ビットコイン等の暗号資産急騰の背景

暗号資産の上昇が年明けに加速している。1月7日には、ビットコインの時価総額は史上初めて1兆ドルの大台にのせ、1ビットコイン当りの価格も4万ドル(円建てでは417万円)に達した(図表1)。

 
 

 

背景の一つは、機関投資家や企業の参画が続いていることである。昨年後半には、ペイパル、マイクロストラテジーやステートストリートなどの企業や機関投資家の参画が報じられ、上昇のきっかけとなった。これに続き、年明け1/6には、米投資会社 ワンリバー・アセットマネジメント(One River Asset Management)が、「主要取引所のコインベースを通じて史上最大規模の取引を行った」と報じられた。ワンリバーは暗号資産の運用額を2021年中に1,000億円規模まで拡大するという計画を発表している。

これらに伴い、米国の個人マネーの流出も盛んになっている。これは、例えば、暗号資産アプリのダウンロード数にも表れている。主要取引所コインベースのアプリは、1/6に、瞬間風速でアップルストアの全アプリ中全米30位まで上昇したとされる(Blockcrypto.comより)。因みに、日本の暗号資産取引所のアプリは300位近辺に主要取引所がようやく入っている程度である(Top App Ranking 400より)。いかに米国の個人の興味が高まっているかがわかる。

また、国別で見ると、足元では特に米国からの流入が増加している(図表2-1,2-2)。ユーロからの流入も、一時期は1~2%にまで落ち込んだが、足元では、日本円に迫る勢いである。1/8時点の通貨別のビットコイン取引量を見ると、前回のブームでは圧倒的だった円取引は一桁まで減少し、米ドルおよび米ドルリンクのステーブルコイン(価格が対ドルで固定されている暗号資産。USDT, USDCなどがある)からの流入が75%と圧倒的になっている。

 

当面のビットコインの予想価格

では、今後ビットコインの価格はどこまで上昇しうるのか。さまざまな金融機関や暗号資産投資家の2021年および中長期的な予想値をまとめてみた(図表3)。今年の年末の予想値は、5.5万ドル以下から31.8万ドルまでさまざまであるが、いずれも、現値からは大きな上昇を見込んでいる

予想の根拠は、大きく分けて、

① 過去とのトレンドからの推計(図表3の項番1,2,4)
② 需給関係(=マイニングが制限されているので投資家は増加している)(項番2,4,5)
③ 金の時価総額との対比(項番3,4)

の3つだ。株価のような収益に基づくバリュエーションができない中では、概ねこれらが妥当なところだろう。

 

どの手法が信頼できるのか、まだ確立したものはないが、ここでは、①と②を組み合わせた 項番2のStock-to-Flowと、①~③を複合的に組み合わせた項番4のlongforecast.comに注目したい。

Stock-to-Flowの予想は、過去の予想の当り率が高い (図表3)。手法はシンプルで、ビットコインの半減期(マイニングの報酬を下げて供給を抑制するもの。概ね4年に1度)を起点として価格の推移を見ると、半減期後の2年程度で大きく上昇するなど、概ね同様の傾向がみられる。これでいくと、2020年5月の前回半減期から19か月となる今年の年末は、1ビットコイン=10万ドル(現値の2.6倍)に達しうると試算される。

 

longforecast.comは細かく毎月の予想を出しているが、計算プロセスの詳細や過去の当り率の実績が確認しにくい。それでも、ビットコイン価格にとって重要な要素を広く織り込んでいることから注目しておきたい。2021年末の予想値は12.7万ドル(現値の3.3倍)となっている。

中長期的な予想は更に難しいが、その多くが、根拠として金の時価総額との対比を挙げている(前掲図表3)。積極財政によるドルの信認低下も要因とされている。新型コロナによる積極財政は当面続くとみられることから、ドル離れによる暗号資産の需要で、ビットコインが10万ドルをゆうに超えるという超強気予想も、あながち荒唐無稽ではなくなるかもしれない