7月31日付記事で百貨店業界は市場自体が縮小し、再編の主役になっているという話をしましたが、今回の記事では市場自体が好調なときに再編が始まり、市場が頭打ちとなる今、より一層の再編が進みつつあるコンビニ業界についてお伝えしたいと思います。
コンビニはいまや小売業界の代表
前述の記事で、1972年にダイエーが三越の売上高を抜いたと書きましたが、2001年にそのダイエーの売上高を追い抜いたのがセブンイレブンです。小売業界は変遷が激しい業界ですが、直近の経常利益ランキングを見ると、1位がセブン&アイ(3382)、6位がローソン(2651)、8位がファミリーマート(8028)です。その他のベストテンは代表的な業態でいうと、ユニクロ、イオン、ニトリ、ドンキホーテ、ツルハ、ヤマダ電機、ABCマートとばらばらです。ベストテンに3社が入っているコンビニは、いまだに日本の小売業界の代表と言っていいでしょう。
なぜコンビニが再編の対象に?
そんなコンビニエンスストアが再編の主役になっているのは、その出自が理由です。日本のコンビニエンスストアは70年代に産声をあげました。当時の小売の主役はスーパーで、多くのコンビニはそのスーパーの子会社でした。イトーヨーカ堂がセブンイレブン、ダイエーはローソン、西友がファミリーマート、ユニーがサークルK、長崎屋がサンクスといった具合です。1990年代にはこのスーパー、コンビニ10社がすべて株式を上場していた時期もありました。しかしいまやいずれのスーパーも単独では上場しておらず、コンビニも3社に集約されています。多くは親会社のスーパーの経営不振が理由でした。
業界の優等生と言われたイトーヨーカ堂とセブンイレブンは親子で統合し、セブン&アイとなりました。上記10社のうち、他社資本が入らなかったのはセブン&アイだけです。しかし、そのセブン&アイでさえグループ内のイトーヨーカ堂(セグメントはスーパーストア)の業績がふるわず、グループ経営を疑問視される声も少なくありません。
2020年2月期決算で見ると、国内コンビニが2570億円、海外コンビニが1020億円、金融関連が540億円の利益をあげている一方、イトーヨーカ堂などのスーパーストアはわずか210億円です。売上高ではグループ全体の27.5%をあげているものの、利益でいうとわずか4.8%でスーパーがお荷物になっていることが分かります。ソニー(6758)にも投資していたアクティビスト「サード・ポイント」がイトーヨーカ堂の分離を要求するといった動きもありました。(このようなグループ経営に対するアクティビストの動きについても今後お伝えしていきます。)
イトーヨーカ堂以外のスーパーはさらに厳しく、ダイエーはイオン(8267)、西友は米ウォルマート、ユニーと長崎屋はドンキホーテを擁するパンパシフィックインターナショナルHD(7532)の傘下になっています。親会社の経営不振の中で子会社のコンビニも売却され、現在、ローソン(2651)は三菱商事(8058)、ファミリーマート(8028)は伊藤忠商事(8001)の傘下となっています。サークルKとサンクスの両社は統合したあと、ファミリーマートと合併しています。かくして上記の10社のうち、セブン&アイを除く会社は別資本の傘下となっていったわけです。
このような再編が進む業界は、投資上の妙味も大きく、先ほどのセブン&アイもそうでしたが、アクティビストの投資先となることが少なくありません。そして、今、親会社である伊藤忠商事が公開買付を開始したファミリーマートを巡って、伊藤忠商事とアクティビストの間で争いが始まっています。
そこで、次回はその争いの議論の内容についてお伝えします。