住宅ローンの金利の決まり方
金融機関のポスターなどで住宅ローンの金利を見かけて、その金融機関のウェブサイトで確認したら「書かれている金利が全く違う!」と思ったことはありませんか? 例えば、ポスターには「変動金利0.6%」と書いてあったにもかかわらず、ウェブサイトを見ると「変動金利2.475%」などと食い違うかたちです。あまりの利率の差に驚くこともあるかもしれません。
実は住宅ローンの金利は少しわかりにくい仕組みになっています。「実際にどの金利で借りられるの?」といった疑問について、解説していきたいと思います。
まず、住宅ローンの金利には3つの表示—「基準金利」、「優遇金利」、「実質金利」があります。
(1)基準金利
基準金利は店頭金利とも呼ばれ、金融機関が市場の金利などをもとに、それぞれ決めています。現在(2021年1月時点)では2.5%程度のところが多く、住宅ローンの変動金利のイメージとは大きくかけ離れているのではないでしょうか。
(2)優遇金利
優遇金利は引下げ金利などとも呼ばれています。金融機関が決めているいくつかの要件を満たす人は、基準金利から引下げを優遇してもらえる金利です。
引下幅は金融機関や借入れをする人の要件によって変わってきます。一般的には、年収が高い・勤続年数が長い・頭金が多い・給料振込口座として指定するなど各金融機関の定める要件を満たすと優遇幅が広がります。
ただし、ローン返済の延滞などがある場合は優遇金利が取り消されて、基準金利での返済になる可能性もあります。借入期間中に支払いが難しくなるような事態になったときは、延滞になる前に必ず金融機関に相談しましょう。
(3)実質金利
実質金利は借入金利や適用金利などとも呼ばれています。実際に適用されるのがこの金利です。引下げが優遇される期間については「全期間(通期)」引下げるケースや、「当初〇年間」引下げなど契約で決まっているケースがあります。金融機関のポスターなどの多くでは、この引き下げ優遇後の最も安い金利が表示されています。すべての人が同様に優遇されるわけではないのです。そのため、必ずしもこの金利で借り入れることができるわけではないことに注意が必要です。
住宅ローンの変動金利は(1)の基準金利が変動したときに実際の自分の金利が変動します。10年前と今では実質金利は0.5%近く違っていることもありますが、実は基準金利はほとんど変わっていません。優遇金利の幅が広がったため、実質金利が安く借入れできている人が増えているということです。
住宅ローンの金利タイプと特徴
住宅ローンの金利タイプは大きく分けて3つ—「固定金利型」、「固定金利期間選択型」、「変動金利型」があります。
(1)固定金利型
固定金利型は全期間固定金利などと言われることもあります。契約した時点で借入期間の金利がずっと固定されるタイプのことです。市場の金利が上がってもローンの金利が上がることはありませんが、逆に市場金利が下がってもローンの金利が下がることはありません。フラット35はこの固定金利の代表的なローンです。
(2)固定金利期間選択型
固定金利期間選択型は借り入れた当初の一定期間、金利を固定する期間を選択できるタイプです。よく見かけるのは10年固定金利ですが、2年固定、3年固定、5年固定などを選択できるプランもあります。一般的に固定期間が長くなるほど金利は高くなります。固定期間が終了すると自動的に変動金利になるものや、再び固定金利を選べるものもあります。
(3)変動金利型
変動金利は基準金利の変動に合わせて金利が見直されるタイプです。変動金利は原則、年に2回金利が見直されます。とは言え、金利が変わってすぐに返済額が変わるのではなく、5年間は返済額の変更がありません。このルールを一般的に「5年ルール」と呼びます。
金利が上がっていた場合は6年目から返済金額が変わります。この時に大幅に返済額が増えることを防ぐために、返済額の上昇は元の金額の125%を超えないようにするという「125%ルール」もあります。返済額の急上昇を押さえられる一方で、返済に占める利息の割合が多くなるため元本の減りが遅れるなどのデメリットもあります。
また、5年ルールや125%ルールは全ての変動金利で適用されるものではなく、金融機関によってはこれらの適用がないこともありますので、契約前にしっかりと確認をしておきましょう。
住宅金融支援機構の調査によると、2020年5月調査では約60%の人が変動金利を選択、約27%が固定金利期間選択型、約13%が固定金利型を選択しているとのことです。
それぞれの金利タイプの注意点
住宅ローン金利の選び方で最も大事なのは、借入期間を通して安心して払い続けられることです。そのため、それぞれの金利タイプの注意点をお伝えしたいと思います。
固定金利型の注意点
固定金利型は当初の金利がずっと続くため、市場の金利に変動があっても途中で返済額が変わることはありません。住宅ローンは長期返済が続きますので、固定させておくことによって返済額が変動する不確実性を取り除くことができます。
今は十分に返済できる金額だとしても、今後働き方が変わったり、子どもの教育費が増えるなどの変化に対応するのが難しいと感じる方や、将来的に子どもの数の増減が予想されるなどライフプランに選択肢が多い方は固定させておくのも1つの安心材料となるでしょう。
全期間固定金利は変動金利に比べると金利が高くなります。無理をして返済金額を設定してしまうと、ずっとその支払いを続けていくことになりますので、借入額や期間などに注意して契約しましょう。
固定金利期間選択型の注意点
変動の金利の低さと固定金利の安心感を併せ持つのが固定金利期間選択型です。固定金利期間中は金利の変動がないため返済額が増える心配がありません。当面は返済額が上がるのは困るけれど全期間固定にまではしなくてもいいと考える方や、そもそもの借入期間が短い方などは選択肢に入るでしょう。
ただし固定期間終了後の金利がどうなるかには注意が必要です。予想以上に金利が高くなり、急に返済額の負担が大きくならないよう、固定期間が終了したときに次の金利を選択できるのか、どのタイミングで申し出が必要なのかをあらかじめ理解しておきましょう。
教育費のピークの時期などに住宅ローンの返済負担が増えないようにライフプランをよく考えておくことも大事です。
変動金利型の注意点
変動金利型は他の借入方法より利率が低いことがメリットです。これから市場の金利が下降するような局面では、その後市場の金利が下がったときの変化に合わせて、ローンの返済額を下げることもできます。
その一方、市場の金利が上がるときは返済額が上がります。家計の中で大きな支出である住宅費が増えると生活が苦しくなる方や、貯蓄にゆとりがなく住居費の変動に耐えられない方にとって、変動金利は注意が必要です。
いずれの金利方式も全てに人にとって「これがベスト」というものはありません。現在の家計の状況や家族の年齢・働き方、ローン以外の支出や貯蓄状況をよく考え、長期のライフプラン見据えたうえで金利タイプを選択するようにしましょう。