◆きのうの日曜日は二十四節季の「処暑」であった。暑さが処(や)むという意味だ。この時期に暑さが和らぐというのは約57年(あと10日で正確に57年)生きてきて、実体験として身に沁みついている法則だ。今年の猛暑も、やはりきのうの処暑を境に一服した。異常気象とか気候変動とか言われるが、この法則だけは変わらない。だから毎年のようにこの話を書いている(例えば第66回「夏の終わり」)。ただ変わったのは表現の仕方だ。例年なら「甲子園が終わると秋風が吹いて…」などと書いていたが今年はそれがない。

◆異例の夏だった。お盆休みには帰省も旅行も諦めて巣ごもりしていたひとも多かったのではないか。すでに2学期の授業が始まった学校もある。当方は大学院の講義のスタートがゴールデンウィーク明けからとなった影響で全15週の授業の終了がお盆の時期にずれこんだ。夏休みも取れずじまいだが、別にすることもないので構わない。海も高原もプールも高校野球も花火大会もない、ただ暑いだけの夏だった。

◆マーケットのほうも例年とは異なる夏だった。いつもなら「夏枯れ」で外国人の売りに押されて軟調な展開となるが今年は違った。日経平均はお盆休みの前に2万3000円台を回復、半年ぶりの高値をつけた。東証マザーズも大商いで、こちらは2年2か月ぶりの高値だ。ただし、アメリカ株に比べれば話にならない。ナスダックは連日、史上最高値更新である。

◆異例の夏とは言え、変わらぬこともある。処暑もそうだが、金融緩和で株価が上がるというのは、春夏秋冬に関係なくもはや年中行事か。

◆今年は関東地方の梅雨明けが遅く本格的な夏の陽ざしは8月に入ってからだった。記録的猛暑で最高気温の更新が続いたが、酷暑に耐えたのは実は正味3週間余りだった。その短い今年の夏も行く。いつもとは違う夏だが、やはり夏が終わるのはさびしい。さびしさの半分は不完全燃焼によるものだろう。その気持ちを、来年以降の、これからの夏にぶつければよい。今年のリベンジだと思えば来年の夏がさらに暑くなろうが、楽しんでやろう、乗り切ってやろうと意気が上がるというものだ。まあ、そろそろ還暦が近くなる我が身は息があがってしまうかもしれないが。