このレポートのまとめ
1.メガバンクの決算は債券・株式のトレーディングと引受が好調
2.ゴールドマン・サックスの決算は軽々とコンセンサス予想を上回った
3.モルガン・スタンレーの決算も良かった
4.ジェイピー・モルガン・チェースの決算は良かったが、貸倒引当金は高水準だった
5.シティグループの決算も債券部、株式部の好調で予想を上回った
6.バンク・オブ・アメリカの投資銀行部門は他行をアンダーパフォームした
7.ウェルズ・ファーゴの決算は悪かった
8.ペプシコの決算は良かった
9.ネットフリックスの決算は悪かった
メガバンクの決算は債券・株式のトレーディングと引受が好調
今週発表されたメガバンクの決算では債券・株式のトレーディングが好調でした。加えて社債、株式の発行による資金調達も高水準でした。
その反面、商業銀行部門は貸倒引当金の増加が業績の足を引っ張りました。貸倒引当金は債券・株式のトレーディングから上がって来る利益を全部吹き飛ばすほどの規模です。実際、トレーディングにそもそも力を入れていないウェルズ・ファーゴの場合は赤字に転落しました。
こうなると商業銀行のビジネスを持たない純粋な投資銀行の方が有利です。実際、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは今期素晴らしい決算を発表しています。
もうひとつ、今期の特徴として新しく社債や株式を発行することで資金調達することが大変盛況でした。これは新型コロナウイルスに伴い先行きが不透明になっている折、いま資金調達できる間にどんどん社債や株を出し、将来のためのキャッシュの備えを積み増しておこうと判断する経営者が多かったことが原因です。
そのような資金調達のディールが発表されてからマーケティングが完了するまでの期間はどんどん短縮化されています。その理由は、いまは投資銀行の社員も在宅勤務しているため、従来のようなロードショーはせず、ネット・ロードショーで済ませてしまうことが流行っているためです。このため新規株式公開(IPO)の値決めは、マーケティングがキックオフしてからわずか4日で行われるケースも出てきています。従来は2週間くらいマーケティング期間を設けるのが普通でしたから、いかに全ての物事がスピードアップしているかわかると思います。
空前の引受けブームは、そのような販売方法面でのイノベーションも一役買っているのです。
■ゴールドマン・サックス(GS) 良かった
投資銀行部門売上高は26.6億ドル、前年同期比+36%でした。
うちM&Aフィーは6.86億ドル、前年同期比-11%でした。
株式引受けフィーは10.57億ドル、前年同期比+122%でした。
債券引受けフィーは9.9億ドル、前年同期比+93%でした。
グローバルマーケッツの売上高は71.76億ドル、前年同期比+93%でした。
うち債券部取次の売上高は37.9億ドル、前年同期比+163%でした。
債券部ファイナンシングは4.49億ドル、前年同期比+71%でした。
株式部取次の売上高22億ドル、前年同期比+91%でした。
株式ファイナンシングは7.42億ドル、前年同期比-14%でした。
営業費用は84億ドル、前年同期比+37%でした。
エフィシェンシー・レシオは63.2%でした。前年同期比-1.5パーセンテージ・ポイントでした。
地域別では、米州売上高は82.9億ドル(全体の62%)でした。前年同期は51.7億ドルでした。
欧州中東アフリカは34.5億ドル(全体の26%)でした。前年同期は21.1億ドルでした。
アジアは15.5億ドル(全体の12%)でした。前年同期は14.6億ドルでした。
【各種レシオ】
株主資本利益率(ROE)は11.1%でした。前年同期と同じでした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は11.8%でした。前年同期比-0.1パーセンテージ・ポイントでした。
普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は13.6%でした。前年同期は13.8%でした。
一株当たり有形簿価は227.31ドルでした。前年同期は214.1ドルでした。
■モルガン・スタンレー(MS) 良かった
インスティチューショナル・セキュリティーズ部門の売上高は前年同期比+56% の79.77億ドルでした。前年同期は51.13億ドルでした。
内訳としてインベストメント・バンキングの売上高は前年同期比+39.3%の20.5億ドルでした。前年同期は14.7億ドルでした。
そのうちM&Aアドバイザリーは前年同期比-8.7%の4.62億ドルでした。前年同期は5.06億ドルでした。
株式引受けフィーは前年同期比+61.5%の8.82億ドルでした。前年同期は5.46億ドルでした。
債券引受けフィーは前年同期比+68.3%の7.07億ドルでした。前年同期は4.2億ドルでした。
セールス&トレーディング売上高は前年同期比+68%の55.5億ドルでした。前年同期は33億ドルでした。
そのうち株式部売上高は前年同期比+22.9%の26.2億ドルでした。前年同期は21.3億ドルでした。
債券部売上高は前年同期比+168%の30.3億ドルでした。前年同期は11.3億ドルでした。
ウェルス・マネージメント部門の売上高は前年同期比+6.1%の46.8億ドルでした。前年同期は44.1億ドルでした。
インベストメント・マネージメント部門の売上高は前年同期比+6%の8.86億ドルでした。前年同期は8.39億ドルでした。
コンペンセーション対売上高比率は45%でした。前年同期は44%でした。
エフィシェンシー・レシオは68%でした。前年同期は72%でした。
【各種レシオ】
株主資本利益率(ROE)は15.7%でした。前年同期は11.2%でした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は17.8%でした。前年同期は12.8%でした。
普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は16.1%でした。前年同期は16.3%でした。
一株当たり有形簿価は43.68ドルでした。前年同期は38.44ドルでした。