みなさん、こんにちは。マネックス証券・アナリストの大槻奈那です。このコーナーでは、金融業界の出来事や喜怒哀楽をお話できればと思います。お付き合いいただければ幸いです。

さて、3月期の企業決算の発表がほぼ終了しました。決算報道などもすっかり出尽くした印象ですが、実は、アナリストの決算作業はまだしばらく続きます。

私も昨年まで、外資系証券会社でアナリストをしていましたが、この時期は2、3時間睡眠の日々でした。目がシャキッとするようなドリンクを大量に摂取しつつ深夜に決算メモを書き、翌朝読み直したところ、いつの間にか途中から全く関係ない料理の話などを書いてしまっていた・・・などということもありました。

決算後にこれほど時間に追われるのは、業績予想のツメの作業とともに、企業側との様々な会合が集中してしまうためです。決算説明会だけでなく、経営陣との小規模会合や個別訪問など、ミーティングの数は一週間で20件を超えるペースです。

その背景には、投資家と企業の密な対話を勧める「スチュワードシップ・コード」の浸透もありますが、この時期に、機関投資家やアナリストが企業のIR力をランキングする「証券アナリスト協会・ディスクロージャー大賞」の投票が行われることも大いに関係しています。企業としては、投票直前に様々な会合を開いてアナリストたちに印象付けたい- そんな思惑もあるようです。

こうした会合は、多すぎるように見えても、やはり参加するアナリストや機関投資家にとって有用です。経営者の生の声を聞くと、開示されている数字のニュアンスがずいぶんとわかるものです。

さらに、最近の行動ファイナンスの論文によれば、会社のCEOの表情などと企業の次期業績には関係があるようです。セントラルミズーリ大学のジェームズ・サイコン博士は、独自に開発したソフトウェアでフォーチュン500社のCEOの表情を解析し、これらと企業の業績指標には関連があるとしています(WSJ, Forbes 等2016年2月記事より)。この研究はまだ緒に就いたばかりで、課題も多いようですが・・・

これから株主総会シーズンに突入します。企業によっては、個人投資家向けの説明会も開催するようになっています。皆さんもそうした機会に足を運んで、企業トップの表情や言葉のニュアンスなどを探ってみてはいかがでしょうか。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那