この記事をお読みになっている方の中には、2020年の1~12月の間に、投資している株式の配当金や、株式投資信託の分配金を受け取られた方が少なくないと思います。
そうした方には、2020年分の確定申告で、配当所得を申告することをお勧めします。
年金受給者の場合、公的年金等の収入金額が400万円以下(かつ、公的年金を含む雑所得以外の収入が20万円以下)なら申告はしなくてもいいことになっています。しかし、配当金や分配金を受け取った人なら、申告することで節税につながる可能性が大きいのです。
なぜ申告するほうが有利なのでしょうか。以下、具体的にご説明していきましょう。
総合課税にすると源泉徴収時より税率が低くなる可能性大!
配当金や分配金からは20.315%(内訳は「所得税+復興特別所得税」15.315%、「住民税」5%)が源泉徴収されます。これで原則、課税関係は終了です。とは言え、配当所得の場合、あえて申告して「総合課税」や「申告分離課税」を選ぶこともできます。
年金受給者の方にとって有利なのが、前者の「総合課税」です。申告して年金所得(雑所得)と合わせた総合課税を選択すると、平均的な年金収入(150万~200万円前後)の方であれば源泉徴収時よりも低い税率が適用されることになり、納め過ぎた分の税金が還付されるからです。
加えて、申告して総合課税を選択した際には、株式だと所得税と住民税を合わせて最大12.8%、株式投信なら同じく6.4%の「配当控除」が受けられるため、さらにお得です。
例えば、60代後半で年金収入200万円の男性が、年金の上乗せを意図してインカムゲイン投資を行い、2020年に持ち株の配当金を60万円(月額5万円)受け取っていたとしましょう。家族は専業主婦の妻、さらに社会保険料や生命保険料などの控除が8万円あったと仮定します。
この男性のケースですと、所得税の配当控除(6万円)が本来支払うべき所得税額(2万数千円)を上回ることになり、年金収入や配当金から源泉徴収された13万円強が丸ごと還付されます。
このように少なからぬ還付金が得られる可能性がありますので、多少の手間はかかっても申告しない手はありません。
「住民税は申告不要」なら国保の保険料に影響しない
中には、申告することで配当の分だけ所得が増え、国民健康保険や高齢者医療制度の保険料が上がってしまわないかと心配される方もいるでしょう。
そうしたケースでは、以前の記事でご説明したように、申告の際に「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という組み合わせを選ぶことで、住民税の課税所得などを基に計算される保険料に影響を与えずに済みます。
確定申告は払い過ぎた税金を取り戻す年に1度のチャンスです。これを機に、ご自身の年金収入や受け取った配当の金額を見直し、“払い過ぎ”がないかをチェックしてみましょう。
※本記事は、2020年12月現在の税制等に基づいて作成しています。
税制は今後変更になる可能性がありますのでご注意ください。詳細および具体的な取扱いについては税理士などの専門家にご確認ください。