このレポートのまとめ
1. ネットフリックスの新規加入者は予想の2倍だったが今後に不安を残した
2. ロッキード・マーチンの決算は良かった
3. コカコーラの決算は良かった
4. テキサス・インストゥルメンツの決算は良かった
5. アイビーエムの決算はまちまちだった
6. シーエスエックスの決算はほぼ予想に一致した
7. デルタ航空の決算は悪かった
8. エーティー・アンド・ティーの決算は悪かった
9. インテルの決算は良かった
外出禁止令でネットフリックスの加入者が急増
今週発表された決算で最も注目を浴びたのはネットフリックス(ティッカーシンボルNFLX)でした。
いま世界の先進国の多くが新型コロナウイルスによる外出禁止令を敷いており、多くの市民が自宅にいます。それにより在宅関係のサービスの需要が増加。ネットフリックスもその恩恵を大きく受けているのです。
第1四半期の新規加入者は1,577万人で、予想の2倍近い数字となっています。
ネットフリックスのビジネスはいわゆるサブスクリプション型の課金形態を採っており、1度顧客を取り込むと、後は毎月安定的にお金が入ってきます。
このためネットフリックスは経営の大方針として「何はさておき、新規加入者をどんどん集めることに集中する。そして1度顧客として取り込んだ視聴者に満足してもらうために新しいオリジナルドラマをどんどん撮り、顧客離反を防ぐ」との目標を掲げています。大作ドラマをガンガン撮るため利益は後回しです。
こうした戦略はこれまでのところ大成功を収めてきました。今回の新型コロナウイルス問題で生じた「巣ごもり需要」は同社にとってまたとないチャンスである一方、リスクを孕んでいると思います。
加入者が激増し、視聴時間が増えたことは良いことです。しかし外出禁止令が出ているので、今はネットフリックスの新作オリジナルドラマの撮影がほとんどストップしています。つまり今後、新作ドラマの供給が減るわけです。
一方、家で退屈した視聴者はいま凄い勢いで未視聴だった映画やテレビドラマを観ています。そのため、早晩に「もう見るものがない」と飽きることが予想されます。
つまり、外出禁止令が解除されて人々が再び街に出始めれば、ネットフリックスは飽きられるリスクがあるのです。
その場合、これまでの「成長を取りに行く」戦略ではなく、「もっと利益を出してほしい」という風に投資家の要求が変わる可能性があります。このあたりに注意しながらネットフリックスの今後を見守りたいと思います。
■ネットフリックス(NFLX) 売上高は予想を上回った
とりわけ、グローバル・ストリーミング新規加入者数は1,577万人と、ガイダンスの700万人を大幅に上回る結果となっています。
米国・カナダのARPU(平均顧客単価)は13.09ドル(前年同期11.45ドル)。
欧州・中東アフリカのARPUは10.40ドル(前年同期10.23ドル)。
営業マージンは16.6%と、ガイダンス18.0%より低くなりました。理由は新型コロナウイルスで撮影が停止し一時費用2.18億ドルが発生したためです。
現在、新作ドラマの撮影は韓国、アイスランドを除き全てストップしています。3月に入り世界各国でロックダウンが発表されて以降、新規加入者は増加。ストリーミングARPUが前期比で減少した理由は多くの加入者が突然増えたことによります。ロックダウンが解除されれば視聴者数ならびに成長率の鈍化が予想されます。
また、新作ドラマが撮影できない点が将来の新規加入者に悪影響を与えることも考えられ、先行きを見守る必要があるでしょう。
■ロッキード・マーチン(LMT) 良かった
部門別売上高は次の通り。
航空機 63.69億ドル(前年同期55.84億ドル)
ミサイル 26.19億ドル(前年同期23.5億ドル)
ヘリコプター 37.46億ドル(前年同期37.62億ドル)
宇宙 29.17億ドル(前年同期26.4億ドル)
部門別営業利益は次の通り。
航空機 6.72億ドル(前年同期5.85億ドル)
ミサイル 3.96億ドル(前年同期4.17億ドル)
ヘリコプター 3.76億ドル(前年同期3.79億ドル)
宇宙 2.81億ドル(前年同期3.34億ドル)
営業マージンは次の通り。
航空機 10.6%(前年同期10.5%)
ミサイル 15.1%(前年同期17.7%)
ヘリコプター 10.0%(前年同期10.1%)
宇宙 9.6%(前年同期12.7%)
営業キャッシュフローは23億ドル、受注残は1,440億ドルでした。
同社は新型コロナウイルスの影響を受けません。
■コカコーラ(KO) 良かった
地域別原液売上高の増減は次の通り。
欧州中東アフリカ -1%
南米 +5%
北米 +3%
アジア太平洋 -3%
グローバル・ベンチャーズ -3%
ボトリング・インベストメンツ -4%
地域別営業利益の増減は次の通り。
欧州中東アフリカ -2%
南米 +9%
北米 -34%
アジア太平洋 -6%
グローバル・ベンチャーズ -71%
