「東京オリンピック・パラリンピックはSDGsに本格的に取り組む初めてのオリンピック・パラリンピックになる」―これは、東京オリパラ組織委員会の森喜朗会長の2018年のコメントです。手には、SDGsの17のゴールが描かれたボールを持ち、胸にはSDGsバッジを付けての登壇でした。

これに対して、先週の森氏の発言は衝撃的でした。私が新人で、女は座敷に膝立ちでお酌がデフォルトの太古の昔ならまだしも、令和のこの時代でもこんなことが、と信じられない気持ちです。今回は、森氏だけでなく周囲も笑って聞いていたというのがますます残念です。

報道はすぐに収まってしまうのでしょうが、それによって、「こうした考え方は容認される」という間違ったスタンダードが出来てしまうことが心配です。SDGsが市場で万国共通の尺度になっていく中で、日本が世界から遅れる要因を増やすことになりかねません。

しかも、女性活躍は、“お飾り”ではなく、長期的には本質的な面でもプラスとなり得ます。実際、問題のラグビー協会では、女性理事たちの議論がファン層拡大などの変革をもたらしたと聞きます。実業界でも、女性に活躍してもらえば男性だけで回す場合の倍のリソースを生かせることになりますし、次世代で高い才能を広く採用する助けになるでしょう。

一方、今のSDGs指標には難点も多く、高評価の企業の中にも、今回の件を軽く受け流す“仮面”SDGsの企業も存在するような気がします。その点、社会人生活が長い方々の多くが、「数分話すと、その人(企業)が女性を本当に公平に見ているのかどうかが何となくわかる」と言います。取り組みの本気度を知るには、きれいにまとまったIR資料を見るよりも、その会社に話を聞くのが一番です。みなさんも、投資先に、例えば今回の問題についてどう思うか訊ねてみると、SDGsの取り組みに関する“リトマス試験紙”になるかもしれません。