12月の米ドル/円の特徴

明日から12月に入りますが、12月の米ドル/円は経験的には比較的よく動きます。昨年まで過去10年間の12月の米ドル/円値幅平均は3.734円(図表1参照)。ちなみに、今年の月間値幅平均は3.6円ですが、これはあの「コロナ・ショック」で10円以上に値幅が急拡大した3月を含んだ結果です(11月27日現在)。そんな3月を除いた過去10ヶ月の平均では2.929円なので、それと比較すると12月は平均的に値幅が拡大していたことがわかるでしょう。

【図表1】米ドル/円の12月値幅(2010年~)
出所:マネックストレーダーFXをもとに作成

そして、そんな12月の中でも、今年のように米大統領選挙があった年の12月は大きな値幅となってきました。過去10年間で、米大統領選挙が行われたのは2012年と2016年の2回でしたが、12月の米ドル/円の値幅はともに5円以上に拡大しました。これまでも何度か述べてきたように、4年に一度の米大統領選挙後の米ドル/円は一方向へ大きく動いてきたので、それを受けた結果だったでしょう。

以上のように、12月の米ドル/円の値幅は拡大することが多く、とくに米大統領選挙のあった年はそれが顕著だったわけです。ただし、12月にそんなふうに大相場になった場合も、大きな動きは月半ばまでというのが基本でした。

たとえば、過去10年間で12月の米ドル/円値幅トップ3は、上述のように米大統領選挙があった2012年と2016年、そして2014年でしたが、このうち2014年と2016年は、月半ばまでに12月の高安値が決まりました。要するに、12月の値幅は、半ばまでに決まったわけです。

この中で、2012年の12月は、アベノミクス円安がスタートした直後で、米ドル/円は一段高に向かい、高値は月末に記録しましたが、これは例外的な結果といえるものでした。以上からわかるのは、12月の米ドル/円は大きく動く傾向があったわけですが、それはさすがに欧米市場が薄商いになるクリスマス休暇が始まる前までが基本で、クリスマス休暇に入る月後半も大きな値動きが続くことは例外的なものでした。

当面の焦点とは?

以上、12月の米ドル/円相場の特徴について確認してきました。これを踏まえて、今年の12月の為替相場の予想を考えてみましょう。

米ドル/円は過去半年程度も、90日MA(移動平均線)を上限、それを2%下回った水準を下限としたレンジ中心の小動きが続いてきました(図表2参照)。このレンジは、足元では103.2~105.3円程度。ですから、12月大相場に向かうかは、まずこのレンジをブレークするかが最初の目安になるでしょう。

【図表2】米ドル/円の90日MAからのかい離率 (2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ところで、米ドル/円は先週末までの段階で、上述のレンジ内にとどまっていましたが、じつは豪ドル/米ドルなどは、米ドル/円の半年近くには及ばないものの、それでも過去2ヶ月ほど続いてきた90日MA±2%のレンジを豪ドル高・米ドル安方向にブレークしました(図表3参照)。

【図表3】豪ドル/米ドルの推移(2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

ユーロ/米ドルも含め、いわゆる米ドルに対する外貨の取引、ドルストレートは、テクニカルに見ると、新たな米ドル安への動きが始まった可能性が出てきました。この米ドル安への動きが今後広がり、さらに米ドル/円にも波及するかは一つ注目されるところでしょう。

これまで見てきたことからすると、この12月の米ドル/円の値幅が、過去10年間の平均3円以上、さらに5円以上といった具合に急拡大する大相場になるかの最初のハードルは、目先的には103.2~105.3円のレンジ・ブレークでしょう。

そして、経験的には、12月の大きな値動きは、クリスマス休暇に入る12月半ばまでが基本。例年予定されているクリスマス休暇前のイベントの最後は、年内最後の12月FOMC(米連邦公開市場委員会)であり、今年のそれは12月16日の予定です。

以上をまとめると、12月の米ドル/円は、月半ばのFOMCまでに、足元では103.2~105.3円のレンジをブレークできるかが、この先のシナリオで小動きが続くか、大相場に向かうかを考える上での目安になるのではないでしょうか