為替、株式、金利の各市場は密接な関係がある
株式市場では日経平均株価が約30年半ぶりに3万円を超えて注目されています。そこで、改めて株式をはじめとする各相場の値動きの基本について考えてみましょう。教科書的な解釈と実際の相場とは異なることも多くありますが、基本を知ることで突発的な動きについても理解しやすくなります。
FX投資と株式投資は異なる投資のように見えるかもしれません。しかし、その値動きには密接な関係があります。超低金利が続いているため、金利の存在感が薄れていますが、為替と株の値動きは金利の動きとも深い関係があります。景気の波である景気循環と一緒に覚えましょう。
景気循環と各市場の関係における基本
景気上昇(回復)
株価: 先行きの期待先行で上昇↑
金利: 設備投資、住宅投資などの資金需要が高まるに伴い上昇↑
通貨: 株式を含めた実需を含め、買われる傾向↑
景気過熱気味→「山」
株価: 「買いが買いを呼ぶ」こともあり、実際の企業の実力以上に上昇することも↑
金利: インフレ対策のため中央銀行による利上げ↑
通貨: 一般に2国間の金利の高い方の通貨が買われる傾向↑
※ 株価上昇の局面においても実体経済でデフレから脱却できないと実際には金利上昇がない。利上げもできない。
景気後退
株価: 景気後退の気配を先取りして下落↓
金利: 消費者の購買行動が控えられ、資金需要が減り下落↓
通貨: 実需も減り、景気後退の気配、2国間金利差の縮小などから通貨が売られる傾向↓
景気対策
株価: 景気対策により市場に資金供給が増えると先行期待↑
金利: 利下げにより民間の資金需要の後押し↓
通貨: 景気刺激策への期待により↑ 利下げによる2国間金利差の縮小で↓
景気対策(刺激策)により「谷」を脱することができれば、景気回復期へ。
景気循環と各市場の動きは長期的に見ると、上記のような連動が見られます。しかし、各市場の反応の大きさやタイミングは異なりますし、他の要因によっても変わります。同じニュース(政策など)に対しても、投資家がどのように考えているかによって、また他の市場(株式⇔FX⇔金利)の動きによっては正反対の動きをすることもあります。
株式市場は実際のニュースや経済にも反応しますが、期待で動く先取りの反応が大きいです。それを知るためには市場参加者の「期待」を事前に察知する必要があり、相場が動いてから追いかけると尻尾を掴まされることになりかねません。もちろん為替市場の動きも「期待」によるところが大きく、情報を多く集めることが大切です。
現在の株価上昇の理由は?
現在、実体経済と乖離しながらも日経平均株価が3万円台を回復するまで上昇した背景の1つとして、景気対策として市場に大量の資金供給がされ、行き先(設備投資等)がなく余ったお金が株式市場に流れ込んで膨らんでいることが挙げられます。
それは好調な米国株式市場も同様です。コロナショックで急落した後、V字回復を見せ、米主要株価指数はそろって高値更新をしています。もちろん資金供給による金余り以外にも、個々の株価を見ればコロナ禍の影響で急速に伸びた企業も多くあることが分かります。
一般に金利が上昇すると株価が下がるというセオリーがあります。ただし、これも状況により金利も株価も上昇、または下落という場面があることにも注意してください。
米ドル安の背景
為替について述べると、米ドル/円はここしばらく大きな値動きがなく、米ドル安傾向が続いています。米国株高の要因の1つである「金余り(量的緩和)」のために、長期金利の継続的な上昇に期待しきれず(ただし景気回復を十分に期待できる状況になれば別です)、大幅な米ドル買い=米ドル高にはつながりにくいかもしれません。
日米とも実体から乖離したままの株高、続く超低金利…など、セオリー通りに行かない市場ですが、基本を知り、情報を集めることでリスクに備えることが大切だと思います。