マネクリにてご執筆いただいておりましたオフィス・リベルタス 創業者 取締役、大江 英樹 氏が2024年1月1日にご逝去されました。心より哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。

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多くの人は「年金は複雑で難しい」というイメージを持っているようだ。確かに細かい部分まで理解しようと思うと大変だが、基本的な仕組みだけなら極めてシンプルでそれほどややこしいものではない。

言うまでもなく「年金」というのは、年をとって働けなくなった時の生活をまかなうための手段である。ところがその「生活のための手段」は1つというわけではなく、大きく分けると3つある。そしてそのいずれもが年金という名前がついていたり、実際は年金ではないにも関わらず「年金」と称していたりするため、よけい複雑になっているのだ。

では具体的に3つの年金とはどんなものなのか見てみよう。

3つの年金の基本的な仕組み

まずは「公的年金」である。通常「年金」と言えばこの公的年金のことを指す。国が運営する社会保障制度であり、日本人であれば原則全員が加入をしている。

2つ目の年金は「企業年金」である。これは企業が自社を退職した社員に支払う、言わば給料の後払い的な性格を持ったものである。但し、公的年金と異なり、企業年金は全ての企業にあるわけではない。大企業の場合はあるところが多いが、中小企業ではほとんど無いと言っても良いだろう。

そして3つ目が「じぶん年金」である。これは具体的に言えば、国民年金基金や小規模企業共済、そして個人型確定拠出年金(iDeCo)といった制度に限られる。ただ、これはどちらかと言えば年金というよりは、貯蓄・投資に近いものである。

さらに言うと、保険や投信で「〇〇個人年金保険」とか「年金型〇〇」といった類いのものは、単に年金という名前を冠した商品名であって、年金とは何の関係もないので注意が必要だ。

では次に、それぞれの制度の特徴をわかりやすく説明しよう。

それぞれの年金の特徴と違い

「公的年金」は言ってみれば給食のようなものである。一定の給食費(保険料)を現役時代に納めておけば、死ぬまで食べられる仕組みになっているので、どれだけ長生きしても安心だ。但し、この給食の量はそれほど多くない。

したがって給食だけ食べていれば、飢え死にすることはないが、やはりお腹が減る。すなわち日常生活だけなら公的年金でも何とかなるが、趣味や楽しみのためにお金を使うのなら、それだけでは足りないということだ。

そこで登場するのが2つ目の「企業年金」だ。これは言わば「社員食堂」のようなもので、その会社にいた人だけが、退職後15年とか20年ぐらいにわたって利用できるものである。(企業年金の多くは退職後15から20年ぐらいにわたって支給される)

さらに言えば、企業年金は前述のように給料の後払い的な性格のものであるため、その原資は全て会社が出しており、原則として社員に負担は無い。

そして最後の「じぶん年金」は自分のお金で積み立てたり、投資するものであるから、これは言わばレストランのようなものだ。好きな物が食べられるし、何度でも利用できるが、それは自分が持っているお金の量次第なので、美味しい物を一杯食べたいと思ったらそのために蓄えておかなければならない。

自営業の場合はiDeCoをフルに活用したい

人によっては2番目の社員食堂が無い場合もある。そういう人は3つ目の「じぶん年金」を充実させる必要がある。特に自営業であれば、社員食堂がないのはもちろんだが、最初の給食についてもサラリーマンほどは恵まれていない。これはサラリーマンが「厚生年金」という制度に入っているのに対して自営業は「国民年金」しか入れないため、将来受け取る年金額もサラリーマンのおよそ3分の1程度しかないからだ。

したがって自営業やフリーランスの場合は、「じぶん年金」をどれだけ充実させるかがとても重要になってくる。実際に自営業やフリーランスの場合、サラリーマンが利用できない有利な非課税制度があるし、iDeCoにしても利用できる限度額がサラリーマンの3倍ぐらいあるのはそういう理由だからだ。

では、それぞれの年金がどれくらいの金額をまかなえるのかについて、次回に見てみることにしよう。