このところ、円高基調に少し変化が生じています。一時、1ドル=102円台まで進んだ円高が、先週の為替マーケットでは、105円台半ばまで円安に戻りました。
その要因の1つは米国の金利上昇です。新型コロナウイルス対策に伴う財政支出の拡大による国債増発への懸念から米国債が売られ、長期金利が上昇する展開になりました。
また、ワクチンの接種によって新型コロナウイルス感染拡大が抑えられ、グローバルに実体経済の改善が進むことへの期待から、景気回復による「良い金利上昇」を予想する向きもあります。
米国の長期金利上昇によって、日銀のイールドカーブ・コントロールで長期金利が低位安定している日本との金利差が拡大し、米ドル買いが進んだと考えられています。
日本人の外貨建て資産比率は低すぎる?
日銀の統計データによれば、日本人の個人金融資産は1900兆円を超えていますが、その9割以上が円資産となっています。外貨建て資産への投資を始める人は少しずつ増えてきていますが、円資産100%で、外貨建て資産を全く保有しない人の比率もかなり高くなっています。
外貨建て資産の比率は、少しずつ高くなっているようですが、そのペースはまだ十分とは言えません。
円資産と外貨建て資産のバランス
円高になるか円安になるかを予想するのは簡単ではありません。
もし全く予想できず、五分五分の状態であれば、資産の半分を外貨で保有するのが合理的だと私は考えます。
円高の可能性が高いと思えば、円資産の比率を高めにし、逆に円安の可能性が高いと考えれば外貨建て資産の比率を高めるなど、調整すると良いでしょう。
つまり、円高か円安か予測できないから外貨建て資産への投資をしないのではなく、様々な可能性に備えて外貨も保有すべきだと思います。
計画的に外貨建て資産を増やす方法
では、具体的にどのように外貨建て資産を増やしていけば良いのでしょうか。
私が活用している外貨建て金融商品は、先進国株式や新興国株式に投資をする低コストのインデックスファンドです。金融機関によっては、販売手数料がかからず、年間の信託報酬も0.2%以下で運用可能な外国株式に投資できる投資信託が揃っています。
このような投資信託を活用し、定額積立方式で時間を分散させて残高を積み上げていくのがベストな方法だと私は思います。
ただし、毎月の積立金額が少額ですと、いつまでたっても全体の外貨残高が増えません。現在保有している円資産に関しては、1年ぐらいを目処に、目標とする外貨建て資産比率まで、計画的に高めていくと良いでしょう。
例えば、既に保有している円資産のうち100万円を外貨にシフトしようと検討しているとしましょう。その場合、毎月10万円ずつ積み立てれば、10ヶ月で目標金額に到達することになります。
先進国株式のインデックスファンドと新興国株式のインデックスファンドを、それぞれ5万円ずつ積み立てていくのも1つの方法です。
円安における懸念
私は日本人投資家にとって、どちらかと言うと円安のほうが懸念されるのではないかと思っています。円安とは円の価値が下がっていくことです。グローバルで見た収入が実質的に減り、購買力低下によって日本人の生活水準も下がることが懸念されるからです。
円安をヘッジするためにも外貨建て資産を保有しておくべきだと私は思います。これは円高のうちにやっておかなければ意味がないのです。
円高を恐れて外貨建て資産を保有しないことは、円安リスクを取っているとも考えられます。そのことを念頭に、外貨建て資産への投資について検討してみてはいかがでしょうか。