2021年のシナリオは

前回の前編レポートでは2020年のマーケットの振り返りを行い、日経平均やマザーズ指数が世界の中で相対的に堅調だったもののその上昇は一部の銘柄が牽引したものであることをご紹介しました。

後編では2021年のマーケットのシナリオをどのように置くか、またそれに関連してどのような銘柄を注目銘柄に選定するかをご紹介してまいります。

まず、2021年もマーケット動向に影響が大きい最も大きなファクターは新型コロナウイルスの感染拡大状況だと考えます。メインシナリオとして考えているのは、既に欧米の一部で行われているワクチン接種が順調に進み、経済が正常化に向かうことです。もしこのシナリオが実現すれば、2020年にパフォーマンスが冴えなかったものの、本来稼ぐ力が強い銘柄の株価反発が期待できると考えます。

一方で、変異種の登場が指摘され世界中の感染者数拡大傾向が続くなど、コロナについて予断を持って当たることは非常にリスクが高いと言え、2020年と同様に感染が拡大し経済が麻痺状態になるリスクも十分に残っていると考えます。

結局の所、コロナウイルスの感染がどうなるか確実性の高いシナリオを置くことはできません。マーケットは来期(2022年3月期)の業績V字回復を織り込んでいますので、V字回復シナリオが崩れれば株価調整につながる可能性もありますが、その場合には今年のようにコロナウイルスの感染拡大が業績にプラスになる銘柄に資金が集中する可能性が高そうです。

そのため、2021年の注目銘柄としては①今年の業績は悪かったもののコロナ前までは非常に好業績だった銘柄②多少の割高感には目をつぶり、今年業績がよく株価も堅調だった銘柄の2つのパターンでご紹介します。

2021年の注目銘柄は

本レポートでは、①今年の業績は悪かったもののコロナ前までは非常に好業績だった銘柄についてご紹介します。具体的には以下の条件でスクリーニングしました。

・東証上場
・2019年度までの5年間の売上高と経常利益がいずれも前期比増収増益
・2020年度の会社予想は前期比で減収経常減益
・2020年の株価リターンがTOPIXを下回る

上記の条件で銘柄を抽出すると表の通り52銘柄と大変多くなってしまいました。

(出所)QUICKデータよりマネックス証券作成

中でも筆者は森永製菓(2201)、ゴールドウイン(8111)、イオンモール(8905)、大和ハウス工業(1925)、SCSK(9719)の5銘柄をピックアップしたいと思います。

※表は全てマネックス証券銘柄スカウターより

森永製菓(2201)

■企業概要
「エンゼルマーク」の菓子食品大手。菓子(チョコレート・ビスケット・キャラメル・スナック・キャンディ)、食品(ココア・デザート・ケーキミックス)、アイスクリーム、健康食品(ゼリー飲料)の製造販売。主力商品は「ハイチュウ」「森永ビスケット」「ミルクキャラメル」「チョコボール」「エンゼルパイ」「森永ココア」「inゼリー」など。スポーツを基軸にした健康分野商品の「ウイダーブランド」の販売促進とウェルネス領域の商品を中心とする次世代ブランド育成を強化。森永乳業は兄弟会社(2018年経営統合を検討→中止)。主要取引先は三菱食品。

■業績推移

 

■筆者コメント
非常に知名度の高い大手の菓子会社です。ここ数年は堅調に増収増益を続けてきましたが、コロナウイルスの影響もあり今期は減収減益(経常利益)予想です。ただ、第2四半期の決算で業績は大きく持ち直しており、今期予想に対する経常利益進捗率は既に64%の好進捗です。上方修正の目もあると考え、足元のバリュエーションであれば下値リスクは低いと考えます。

ゴールドウイン(8111)

■企業概要
スポーツアパレルメーカー。国内外ブランド製品とテクノロジー高機能繊維を中核にスポーツウエア(アウトドア、アスレティック、ウインター製品)やスポーツ用品の製造・販売。アウトドアスタイル(登山用ウェア・マリンウェア・アウトドア用品)、アスレティックスタイル(トレーニング・テニス・スイム・ゴルフ・ラグビーウェア)、ウインター商品(スキー・スノーボードウエア)が主力。主要ブランドは「GOLDWIN」の他、「スピード」「エレッセ」「ザ・ノース・フェイス」「ダンスキン」「ヘリーハンセン」など。高機能製品の商品化(デオドラントテクノロジー素材「MXP」、人工の合成クモ糸繊維素材をスパイバー社と共同開発)を推進。2019年スパイバー社とアウトドアジャケット「MOON PARKA」を共同開発。

