地域で一番大きい会社はどこか?
地域で一番大きい会社はどこか?というのが、しばしば話題になります。大きい会社というのが、売上ベースか、利益ベースか、(特に、非上場会社の場合は情報がまとまっていないことも多く…)なかなか答えるのが難しいところです。しかし、日本で一番売上・利益の大きい会社はトヨタ自動車(7203)であることは間違いなさそうです。
北海道の場合、直近決算で北海道電力(9509)が約7500億円、ツルハホールディングス(3391)が約8400億円、ニトリホールディングス(9843)が約6400億円、雪印メグミルク(2270)が約6100億円、非上場のJR北海道は約1700億円です。
恐らくツルハHDがトップで、北海道電力が続きますが、ニトリHDも売上が大きく伸びてきており、早晩、ニトリHDと北海道電力は逆転してしまいそうです。北海道は強い小売業の会社が多く、上場している国内の「小売業売上の上位20社」にツルハHDとニトリHDが入っています。九州からはコスモス薬品(3349)のみで、四国の会社は入っていません。北海道の会社の健闘ぶりが光ります。ちなみに人口は北海道が約530万人強、四国が約370万人、九州・沖縄が約1420万人です。
九州は九州電力(9508)の売上が約2兆円で飛びぬけており、上場会社ですとTOTO(5332)が約6000億円、そして上述のコスモス薬品が上位に入っています。国内を見渡すと、地方では電力・小売の会社が売上の上位に入っており、利益水準も考慮すると地域金融機関や地域交通の会社が「大きい会社」と言えそうです。
それでは四国最大の会社はどこでしょうか。例によって四国電力(9507)の約7300億円がトップのようですが、その他にはどこの会社が挙がるしょうか?ユニ・チャーム(8113)を思い浮かべた方も多いでしょう。ユニ・チャームは売上約7100億円、営業利益は約700億円の超優良企業です。
同じく紙産業では愛媛県の紙産業の代表で、「エリエール」で知られる大王製紙(3880)が売上約5500億円、営業利益約310億円です。非上場ですが、今治造船など造船会社を思い浮かべた方もいるかも知れません。ちなみに、徳島鳴門の大塚国際美術館で有名な大塚ホールディングス(4578)は売上約1.4兆円、営業利益約1800億円と、四国電力の倍近い規模ですが、登記上の本社は東京になってしまっています。
四国を代表する世界トップクラスの会社とは?
さて、上述の四国電力、ユニ・チャーム、大王製紙といった四国を代表する会社を純資産額ではるかに上回る四国の非上場会社があります。人口7万人ほどの徳島県阿南市に本社を置き、営業利益率は10%を超え、20%に達することもある会社です。500億円を超える水準の利益を継続し、直近純資産額は約7800億円(四国電力は約3300億円、ユニ・チャームが約4800億円、大王製紙が約2300億円です)という、とてつもない四国の優良企業です。想像のついた方も多いかも知れませんが、その会社は日亜化学工業です。
日亜化学工業は、徳島大学出身で2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二博士を中心に、20世紀中には不可能と言われていた青色LED(発光ダイオード)を開発し、白色LEDや半導体レーザーで世界トップクラスの会社です。経常利益の金額で同水準の化学セクターの会社は多いですが、日亜化学は経常利益率が直近で14%と非常に高く、20%近い水準の時期もあります。化学セクターは業績変動も激しいので、この水準の利益率をあげている会社は信越化学工業(4063)、花王(4452)、日産化学(4021)くらいです。海外売上比率で匹敵するのは信越化学くらいでしょうか。
最近では、日亜化学工業が、紫外線を照射するLEDで新型コロナウイルスを不活化し、殺菌が可能な装置を開発したということで話題になっています。新型コロナウイルスに対し、その装置を使って30秒間紫外線を照射すると99.99%不活化できるとのことです。
紫外線はもともと殺菌効果があることで知られますが、同社のその製品は紫外線の波長が長く、光出力が強いため、ウイルス殺菌効果が高く、かつ製品寿命も長いとのことです。皮膚や人体への影響、日常的な環境で効果が出るのか、といった疑問もあります。しかし、日亜化学は「より殺菌効果の強い高出力の深紫外LEDの開発に今後も注力する所存であり、新型コロナウイルスに打ち勝てる、この深紫外LEDが様々な製品に利用され、皆さまの生活に少しでもお役に立てることを期待しております」と心強く謳っており、まさに打ち勝てるものになることを期待したいと思います。
独自の技術があり、利益率が非常に高く、このような新規開発にも積極的な会社…と言うと、個人投資家の方も「こういう会社に投資したい!」と思われるかもしれません。残念ながら日亜化学は非上場のため、直接に投資ができません。
しかし、同社株を保有している上場企業がいくつかありますので、それらをご紹介します。非上場の会社でも株式の発行状況などにより、有価証券報告書を提出する必要があります。日亜化学は有価証券報告書を提出しているため、EDINETで会社の概要を確認(※)できます。(※EDINETのサイト上で「書類検索」をクリックし、社名を入力して検索すると確認できます)
日亜化学工業株を保有している上場企業
非上場会社でよく見られるように、持株組合が株主上位ですが、四国の主要銀行が同社株を保有していることが分かります。この有価証券報告書をご覧いただくと分かる通り、日亜化学工業は純資産が約8000億円で、経常利益がここ3年間で560億円から760億円、営業利益率は14-18%です。同業の時価総額から見ると、少なくとも1-2兆円の水準なのかなと思われます。(ユニ・チャームの時価総額は3兆円を超えています)すると、5%の保有株は500-1000億円の価値ということになります。
株主の時価総額を見てみると、徳島大正銀行の親会社であるトモニホールディングス(8600)が約500億円(旧徳島銀行は阿南発祥なので、阿波銀行より多いのかも知れません)、阿波銀行(8388)は約1000億円、四国銀行(8387)は約300億円です。
これら地方銀行の時価総額からすると、日亜化学株の価値は高そうです。ただ、銀行は総資産が大きいため、相対的に総資産に占める日亜化学株の割合は小さくなります。そうすると、時価総額約950億円のシチズン時計(7762)が日亜化学株の4%を保有しているというのは注目できるのではないでしょうか。シチズン時計と日亜化学工業はLEDを介して提携関係にあり、シチズン時計自身の大株主にも日亜化学の名が見られます。
以前の記事でご案内した凸版印刷(7911)が保有するリクルートホールディングス(6098)株の価値はリクルートが上場したことで明確になりました。日亜化学は上場を志向していないように見えますし、短期的に評価されることはなさそうです。しかし、このような優良資産についてチェックしてみると、さらに面白い発見がありそうです。