米大統領選挙アノマリー、鍵を握るのは?
米ドル/円は先週から急落が再燃、105円を大きく割り込んできました。ではそれはなぜか。「コロナ・ショック」とされた世界的な株大暴落が一段落した後、4月以降の米ドル/円はある程度日米金利(10年債利回り)差で説明できる状況が続きましたが、先週からの米ドル/円急落は、そんな金利差から大きくかい離した動きでした(図表1参照)。
金利差で説明できない米ドル/円の急落を説明できそうなのはテクニカル要因、つまりチャートではないでしょうか。7月以降の米ドル/円は、上値が切り下がり、下値が切り上がる、いわゆる三角保ち合いを形成していました。そんな7月以降の安値と安値を結んだトレンドライン、保ち合いの下限を割り込むと、米ドル/円の下落が急拡大しました(図表2参照)。
教科書的には、保ち合いをブレークすると、保ち合いのスタート地点を目指すとされます。この保ち合いスタート地点は、7月末の104.1円。先週から急落が再燃した米ドル/円は、今週に入りこの7月末に記録した104.1円を一時下回ってきました。以上のように見ると、先週からの米ドル/円急落は、保ち合い下放れというチャートが主因だったのではないでしょうか。
それにしても、この米ドル/円急落により、もう一つ気になることが出てきました。じつは、米大統領選挙年の米ドル/円は、小動きから大相場に急変、一気に年初来高安値更新に向かうといった「アノマリー」がありました。先週からの米ドル/円急落がそんな「アノマリー」通りの動きなら、3月に記録した101円という安値更新に向かう可能性があるわけです。
ところで、選挙前までは小動きが続くものの、選挙前後から途端に一方向への大相場になり、一気に年初来高安値更新に向かうといった米大統領選挙年の「アノマリー」を詳細に検証すると、小動きから大相場へ変化する一つの目安がありました。具体的には、選挙が近付く中で、90日MA(移動平均線)からのかい離率が±2%以上に拡大すると、かい離率は一段の拡大に向かうことが多かったのです。
じつは、先週にかけて米ドル/円が急落、104円半ばを下回ってきたところで、90日MAからのかい離率はマイナス2%以上に拡大してきました(図表3参照)。このままかい離率がマイナス2%以上で拡大するなら、アノマリー通りに、101円の安値更新に向かう米ドル一段安が始まっている可能性が注目されるところとなるでしょう。
では、米ドルは一段安に向かっているのか。その鍵を握っているのは米国株ではないでしょうか。すでに述べたように、この数ヶ月については、米ドル/円は日米金利差と連動する状況が続きましたが、昨年までさかのぼると、とくに一年前頃から、金利差から大きくかい離した米ドル高・円安での推移となってきました(図表4参照)。日米金利差米ドル優位が大きく縮小する中でも米ドル高・円安が続いたことを、今年3月の「コロナ・ショック」まで説明できたのは米国株高の動きでした(図表5参照)。
昨年の米ドル/円と日米金利差の関係からすると、100円を大きく下回っていてもおかしくない状況だったでしょう。それを回避し、米ドル高・円安を維持してきたのが米国株高に伴う日本からの米ドル買い・円売りの影響だったとするなら、アノマリー通りに米ドル一段安に向かうかを考える上での鍵を握っているのは、やはり米国株高に伴う日本からの米ドル買い・円売りが続くかということではないでしょうか。