2020年12月に閣議決定された「令和3年度税制改正大綱」には、消費税引き上げのタイミングでスタートした住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の特例措置(控除期間を従来の10年から13年に拡大)を、2022年12月末まで延長することが盛り込まれました。さらに、この特例措置の対象物件限定で、住宅ローン控除が適用される物件の条件が見直されています。

具体的には、「床面積50㎡以上」という面積基準が「同40㎡以上」に引き下げられ、適用範囲が広がりました。ただし、新しく控除の対象となる床面積40㎡以上50㎡未満の物件で控除を受けられるのは「合計所得1000万円以下」の人に限定されます(従来の住宅ローン控除は同3000万円以下)。

シングルの住宅ローンを使ったマイホーム購入を後押し

50㎡以上という従来基準は、夫婦と子どもというファミリー向けのマンションや戸建て住宅を念頭に置いたものです。しかし、近年はシングルや夫婦2人暮らしといった少人数世帯の比率が高まっていることから、面積基準を緩和するに至ったようです。

例えば、親の家に同居するシングルが、在宅勤務用のホームオフィス確保のためにマイホームを購入し、独立することを考えているケースなどでは利用価値が高いと言えるでしょう。

ちなみに、特例措置延長後の控除の適用条件は、「消費税負担が10%の不動産売買」によるもので、新築物件が「2021年9月末までに契約したもの」、分譲住宅や中古物件などは「2021年11月末までに契約したもの」、さらに「2021年1月~2022年12月末の入居期限を満たすもの」となっています。新型コロナウイルス感染拡大による入居の遅れには柔軟に対応されるようです。

医療費控除などより節税効果が大きい「税額控除」

住宅ローン控除の大きなメリットは、控除額を税額から直接差し引ける「税額控除」です。一般的な年収のサラリーマンであれば、控除額を税額計算する前の所得額から差し引く「所得控除」(医療費控除や雑損控除などがこれに該当します)よりも大きな節税効果が期待できます。

サラリーマンが住宅ローン控除を受ける場合、初年度のみ申告が必要になります(2年目以降は勤務先の年末調整で手続きできます)。融資を受けた金融機関から年末に送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」などの必要書類を揃え、作成した申告書と一緒に住所地を管轄する税務署に提出します。

来年度の税制改正で控除幅が縮小される可能性も

1つ注意したいのが、「税制改正大綱」に記載されている次の記述です。

近年は、住宅ローン控除の控除率(1%)を下回る借入金利でローンを借りている人の利用が増えています。その場合は毎年の住宅ローン控除額が住宅ローンの支払い利息を上回ることから、「適用実態等からみて国民の納得できる必要最小限のものになっているかなどの検討が望まれる」、「控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正において見直すものとする」と記載されています。

これらの記述から、次回の改正で控除幅が縮小される可能性が高いと考えられます。

住宅ローン控除の有効活用という観点では、理想的な物件に出逢えたのであれば、今回改正された控除の適用が受けられる期間内の契約を目指すのが得策かもしれません。

中には、投資の利益などを加味すると1000万円の“所得制限”をオーバーするかどうかというボーダーライン上の方もいるでしょう。しかし、そこで諦めるのはもったいないと思います。控除が使える期間中(今回改正された住宅ローン控除の場合は13年間)に所得要件を満たす年があれば控除が適用される仕組みですので、ひとまず申告を検討されることをお勧めします。