このレポートのまとめ
1. マイクロソフトはリモートワークで最も包括的なサービスを提供できる企業
2. フェイスブックの決算は良かった
3. テスラの決算は良かった
4. マスターカードの決算は良かった
5. ボーイングの決算は悪かった
6. ゼネラル・エレクトリックの決算は悪かった
7. アドバンスト・マイクロ・デバイシズの決算は予想に一致した
8. スターバックスの決算は予想に一致した
リモートワークによりマイクロソフトに追い風
今週発表されたマイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)の第3四半期(3月期)決算は新型コロナウイルスによる景気の暗転にもかかわらず前年同期比+14.6%と素晴らしい内容でした。
マイクロソフトの売上高成長率はアルファベットすら凌駕(りょうが)しています。しかもマイクロソフトの売上は「年金」のごとく毎期確実に売上が見込める契約形態の比率が高く、現在のような先行き不透明な経営環境では広告モデルなどよりはるかに優れていると言えます。
デジタル・ビジネスの優位性
世界では3月第3週あたりから外出禁止令が敷かれた国が多く、クレジットカードのトランザクションなどのリアルタイム・データから見える消費動向はおおよそ-20%前後落ち込んでいます。
このため大企業、中小企業を問わず各社は営業費用の圧縮に大わらわです。その一環として広告費用も削られています。しかしデジタル広告は削減するのも再開するのもボタンひとつで行えるので、外出禁止令が解除されたあかつきには真っ先に戻るのではないかと期待されています。
また経営者は今回の在宅勤務へのシフトで「どこへいても仕事ができるリモートワーク体制を急いで確立しなければ!」と悟り、それに向けた投資を増やしています。その結果、リモートワークの環境をガッチリと整えるための色々なサービスやツールを提供している企業が恩恵を受けています。その代表格がマイクロソフトでしょう。
■マイクロソフト(MSFT) 良かった
マイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)の第3四半期(3月期)決算は文句のつけどころが無い良い内容でした。
プロダクティビティ&ビジネスプロセス売上高は+15%の117億ドルでした。
インテリジェントクラウド売上高は+27%の123億ドルでした。アジュールは+59%でした。
モアパーソナルコンピューティング売上高は+3%の110億ドルでした。
グロスマージンは69%、2bpの改善となりました。営業マージンは37%で、3bp改善しています。
コマーシャル残存パフォーマンス義務は890億ドル(前年同期720億ドル)。
コマーシャル売上高に占めるアニュイティー比率は92%(前年同期90%)。
コマーシャル受注は+7%でした。
営業キャッシュフローは+29%の175億ドルでした。フリー・キャッシュフローは+25%の137億ドルでした。
新型コロナウイルスは同社にはほとんど影響を与えていません。Teams、Azure、バーチャル・デスクトップなどは利用が増えています。
3月最終週ライセンシング売上高に減速が見られました。またLinkedInの広告が減速しました。
ウインドウズOEMとSurfaceはリモートワーク、リモート・ラーニングからの需要が増えています。
ゲーミングは新型コロナウイルスで在宅が増えた関係により利用が増えています。
Teamsでは1日あたり2億件のミーティングが開かれました。TeamsのDAU(Daily Active Users:1日あたりのサービス利用者数)は7,500万人となっています。
また、新型コロナウイルスで「コードを書けない人(no-code/low-code)」向けアプリの必要性が高まりました。パワー・プラットフォームは340万人の市民デベロッパーに利用されています。もしエクセルを使える人なら、パワー・プラットフォームを使ってアプリを作ることができ、コードが書けない人でもヴァーチャル・エージェントや自動化されたワークフロー、データ分析が可能です。
実際に、スウェーデン健康サービス省、シアトルの非営利ヘルスケアプロバイダーなどがパワー・アプリを利用して緊急医療物資の追跡を行いました。
Xbox Liveは9,000万人のアクティブ・ユーザーに到達し、Xbox Game Passの課金顧客は1,000万人に達しました。
Azureはネットワークのエッジにまで延長できる唯一のクラウド・サービスであり、開発環境、インフラストラクチャ・スタックなどを通じて一貫性のあるサービスを提供しています。これにより5Gの普及と合わせてウルトラ・ロー・レイテンシー(ULL)体験を提供が可能となりました。
第4四半期のCOGSは115.5~117.5億ドル、営業費用は118~119億ドルを見込んでいます。「その他金利費用」の項目は1億ドルの赤字の見込みです。実効税率は18%を見込んでいます。
■フェイスブック(FB) 良かった
フェイスブック(ティッカーシンボル:FB)の第1四半期決算は予想を上回りました。
DAUは+11%の17.3億人でした。内訳は米国カナダが1.95億人、欧州が3.05億人、アジア太平洋が6.78億人、その他が5.56億人となっています。
ARPU(Average Revenue Per User:1ユーザーあたりの平均売上)は以下のとおりです。
全社 6.95ドル(前年同期6.42ドル)
米国・カナダ 34.18ドル(前年同期30.12ドル)
欧州 10.64ドル(前年同期9.55ドル)
アジア・太平洋 3.06ドル(前年同期2.78ドル)
その他地域 1.99ドル(前年同期1.89ドル)
フェイスブックファミリー・デイリー・アクティブ・ピープルは23.6億人で、前年同期の21億人から増加しています。
