個人投資家の方から、資産運用に関して相談を受けることがあります。その中で、最近よく耳にするのが「オフショア投資」と呼ばれる海外での投資商品についてです。
オフショア投資は、香港やシンガポール、あるいはタックスヘイブンと呼ばれる国で設立された保険や投資信託に投資する商品です。果たして投資する価値はあるのでしょうか?
金融マーケットに歪みは存在しない
まず、大原則として知っておくべき事は、金融マーケットに「歪み」は存在しないと言うことです。「歪み」とは、場所によって価格にズレが生じている状態です。
例えば、東京で1ドル=106円なのに、香港では1ドル=100円だったら、6円も歪んでいることになります。もしそうだとしたら、香港で1ドルを100円で買い、東京で1ドルを106円で売れば、歪みから収益を得られます。しかし、効率的な市場である金融の世界では、このような日本と海外で情報格差が生まれることは無いのです。
つまり、金融商品で運用をしている限り、海外で運用すれば日本国内よりも高いリターンが実現できるというのは幻想です。
確かに、当局の規制等により、国内で商品販売に制約があったり、金融機関の手数料が高かったりすれば、海外での取引にメリットがあるかもしれません。
しかし、日本の証券取引規制は特段、厳しくもありませんし、ネット証券の台頭により、国内の証券会社は激しいコスト競争を行っています。日本国内の投資環境が海外に比べて不利という状況にはありません。
むしろ、国内投資家が海外での取引をする場合、海外送金手数料などのコストがかかり、割高になってしまう可能性があります。
インデックス運用は誰がやってもほぼ同じ結果
海外には運用能力に優れたファンドが多く、日本にはない素晴らしい投資商品が揃っているという意見もあります。
しかし、アクティブ運用を行っても、平均ではインデックスに勝てないというのは、日本だけではなく、海外の資産運用業界でも言われることです。
したがって、海外にはインデックスを上回る運用成績のアクティブ運用の商品が豊富にあると思い込むのは誤りです。
国内にも海外にも、アクティブ運用で高い運用利回りをあげている商品は存在します。ただそれを数多くの商品の中から見つけるのは、どこでも難しいだけのことです。
コストと運用成績を具体的に比較してみる
オフショア投資と聞いただけで、それだけで何だか凄い商品だと思い込んでしまう前に、冷静に数字で比較してみましょう。
例えば、運用に関わるコストは購入時や運用期間中にどのくらいかかるのか。解約する場合の手数料はどのくらいなのか。あるいは、過去の運用成績は同じ投資対象のインデックスと比べてどの程度優れているのか。
例えば、代表的な投資先に先進国の株式があります。このインデックスに連動する商品であれば、国内にも低コストのインデックスファンドが存在します。年間の信託報酬はわずか0.1%程度です。
このような国内で販売されている低コストファンドよりも、コストも含めた運用成績が優れているファンドが海外に存在する可能性は低いと思います。
税金はオフショアでも払わなければならない
またタックスヘイブンと言われて、税金がかからないと勘違いしている人がいますが、日本に居住している限り国内での納税が必要です。
海外のファンドだから、税金上のメリットがあるというのも誤解です。
オフショア投資は手続きに手間がかかり、英語でのやりとりが必要になることもあります。
このコラムを読んでいる日本の個人投資家の皆さまは、オフショア投資をしなくても、国内の良質な投資信託で資産運用すれば、充分な投資成果が得られるのではないでしょうか。