気が付けばすっかり年末の足音が聞こえてきましたね!テレワークやオンライン飲み会など、仕事への取り組み方、人との向き合い方が大きく変わった1年でした。

会社員であれば毎年末に当たり前のように行われる年末調整ですが、定年退職したあとはどうしたらいいのだろう、というご質問を時折いただきます。今回は4つのご質問に回答していきたいと思います。

年末以外の定年退職で年末調整をしたほうがいい理由

――今年、定年退職しました。今年中の給与については毎年であれば会社でおこなってくれていた年末調整がされていないようです。どのように対応したらいいのでしょうか?ちなみに再就職はしておらす、ほかに所得はありません。

会社から受け取る給与や賞与は源泉徴収という形で概算で所得税が徴収されています。この概算で徴収されている1年間分の所得税を精算する手続きが年末調整です。

年末ギリギリで定年退職された方以外はその年中に受けとられた給与、賞与について年末調整がされていないので、概算で所得税が徴収されただけの状態になっています。この概算の状態では、年末調整の際に受けていた生命保険料控除、地震保険料控除や住宅ローン控除等を受けられていません。そのため確定申告していただくと、概算により納めすぎになっていた所得税の還付を受けられる可能性があります。確定申告していただくことをぜひご検討ください。

退職金の確定申告は原則的にしなくてOK。ただし例外もあるので要確認を

――定年退職に伴い退職金を受領しました。この退職金については確定申告しなくていいのでしょうか?

退職金は源泉分離課税といって、源泉徴収だけで課税関係が終了しますので原則的に確定申告する必要はありません。

ただし、退職する際に会社への提出が求められている「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合には、注意が必要です。その場合、退職金に20.42%という高い税率で源泉徴収されています。この場合には、確定申告することで正しい税率で税額計算をして、納めすぎになっている税金を還付してもらうことができます。

また紙面の都合により詳しくは説明しませんが、確定申告すると事業所得や不動産所得との通算、あるいは再就職しなかったため年間所得が小さくなり退職金について源泉徴収された金額が社会保険料控除等の影響で還付される場合もあるので検討してみましょう。

定年退職後の年金収入に対する確定申告は400万円が一つの目安

――昨年、定年退職しました。今年以降は年金収入がありますがどのようにしたらいいのでしょうか。ちなみに再就職はしていません。

定年退職後、年金支給年齢にまだ達していない、ほかに所得がないという方につきましては収入がありませんのでもちろん確定申告する必要はありません。一方でご質問の方のように、年金を受け取ることになる方も多くいらっしゃるかと思います。

その場合は収入で400万円という金額が一つの基準となります。まず年金収入が400万円を超える方につきましては必ず確定申告が必要となります。他方、年金収入が400万円以下の方につきましては、そのほかの所得が20万円以下である場合には確定申告は必要ありません。

ただし、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除といった所得控除や、住宅ローン控除、ふるさと納税による寄付金控除といった税額控除の適用を受けようとする方については確定申告されると年金収入から源泉徴収されていた所得税を還付してもらうことができます。

定年退職後に2ヶ所の会社で勤務した場合の確定申告は再就職先が行うもの

――今年3月に長年勤めたA社を定年退職しました。数か月休んだのちに経験を生かさないかと誘われ、友人が経営しているB社に7月に再就職しました。年末時点でもそのB社に勤めています。1年間に2ヶ所の会社で勤務したことになりますが確定申告が必要になるのでしょうか?

確定申告は不要です。定年退職された際に受け取られた源泉徴収票を再就職先のB社に提出してください。3月までお勤めになられたA社で受け取られた給与と、7月から12月までB社で受け取られた給与を合算して、B社で年末調整がなされます。それにて今年の給与に対する所得税の課税関係は完了です。

会社勤めをされているあいだは、「源泉徴収」、「年末調整」というと、ああ、経理部、総務部の人がやっているあれね、と少し人ごとのようにお思いの方もいるかもしれません。

退職が伴うと、ご自身で適切に判断しないと税を納めすぎになってしまう可能性がありますので、慎重に判断していただきたいと思います。

※2ヶ所の会社で勤務した場合の確定申告を再就職先が行うことは、定年退職後にかかわらず適用される。