コロナ禍で「貯蓄が増えた」方も

日本生命が2020年9月に契約者を対象に「コロナ禍で変化したこと」に関する調査を実施しました。

その調査結果では、「コロナ禍をきっかけに、新しく始めたこと、または量や頻度が増えたものはありますか?」の回答として、「不用品の処分」、「オンラインショッピング」がそれぞれ30%前後みられました。その他の回答では「出前やテイクアウトの利用」、「運動」、「料理」など多数の項目で消費者の行動が変わっていることが示唆されており、コロナ禍における行動の特徴がよく表れている結果となっていました。

気になるのは同質問で「貯蓄が増えた」と回答した方が、全体的で6.7%、20代、30代では10%強の割合で見られたことです。「貯蓄が増えた」と回答した方にその理由をたずねた質問では、「お金の使い道がなかった」、「将来への不安から意識的に支出を抑えた」と回答した方がそれぞれ40%以上を占める結果になっていました。現在、緊急事態宣言が出ていることを考えると、この傾向は今後も続くのではないかと思われます。

収入減が問題視される一方で、このように「貯蓄が増えた」という方もいるようで、ますます所得格差や貯蓄格差が拡がるのではないかと考えさせられます。貯蓄が最優先というわけではありませんが、やはり貯蓄ができる状態の方には、今それができるうちに、将来の備えをしてほしいと思います。

貯蓄を増やすだけではなく、運用も視野に

「お金の使い道がなくてお金が貯まった」という方は、今後、お金を使いすぎることがないように、今のうちに「貯める仕組み」を作ってしまいましょう。ここ1年ほどの間、毎月残っていた金額の全てを貯蓄しようというのではなく、自分にとって必要な支出とそうでない支出を見極め、必要な支出を中心にお金を使っていく思考と習慣を作るのです。

今は感染予防を意識した行動を取らなくてはならないため、外食、ショッピングなども短時間で済ませる、または控えることが推奨されており、お金を使いにくい状況となっています。このような状況によってお金が貯まったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

感染拡大状況が落ち着き、以前のようにお金を使えるようになった時に「またお金が貯まらなくなった」となると、もったいないと思います。「今の支出の仕方が当たり前」という感覚を身に着けておけば、支出が多少増えたとしても貯めていけるはずです。今、恒常的に余る金額を「先取り貯金」する習慣をつけておくのも良いと思います。無理なく貯めていける仕組みを、今のうちに作っておきたいものです。(「先取り貯金」する方法については前回コラムをご覧ください)

また、将来が不安で意識的に支出を抑えた方は、その抑えた支出を継続できているでしょうか。支出を抑えてもまた元に戻るようなやり方では意味がありません。無理がないように、支出の意味やその価値を考え、必要なものにはしっかりと支出することが大切です。

そして、お金が貯まってきたら、運用も視野に入れましょう。「お金が貯まっているから、そのまま預貯金で持っておこう」というのは惜しく、少し考えものです。

初心者には積立投資や国債の運用がお勧め

未経験の方が運用を始めるには、やはり「積立投資」がお勧めです。とは言っても、積立投資できる商品はいくつもあります。初めて投資する方は、まずは投資信託のインデックスファンドの積立投資から始めてみてはいかがでしょう。

「投資を継続できるかどうか自信がない、半信半疑だ」という方は、まず通常の課税口座で投資を試してみてください。お試しをやってみて続けられそうな方や初めから長く続けたい方は、「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」や「つみたてNISA」といった国が支援する税制優遇のある資産形成の制度を活用してみましょう。

いずれも比較的リスクが少ない投資が可能で、運用益に対する20.315%の税金がかかりません。「iDeCo」は最低月5,000円、「つみたてNISA」は月100円(金融機関によって異なる)という少額からスタートできるのもポイントです。貯金を作りながら投資も始め、併走させ、徐々に慣れていくのも良いでしょう。

「投資には抵抗がある」という方は、「国債」の購入を1つの選択肢として検討してもよいでしょう。国債には固定金利の固定3年、固定5年、変動金利の変動10年があります。

金利は基準金利をもとに決められますが、現在は下限で設定されている0.05%の金利で、多くの銀行の預金金利より高く設定されています。そして、これ以上金利が下がることはありません。特に変動10年であれば、半年ごとに適用利率が変わるので、金利上昇にも対応できます。 元本保証の金融商品の中では、比較的有利な運用が可能でしょう。

日本生命の同調査では、「株式や債券への投資が増えた」という割合は4.5%ほどです。他の調査を見ても、投資を始めようとした方の割合は多かったようです。コロナ禍の生活で貯金が増えたという方が、そのまま貯金しておくのはもったいない、と私は思います。これを機に、将来に向けた資産形成のために運用を始めることを検討してみてはいかがでしょうか。