ボトリング・インベストメンツ -37%
営業マージンは27.7%でした(前年同期28.0%)。
営業キャッシュフローは5.56億ドルで、前年同期比-29%と下がっています。
新型コロナウイルスの影響により、レストランにおける消費(売上高の50%)が影響を受けました。その反面、家庭でのコカコーラの買い置きは微増。4月のボリュームは前年同期比-25%でした。
同社は、ガイダンスは出しません。
■テキサス・インスツルメンツ(TXN) 良かった
アナログ売上高は前年同期比-2%の24.6億ドル、営業利益は-6%の10.25億ドルでした。
エンベッデッド売上高は前年同期比-18%の6.53億ドルとなっています。営業利益は-27%の1.82億ドルでした。
3月第1週の売上は好調でしたが第2週から状況が急激に変化し、暗転しました。当面、生産のペースは維持し、第2四半期に在庫が多少積み上がっても仕方ないと考えています。
営業キャッシュフローは8.51億ドル、フリー・キャッシュフローは6.9億ドルとなっています。
■アイビーエム(IBM) まちまちだった
部門別売上高と為替修正後前年同期比成長率は次の通り。
クラウド&コグニティブ・ソフトウェア 52億ドル +7%
グローバル・ビジネス・サービス 41億ドル +1%
グローバル・テクノロジー・サービス 65億ドル -4%
システムズ 14億ドル +4%
部門別グロスマージンは次の通り。
クラウド&コグニティブ・ソフトウェア 75.4%
グローバル・ビジネス・サービス 27.2%
グローバル・テクノロジー・サービス 34.0%
システムズ 50.2%
過去12カ月のフリー・キャッシュフローは116億ドルでした。
アイビーエムの売上高の60%以上はアニュイティー型の安定した収入となっています。また同社の顧客は大企業が多く、不況に強いです。
また、アイビーエムは2020年のガイダンスを提示しないと明らかにしています。
■シーエスエックス(CSX) ほぼ予想に一致した
積荷別売上高は次の通り。
化学 6.26億ドル +6%
農業 3.65億ドル +6%
自動車 2.81億ドル -10%
鉱物 127億ドル +2%
林業 217億ドル +2%
金属・機器 199億ドル +5%
肥料 1.12億ドル +2%
全社のボリュームは-1%、価格は-4%でした。
オペレーティング・レシオは58.7%(前年同期59.5%)。
貨車速度は21.2マイル(前年同期20.4マイル)。
ターミナルでの待ち時間は8.3時間(前年同期8.6時間)。
■デルタ航空(DAL) 悪かった
現在は通常の5%のロード率で運行しています。第2四半期の売上高は-90%、第2四半期のキャパシティは-85%を予想しています。そのうち国内線は-80%、国際線は-90%です。
全てのフライトに関し毎夜スプレーによる消毒を行うとともに、各フライトのボーディング前には全てのトレー・テーブル、液晶画面、アームレスト、シートバック・ポケットを消毒しています。
ミドルシートはブロック、オートマチック・アップグレードは中止しています。また、ミール・サービスは最低限にとどめています。
同社は3月に総額54億ドルの資金調達を行いました。そのうち30億ドルはターム・ローン、12億ドルは旅客機の売却/リースバック、11億ドルはEETCとなっています。
デルタ航空は政府の2.2兆ドルの景気支援策(CARES Act)により54億ドルの従業員賃金支援金を受け取ります。そのうち38億ドルは返済の必要のない支援金、16億ドルは10年の低利融資です。
■エーティー・アンド・ティー(T) 悪かった
営業キャッシュフローは89億ドル(前年同期は111億ドル)。
フリー・キャッシュフローは39億ドル(前年同期は59億ドル)。
新型コロナウイルスの悪影響は6億ドルとなり、一株利益(EPS)にして5セントでした。
部門別売上高、EBITDA、EBITDAマージン(同前年同期)は次の通り。
モビリティ 174億ドル、78億ドル、45.0%(174億ドル、73億ドル、42.2%)
エンターティメント 105億ドル、26億ドル、25.0%(113億ドル、28億ドル、24.7%)
ワイヤライン 63億ドル、24億ドル、37.6%(65億ドル、24億ドル、37.8%)
ワーナーメディア 74億ドル、18億ドル、25.0%(84億ドル、24億ドル、28.5%)
南米 16億ドル、9,300万ドル(17億ドル、1.27億ドル)
なお、ガイダンスは示されませんでした。
■インテル(INTC) 良かった
部門別売上高と前年同期比は次の通り。
データセンター・グループ 70億ドル +43%
IoT 8.83億ドル -3%
モービルアイ 2.54億ドル +22%
NSG 13億ドル +46%
プログラマブル 5.19億ドル +7%
コンシュマー 98億ドル +14%
グロスマージンは60.6%と、前年同期の56.6%より上がっています。