.A)の取扱いはしておりません。