「株高=米ドル安」一服となった先週

先週の米ドル/円は、週末に107円割れとなったものの、基本的には引き続き107円近辺での方向感の乏しい展開が続きました。ところで先週は、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルといった米ドルに対する外貨の取引「ドルストレート」も、それまでの反発(米ドル安)が一服し、一進一退の推移となりました。

たとえば、ユーロ/米ドルは1日ごとに陽線と陰線を交互に繰り返すところとなりました(図表1参照)。実はこれは、NYダウなど主要な株価指数も同様でした(図表2参照)。要するに先週は、株高=米ドル安(ユーロ高)、株安=米ドル高(ユーロ安)を交互に繰り返すところとなったわけです。

【図表1】過去一ヶ月のユーロ/米ドルの日足チャート (2020年6月~)
単位:米ドル
出所:マネックス証券分析チャート
【図表2】過去一ヶ月のNYダウの推移(2020年6月~)
単位:米ドル
出所:マネックス証券分析チャート

私はこの間、足元の相場は「ドル・キャリー」、つまり米ドルを売って、米国以外の株などに投資する米ドル売り運用が1つの軸になっているため、株高=米ドル安、株安=米ドル高の組み合わせが基本と考えてきましたが、先週の動き、とくに上述の米国株とユーロ/米ドルなどドルストレートの日足の方向性が一致したことで、それは再確認できたといえそうです。

要するに先週は、6月末からの株価反発が一服、高値圏での一進一退となったことから、為替相場においてもユーロ/米ドル、豪ドル/米ドルといったドルストレートの反発(米ドル安)が一服、高値圏での一進一退になったということでしょう。

では、先週なぜ株反発が一服となったのかといえば、それは「上がり過ぎ」が一因でしょう。NYダウの90日MA(移動平均線)からのかい離率は、先週プラス10%近くまで拡大しました(図表3参照)。経験的に、同かい離率がプラス10%前後まで拡大すると「上がり過ぎ」懸念が強まります。

【図表3】NYダウの90日MAからのかい離率 (2000年~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

「上がり過ぎ」の株価は、基本的には下落要因に反応しやすいでしょう。そういった中で、新型コロナウイルス感染者数の増加が日本においても再燃、「感染第二波」への懸念が浮上していることなどは気になるところです。

株高一服続く!?それとも「コロナ株安」拡大!?

先週まで、このコロナ・リスクに株式市場の反応は比較的鈍い状況が続きました。これは、日本における感染者増加の前回のピークである4月中旬に比べると、足元は重症化率、致死率が低水準にとどまっている影響があるのかもしれません。経済的にマイナスとなる外出制限などの感染対策強化は、医療崩壊回避の観点が大きく、それは感染者より重症者の増加こそが目安になるでしょう。

以上のように考えると、先週までの株式市場がコロナ・リスクにとくに過敏にならなかったのは、重症者が少ないうちは経済的にマイナスな外出制限強化にはならないとの判断があったのかもしれません。

ただし、感染者の増加が続くと、当然重症者も増えるでしょう。そもそも、すでに見てきたように、株価が「上がり過ぎ」圏にある中では、下落材料には基本的に反応しやすいと考えられるので、このまま感染者増加が続くようなら、コロナ・リスクに株価が過敏に反応するようになる可能性を注意すべきではないでしょうか。

さて、「ドル・キャリー」を前提に、株高=米ドル安、株安=米ドル高の組み合わせを基本と考えるなら、これまで見てきたように株価が短期的に「上がり過ぎ」圏にある中では、株高=米ドル安の反応は限られそうです。さらなる米ドル安が目先に限られるなら、米ドル売りは、あくまで戻ったところを売る、「ドルストレート」の場合なら下がったところで米ドル以外の外貨を買う、「押し目買い」といった考え方になり、それは先週まさに有効に機能したでしょう。

ただし、上述のようにコロナ・リスクが「上がり過ぎ」修正への影響を強めるなら、目先的に「株安=米ドル高」の拡大にも注意が必要かもしれません。その場合、米ドル売り、「ドルストレート」の買いは、手仕舞いも少し検討する必要があるかもしれません。