あなたが相続人の中心となって相続手続きを始めるとしたら、何から始めますか?前回の記事では、相続手続きの全体の流れと期限について説明しましたが、手続きのなかでも、まずは戸籍を収集して誰が法定相続人なのかを確定させるのがお勧めです。それと並行して早めに実施した方がよいと思われる手続きについてもお伝えします。
相続人の調査・確定(戸籍の取得~法定相続情報一覧図の作成)
相続の手続きを進めるためには、誰が相続人であるかを確定させ、金融機関や登記所に対して書面にて証明する必要があります。
そのためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本や除籍謄本、また相続人の現在の戸籍謄本などを取得・確認しなければなりません。金融機関毎に取得した全ての戸籍等を持参するのはとても面倒な作業となります。
そこで、取得した戸籍等に基づいて法定相続情報一覧図を作成し、法務局で認証を受け、その写しを交付してもらえれば、その写し1枚で相続人の証明が簡便にできますのでお勧めです。
また、戸籍謄本や除籍謄本を取得するには、本籍地の市区町村役場(転籍している場合は全ての市区町村)で取得申請をしなければならず、思わぬ時間と労力がかかる場合があります。
相続人が忙しくて時間が取れない場合など、収集作業と法定相続情報一覧図の作成を司法書士・行政書士などの専門家に有料で依頼することも検討してみてはどうでしょうか。
遺言書の有無の確認
相続において遺言書がない場合は、相続人全員が集まり遺産分割協議をすることになります。遺言書がある場合は遺言書の内容に従って遺産を分けることになります。そのため、早い段階で遺言書の有無を確認してください。
相続人の中で遺言書があることを知っている方がいれば、まずどこに原本があるか確認しましょう。誰も遺言書の存在を知らない場合は、自宅で保管されていると思われる場所を探してみてください。
自筆証書遺言が発見された場合は、家庭裁判所で検認という存在確認の手続きをしないと有効だと認められません。
また、被相続人が公正証書遺言を作成している場合は、公証役場で検索すると見つかりますので確認してください。
さらに、2020年7月より自筆証書遺言を登記所に預ける制度が開始されましたので、その制度を利用した場合は、相続人または遺言執行者宛に通知が来ることがあります。この保管制度を利用した自筆証書遺言は、公正証書遺言と同様に検認の手続きは不要となります。
銀行への死亡連絡と死亡日前後の払い出し
銀行への死亡連絡は、いつすればいいのでしょうか。銀行は顧客の死亡を把握したら、正式な相続手続きがなされるまでその口座を凍結して移動を停止させます。
通常は急いで銀行に連絡する必要はありませんが、特定の相続人から不当な払い出し請求などの心配がある場合には、早めに連絡して口座を凍結しておくことをお勧めします。
一方、銀行は相続人から死亡の連絡がない限り、亡くなったことが分かりませんので、連絡するまでは凍結されることはありません。(新聞などで死亡が報じられる方などは除く)
そのため、死亡後に相続人がキャッシュカード等で引き出すことは可能ですが、そのお金は遺産であり、その後分割協議などで分けるべきものですので、勝手に引き出すと後で相続争いに発展しかねません。
葬儀などで資金が必要なら引き出しも構いませんが、何のために引き出したのか、使い道を他の相続人に説明して了解を得ておく必要があるでしょう。
また、相続税は死亡日現在の口座残高に課税されます。それを知って死亡日直前に多額の現金を引き出す方がいますが、税務署が後から調べれば直前の引き出しはすぐ分かってしまい、引き出した現金が使われていない場合は、その現金にも(併せて延滞税なども)課税されてしまいますので、ご注意ください。