営業利益は59.93億ドル(前年同期33.17億ドル)。
営業マージンは33%(前年同期22%)。
実効税率は16%(前年同期30%)。
設備投資額は36.6億ドル(前年同期39.6億ドル)。
営業キャッシュフローは110億ドル(前年同期93億ドル)。
フリー・キャッシュフローは73.4億ドル(前年同期53.5億ドル)。
3月の広告収入は急激に落ち込みましたが4月に入って持ち直し、いまのところ昨年と同じ水準(±0%)で推移しています。第1四半期は+17%で推移していました。
第1四半期の広告インプレッション数はモバイル・ニュースフィードが寄与し+39%でした。単価は広告需要減を反映し-16%でした。
フェイスブック社員の95%は在宅勤務をしています。
■テスラ(TSLA) 良かった
自動車グロスマージンは25.5%(前年同期20.2%)。
全社粗利益は前年同期比+118%の12.3億ドル、GAAPグロスマージンは20.6%。
修正EBITDAは前年同期比+514%の9.51億ドルでした。修正EBITDAマージンは15.9%(前年同期3.4%)でした。
モデルS/X生産台数は15,390台(前年同期比+9%)。
モデル3/Y生産台数は87,282台(前年同期比+39%)。
モデルS/X納車台数(リースを含む)は12,230台(前年同期比+1%)。
モデルS/Xリース納車台数は1,940台(前年同期比+42%)。
モデル3/Y納車台数(リースを含む)は76,266台(前年同期比+50%)。
モデル3/Yリース納車台数は4,164台でした。
在庫は20日分で、前年同期の30日分と比べ減少しています。
現在の工場の生産体制は以下の通り。
フリーモント工場:モデルS/X 9万台、モデル3/Y 40万台
上海工場: モデル320万台、モデルY 建設中
ベルリン工場:建設中
手元現金は18億ドル増加し81億ドルになりました。フリー・キャッシュフローは-8.95億ドルでしたが、そのうち9.81億ドルは在庫増が原因でした。
営業マージンは4.7%でした。
また、モデルYの納車が開始されました。これは当初予定より大幅に早まっています。
■マスターカード(MA) 良かった
マスターカード(ティッカーシンボル:MA)の第1四半期決算は良い内容でした。
修正営業利益は22.2億ドル(前年同期22.1億ドル)。
修正営業利益マージンは55.3%(前年同期56.9%)。
修正実効税率は14.9%(前年同期16.8%)。
グロスダラーボリュームは+8%の1.56兆ドル(前年同期1.48兆ドル)でした。うち米国は4,780億ドル(前年同期4510億ドル)、海外は1.09兆ドル(前年同期1.03兆ドル)となっています。
スイッチド・トランザクション数は221億トランザクション(前年同期192億トランザクション)でした。
スイッチド・ボリュームの週間ベースの推移(前年同期比)は以下のとおり。
3月第1・2週 +8%
3月第3週 -5%
3月第4週 -25%
4月第1週 -25%
4月第2週 -30%
4月第3週 -20%
クレジットカードによる支払いは少し回復の兆候が見え始めています。
■ボーイング(BA) 悪かった
ボーイング(ティッカーシンボル:BA)の第1四半期決算は悪かったです。
民間航空機部門売上高は-48%、防衛部門売上高は-8%でした。グローバル・サービスは±0%となっています。
営業マージンは-8.0%(前年同期10.3%)。
営業キャッシュフローは-43億ドル(前年同期27.9億ドル)。
手元現金は155億ドル、負債は389億ドル。
民間航空機の納機は50機(前年同期149機)。
防衛部門売上高は60.4億ドル(前年同期65.9億ドル)。
グローバル・サービス売上高は46.3億ドル(前年同期46.2億ドル)。
■ゼネラル・エレクトリック(GE) 悪かった
ゼネラル・エレクトリック(ティッカーシンボル:GE)の第1四半期決算は悪化しました。
部門別売上高と成長率は以下の通り。
ガスタービン 40.3億ドル -13%
リニューアブル 31.9億ドル +26%
ジェットエンジン 68.9億ドル -13%
ヘルスケア 47.3億ドル +1%
キャピタル 19.2億ドル -14%
営業キャッシュフロー -16.6億ドル
フリー・キャッシュフロー -22億ドル
オルガニックな新規受注は-3%、受注残は4,010億ドルでした。工業部門オルガニック売上高は-5%となりました。
バイオファーマ部門を203億ドルで売却したため、期末の手元現金は473億ドルに増えました。
■アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD) 予想に一致した
アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(ティッカーシンボル:AMD)の第1四半期決算は予想に一致しました。
グロスマージンは46%(前年同期41%)。
第2四半期の売上高は、予想19億ドルに対し新ガイダンスでは17.5~19.5億ドルが提示され、2020年の売上高は、予想83.9億ドルに対し新ガイダンスでは80.78~87.5億ドルが提示されました。
■スターバックス(SBUX) 予想に一致した
スターバックス(ティッカーシンボル:SBUX)の第2四半期(3月期)決算は予想に一致しました。
既存店売上比較は-10%でした。うちトランザクションは-13%、チケットは+4%でした。
米州既存店売上比較は-3%でした。うちトランザクションは-7%、チケットは+5%でした。
海外既存店売上比較は-31%でした。うちトランザクションは-32%、チケットは+1%でした。
中国の既存店売上比較は-50%でした。うちトランザクションは-53%でした。