決着まで1ヶ月かかった2000年大統領選挙を検証

今週はいよいよ4年に一度の米大統領選挙が行われます。では、米大統領選挙を受けて、為替相場はどんな動きになるかについて、今回は考えてみたいと思います。

今回の大統領選挙は11月3日に投票が行われます。ただ、いわゆる「コロナ問題」の影響などで、開票作業に時間のかかる可能性のある郵便投票が急増していることなどもあり、勝敗の決着には時間がかかるとの見方が有力なようです。

では、実際そんなふうに来年以降の米大統領が決まらないといった「異常事態」の長期化が現実になったなら、マーケットにはどんな影響となるか。不透明感を懸念する株式市場などは急落するのでしょうか。

実際に選挙後すぐに勝敗の決着がつかなかった例として2000年の米大統領選挙がありました。では、そんな中でマーケットはどんな動きとなったか。

この2000年の米大統領選挙の投票日は11月7日でした。それまで小動きが続いていた米ドル/円は、終値ベースで見ると結果的にはこの日に107円で底を打ち、その後一段高が始まるところとなったのです(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の推移(2000年1月~2001年3月)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

この2000年の米大統領選挙で、為替政策はとくに争点ではありませんでした。ただ、2001年から始まったブッシュ政権において、大統領の経済政策顧問となる人物は、当時の米経済の課題の一つだった財政赤字の解消策として、日本などからの資本流入拡大が必要で、そのためには米ドル高が必要と主張していました。

勝敗決着後を先取りした米ドル/円=2000年の大統領選挙

事実として、2000年の米大統領選挙では、勝敗の決着がつくまで1ヶ月以上もかかりました。ただし、少なくとも為替相場を見ると、結果的には投票日の直後から、当時のブッシュ共和党の勝利で、米ドル高政策が実行されることを織り込んだような動きとなっていました。

以上のように見ると、2000年の米大統領選挙では、勝敗の決着まで1ヶ月以上もかかる異常事態となったものの、為替相場を見る限り、あたかも1ヶ月後のブッシュ勝利を先取りするような動きが、投票日直後から起こっていたわけです。

さて、今回はそんな2000年以来の、米大統領選挙の決着がすぐにつかない「異常事態」になる可能性が警戒されています。ただ、2000年のケースを参考にすると、マーケットは表面的な選挙の勝敗の決着がつく前に、それを先取りした動きになっている可能性もあるのかもしれません。

引き続き104円ブレーク巡る攻防に注目

米ドル/円は、大統領選挙が近付く中で105円を下回ってきました。ただ、90日MA(移動平均線)を2%下回る水準である104円は、先週までのところ割り込むに至っていません(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の90日MAからのかい離率 (2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これまで何度か紹介してきたように、米大統領選挙年の米ドル/円は、選挙を前後し、小動きから一方向への大相場へ「豹変」を繰り返してきましたが、その目安の一つは、90日MAからのかい離率が±2%をブレークするということでした。同かい離率±2%をブレークすると、かい離率は±5%以上へ急拡大に向かったのでした。

以上からすると、90日MAを2%下回る水準である104円のブレークは、選挙の勝敗とは別に、選挙後の米ドル/円のトレンドを示している可能性があるだけに、引き続き注目されることになるのではないでしょうか。