昨日(2020年5月12日)、ホテル系REITであるインヴィンシブル投資法人が前日比23%安と急落しました。テナントに入っているホテル運営会社の倒産を回避するため賃料を減免し、分配金の引き下げを決めたことが原因です。予想分配金利回りが1%未満となり、インカム資産としての魅力が無くなってしまいました。

このようにコロナショックによって、国内の不動産マーケットは大きく変化しており、不動産に投資するREITの価格にも影響しています。

REITや現物不動産投資は、値上がり益よりもむしろ毎月の賃料収入を目的とした投資と言えます。特にシニアの投資家にとっては、不動産の安定した賃貸収入は魅力的ですが、今後は不動産投資から必ずしも安定した収益が得られるとは限りません。

これからの変化のポイントとして、投資対象によって次のような点を押さえておくことが大切です。

変化1.宿泊物件、商業物件への賃貸ニーズの低下

価格が急落したインヴィンシブル投資法人に限らず、宿泊物件は国内の宿泊需要だけではなく、インバウンド需要も激減し、収益回復の見通しが見えなくなっています。

また、飲食店をテナントに持つような商業物件も今後、経営難になるテナントが増え、空室率が急上昇すると考えられます。

変化2.居住用物件に生じる2つの変化

居住用物件に関しては、宿泊物件や商業物件に比べるとコロナショックの影響は短期的には小さいと思われます。

しかし、今後、観光需要や外食需要の回復が遅れ、各国政府の経済対策にも関わらず景気回復が遅れれば、雇用の悪化につながります。居住者に解雇や収入の減少といった雇用悪化の影響が広がれば、特に高額の居住用物件を中心にマイナスの影響も出てきます。

また、今後リモートワークや在宅勤務が広がり定着するようになると、居住エリアに対する考え方が変わる可能性があります。企業がサテライトオフィスのような拠点を作り、オフィスを分散させると、居住エリアが変わるかもしれません。

居住用物件の上記の2つの変化は、短期的というより中長期的な影響と考えることができます。

変化3.オフィス系物件の賃貸需要は不透明

リモートワークや在宅勤務はオフィス需要にもマイナスの影響を与える可能性があります。しかし、完全なリモートワークを実施できる企業は限られているでしょう。

特に日本の企業は業務範囲を曖昧にして仕事を進める場合が多く、対面のコミュニケーションによって仕事を調整する傾向が強く残っているのではないかと思われます。印鑑や紙の決裁書は減っていくものの、ゼロにするにはインフラの整備など時間がかかると考えられます。

サテライトオフィスの設置などが広がれば都心のオフィス需要が低下する要因になるかもしれません。

しかし、一方でオフィスにもソーシャルディスタンスが求められるようになれば、オフィスの人の数が減っても、必要となるスペースはむしろ増えるかもしれません。

オフィス系物件については、企業がどのような動きをするかによってその影響は不透明です。しばらく様子を見ないと方向性は見えてきません。

ここで挙げたポイントは、どれも実際にどの程度のインパクトになるかわかりません。しかし、不動産投資の観点からは、マイナスになることがほとんどです。

今後REIT市場も、全体の動きを見るだけではなく、個別の銘柄の保有物件を丁寧にチェックした上で投資を検討することが必要になってくると思います。不動産投資もこれからは安定したインカムが得られる物件と得られない物件の2極化の時代を迎えることになるでしょう。