■業績推移

 

■筆者コメント
「ザ・ノース・フェイス」などを展開するアパレルメーカーです。高い機能性とファッション性から近年消費者からブランドとしての高い信頼を得ています。4-6月は店舗閉鎖等で営業赤字に転じましたが、7-9月は黒字転換しており業績は底打ちしています。今後も長期的な成長可能性は高いと考えピックしています。

イオンモール(8905)

■企業概要
日本最大の商業施設専業デベロッパー。「イオン」を核テナントとする大規模ショッピングモールの開発、モール店舗賃貸、運営・管理(国内164モール、海外31モール、2020年8月)。都市型ファッションビルのショッピングモールOPAを傘下に持つ。イオンリート法人をはじめとするリートを活用した投資戦略を展開。その他、イオンリテールから商業施設の運営管理業務受託。中国・アセアン諸国への進出、既存モールの大規模活性化(リニューアル)推進。インバウンド対応(施設・サービス・機器システム)、デジタリゼーションに注力。2013年旗艦モール「イオンモール幕張新都心」オープン。2016年都市型ファッションビル開発・運営のOPAを完全子会社化、コミュニケーションロボット・ロボットシャトル走行を試験導入。主要取引先はイオンリテール。

■業績推移

 

■筆者コメント
その名の通りイオンモールを展開しています。日本セグメントで堅調に稼ぎ、それを海外に投資する格好で業績を伸ばしてきましたが、中国のモールを一時ほぼ全て閉鎖するなどコロナの影響が直撃し、業績や株価が低迷しています。ただ、こうした状況下でもしっかりと利益を稼ぎ出せていることは逆に安心感につながります。中国セグメントも直近四半期で黒字に戻しており今後の業績回復を期待しても良いと考えます。

大和ハウス工業(1925)

■企業概要
国内最大手の住宅総合メーカー。住宅建築(宅地開発と戸建鉄骨住宅・分譲住宅、分譲マンション、賃貸住宅)を中核に、物流施設・商業施設・医療・介護施設の建設、都市開発、ホテル・福祉施設運営等を営む。戸建住宅、賃貸住宅、マンション、住宅ストック、商業施設、事業施設の各事業セグメント。ロードサイド型流通店舗・オフィスビル・商業施設建築、福祉用ロボット・環境エネルギー・物流施設運営・ホテル運営など事業多角化。2012年準大手ゼネコンのフジタを買収。2013年不動産デベロッパーのコスモイニシア<8844>、駐車場運営・管理のダイヨシトラストを子会社化。2014年ファーストリテイリング<9983>とユニクロの物流事業で提携(2015年合弁会社設立)。2015年大和小田急建設(東証1部)を完全子会社化。2018年テクニカル電子を完全子会社化。

■業績推移

 

■筆者コメント
国内最大手の住宅総合メーカーですが、コロナ禍でオフィス需要が低迷しているほか、自社運営のホテルも足元の業績は厳しく今期の減益は避けられないでしょう。一方で戸建て事業等が堅調で安定した黒字経営は続く。来期は業績のV字回復も期待でき足元の株価は割安感があると考えます。

SCSK(9719)

■企業概要
大手ITサービス会社、住友商事の子会社。コンサルティングやシステム開発からITインフラ構築・運用、マネジメント、BPO、ハード・ソフト販売、ソリューションまでITサービスをフルラインアップで提供。製造・通信システム、流通・メディアシステム、金融システム、商社・グローバルシステム、ビジネスソリューション、モビリティシステム、プラットフォームソリューション、ITマネジメントの8セグメント。戦略的事業(車載システム、AI)、クラウド関連ビジネスと技術の拡充を推進。JIEC・ベリサーブ・Minoriソリューションズを子会社、アルゴグラフィックス<7595>を持分法適用会社に持つ。2011年住商情報システムがCSKを吸収合併(商号変更)。2017年クオカードをティーガイアに売却。2018年スマート・ファクトリー・オートメーション領域で村田製作所と協業。2019年JIECを吸収合併。2020年東証1部のMinoriソリューションズをTOBにより完全子会社化。

■業績推移

 

■筆者コメント
働きやすい企業ランキングにもランクインするなど、社員を大切にする会社として知られています。今期は減収減益予想となっていますが、決算の進捗からすると上方修正や増収増益の可能性も残されていると考えます。企業のDX化の流れは止まりそうになく、同社も恩恵を受けそうです。

2020年もマネックス証券や当レポートにご愛顧賜り本当にありがとうございました!2021年もよろしくお願いいたします。

益嶋裕