今回は、バフェットさんのQ&Aセッションの模様のご紹介をしたいと思います。

40億ドル分の航空株をすべて売却した理由

最初の質問は、「バークシャー・ハサウェイは第1四半期に保有していた航空会社の株式を部分的に売却しましたが、4月に入ってから、航空株はどうしたのですか」というものでした。
バークシャー・ハサウェイ(BRK)は、「デルタ航空(DAL)、アメリカン航空グループ(AAL)、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス(UAL)、サウスウエスト航空(LUV)の株式を合計40億ドル分保有していたのですが、第1四半期に売却を始め4月に入って保有していた航空会社の株式は全部売却し終えた」と答えています。

バークシャーは、「保有株式のポジション調整のようなことはしない、つまり、保有するか、全く持たないかの選択しか行わない」と説明しました。「今回の新型コロナウイルスの影響で、ビジネスを一時的に止めなければならない業界があり、航空会社もそのうちの一つであり、これは自分たちにはどうすることもできない事であり、航空会社の株は売却するしかなかった」と答えています。「航空会社株の投資は間違いであったが、これは自分の責任である。但し、今回の件は、航空会社が悪い訳ではない」とも説明しています。

実は、バフェットさんは2003年の株主総会で、航空業界のことを「死の罠」だと呼んでいました。そのバフェットさんが航空会社株に投資をしたのは2017年のことです。その理由として、航空会社は過去の過ちから教訓を学び、需要から正当できない大量の航空機の購入や、新規路線を増やすことでキャパシティの拡大はせず、規律を持って運営を行っているからだと説明しています。

1270億ドルの現金の行方

バークシャーは、2019年末の段階で1270億ドルの現金を保有していたのですが、株主はその現金の行方に大変興味を持っていました。この日、現金は1270億ドルから、100億ドル増え、1370億ドルと記録的な数字となったことが分かりました。これは1370億ドルとは約15兆円です。15兆円といいますと、NTTドコモとホンダが買えるくらいの金額です。

バフェットさんは、「大型買収をしたいのだが、今の株式市場には魅力的なバリュエーションの、魅力的な会社がない。しかし、大型買収をする意思はいつでもある。明日にでも、魅力的な案件が出てくれば500億ドルの買収でも喜んでする。ただ、今この段階でそういう案件は見つかっていない」と語っていました。

これは、2009年の金融危機の時と比べ対照的です。金融危機の際は、潤沢な手元資金を使い経営破綻の瀬戸際にあった大手金融機関、ゴールドマンサックス(GS)の優先株に投資を行い救世主になり、その後投資からは高いリターンを上げ、投資を大成功させ世間の注目を得ました。

ただ、バフェットさんはその後、あの時の投資をするのはタイミングが少し早かったと回想しています。

バークシャーのカルチャーは変わらないか

将来的にバフェットさんと、マンガーさんが何らかの理由で、バークシャーからいなくなった場合、今の会社のカルチャーは変わらないかという質問という質問がでました。この質問には、グレッグさんが答えていまして、「バークシャーのカルチャーの大部分とは、案件や経済の見通しへのビジネス感覚であり、迅速に行動する能力で、それは、変わるとは思えません。そういった能力は、バフェットやマンガーの右にでるものはいないものの、バークシャーには、同じようなことができるチームがあります」と答えています。

今後も自社株買いをする予定はあるか

バークシャーの自社株買いについての質問も出ました。今年の第1四半期には、バークシャーが自社株買いに使った金額は17億ドル分だけなのですが、これについては、今のバークシャーの株価がバークシャーの事業価値と比べ、買いたい割安なレベルでないという厳しい評価をしていることを話しました。


バークシャーをブレークアップ(解散)する考えはないのか?

「バークシャーのそれぞれの部門の価値が長期に渡って価値が積みあがってきているため、ここで売却するとしますと、株主に莫大なキャピタルゲインを払ってもらう事になるので、それはいいアイディアではない」との答えです。加えて、バークシャーの株価はバークシャーの事業より大きなディスカウントになっていない為、ブレークアップする意味がなく、ブレークアップの可能性はないと否定しました。因みに、現在のバークシャーの、株価純資産倍率は、1.2倍となっています。

グレッグさんは、バークシャーにとってのキャピタルアロケーションの重要性を語りました。キャピタルアロケーションとは、資金の配分の事です。バークシャーには、70以上の様々なビジネスがあります。バークシャーの今の体制がある故に、バークシャー傘下の資金を必要としているビジネスユニット間で、必要な資本を自由に動かすことができるというものです。

それはあくまで、バークシャー傘下のグループ間の資金の移動ですから、バークシャーの株主にとって迷惑をかけることがないという事です。それが、会社にとってのバリュードライバー、価値を創造するものであり、バークシャーのこのユニークな構造ゆえに、計り知れない価値を生み出していると語りました。

将来、誰がキャピタル・アロケーションの仕事を行うのか

この質問に対し、会場のグレッグさんと、トッド・コームスさん、テッド・ウェシュラーさんの3人が行うことになると説明しました。

バフェットさんは、「チャーリーと私はまだいますよ。自分たちでキャピタル・アロケーションをやるのは好きだし。我々の意志で会社を去ることはないですよ、ただ、それほど遠くない将来、我々の意志でなくどこか行ってしまうことはあるかもしれませんが」と寂しいことを言われたのですが、「チャーリー(96歳)は健康だし、私(89歳)も健康です」と付け加えました。

4時間半の株主総会をほぼ一人で話続け疲れをしらぬバフェットさん、未だバークシャーのバフェットが健在であること、彼の存在感を示した株主総会は無事終了しました。来年の総会はいつもと同じように満席の会場でバフェットさんが熱演できる株主総会に戻れば良いなと思った次第です。