このレポートのまとめ
1.アルファベットの決算は悪かった
2.ウォルト・ディズニーの決算は良かったが「Disney+」は期待外れだった
3.マッチ・グループはiOS13のソフトウェア更新で一時的に解約が増えた
4.メルクの決算は良かった
5.トゥイリオの決算はガイダンスが悪かった
6.ツイッターの決算はまちまちだった
7.ウーバー・テクノロジーズの決算は良かった
総括
今週の決算発表ではこれまで投資家にとってミステリーだったYouTubeの売上高、サービスが開始されたばかりの「Disney+」の全貌が明らかになるなど、投資家にとって興味深いデータが次々に開示されました。
結果的にはそのどちらも「いまひとつだな」という印象を与えました。
特にアルファベットが今期からYouTubeの数字を開示しはじめた件に関しては「なぜいままでこの数字を隠してきたのだろう?」という軽い怒りを感じました。市場の期待がみるみる膨らむのに任せ、情報の真相を放置したため、現実と投資家の同サービスに対して抱くイメージとが大きく乖離してしまったわけです。
今回のYouTubeの数字の開示に伴い、各部門がどの事業部に入るか?の編成も一部組み替えられました。これにより、これまで合理性に欠けるビジネスの括り方をしていたことが明らかになりました。
一方、ウォルト・ディズニーはしっかりしたディスクロージャーが行われて来た会社ですが、今期「Disney+」という新しいサービスを始めたことで新たに「ダイレクト・ツー・コンシュマー(DTC)」部門を1つに括り、部門売上高の開示を始めました。
こちらの方は新設部門にもかかわらず、いきなり四半期の売り上げ規模で40億ドルに届く主力部門に躍り出ました。
なお「Disney+」は消費者から熱烈に歓迎されており、会社側の当初計画を大幅に上回る上々のスタートを切りました。しかし一部メディアは加入者数の増加に関し非現実的なほどバラ色のシナリオをぶち上げていたので、その吊り上がってしまった期待には応えることができませんでした。とはいえ立派な数字には変わりはありません。
最後にデートアプリ「ティンダー」や「OKキューピッド」を傘下に持つマッチ・グループです。今期アップルがiPhoneのオペレーティング・システムをiOS13へとアップグレードし、それに絡めて既存のアプリの消去がやりやすくなったことでデートアプリをスマホから消してしまうユーザーが一部いました。
デートアプリはたくさん表示されると恥ずかしいため、頻繁にデートしなくなった人は一旦それらを消去するということが行われやすいです。このデートアプリ特有の事情が今回はマイナスに働いたということです。
しかし一旦消去したユーザーも、またしばらくするとアプリを再インストールすることが多いです。したがって今回の突発的なアプリ消去の急増はマッチ・グループのサービスに消費者が飽きたということではないようです。純粋にスマホのOSのアップグレードの際、ユーザーが自分のインストールしているアプリの見直しをする機会が与えられ、しかも簡単に消去できるようにOSが改善されたことで、気まぐれから消去の対象にされたということだと思います。
これは一過性のことであり、アプリのダウンロードはすぐ元に戻ると考えるのが自然です。
■アルファベット(GOOG) 悪かった
インターネットサービス大手グーグル親会社であるアルファベット(ティッカーシンボル:GOOG)の第4四半期決算は悪かったです。一株利益(EPS)が予想を上回ったのは実効税率が低かった為です。売上高は予想に届きませんでした。
アルファベットは今期から部門別の内訳を開示しています。これによりYouTube部門の売り上げが明らかになりました。
その部門別売上高(前年同期)は以下の通り:
サーチ 271.9億ドル(233.2億ドル)
YouTube広告 47.2億ドル(36.1億ドル)
ネットワーク・メンバー・プロパティーズ 60.32億ドル(55.9億ドル)
クラウド 26.14億ドル(17.1億ドル)
その他 52.6億ドル(47.7億ドル)
アザーベッツ 1.72億ドル(1.54億ドル)
YouTube広告の売り上げ規模は多くのアナリストが予想したよりかなり少ない額でした。
次に地域別売上高(前年同期比成長率)は以下の通り:
米国 217.4億ドル(+16%)
欧州中東アフリカ 140.1億ドル(+15%)
アジア太平洋 74.8億ドル(+24%)
米国を除く米州 26.7億ドル(+21%)
アルファベットの決算は総じて落胆させる内容だったと思います。
■ウォルト・ディズニー(DIS) 良かった
世界的エンタテインメント企業であるウォルト・ディズニー(ティッカーシンボル:DIS)の第1四半期(12月期)決算は良い内容でした。
部門別売上高(前年同期比)は以下の通りです:
メディアネットワークス 73.6億ドル +24%
テーマパーク 74億ドル +8%
映画 37.6億ドル >100%
ダイレクト・ツー・コンシュマー 39.9億ドル >100%
部門別営業利益(前年同期比)は以下の通りです:
メディアネットワークス 16.3億ドル +23%
テーマパーク 23.4億ドル +9%
映画 9.5億ドル >100%
ダイレクト・ツー・コンシュマー -6.93億ドル >-100%
Disney+のサブスクライバー数は2,650万人でした。これは立派な数字ですが吊り上がった事前の期待よりは小さい数字でした。ESPN+は660万人でした。Huluは+33%の3,040万人でした。
Disney+の顧客単価は5.56ドル、ESPN+は4.44ドル、Hulu SVODのみは13.15ドル、HuluライブTV+SVODは59.47ドルでした。
営業キャッシュフローは前年同期比-22%の16.3億ドルでした。フリー・キャッシュフローは前年同期比-68%の2.92億ドルでした。
Disney+はベライゾン、アップル、グーグル、ロクなどでもマーケティングされています。Disney+の無料サービスからから課金へのコンバージョンは予想以上です。また顧客離反率は予想より低いです。
3月24日に英国、アイルランド、フランス、ドイツなどでDisney+のサービスを開始します。
■マッチ・グループ(MTCH) まちまちだった
ティンダーなどマッチングサービスを手掛けるマッチ・グループ(ティッカーシンボル:MTCH)の第4四半期決算はまちまちでした。
アップルがiPhoneのiOS13でアプリのキャンセルの操作方法を変更したため、一時的にアプリの消去が増えました。これはiOS13にソフトウェアを更新した際に一回だけ起こることであり、一時的なことだと考えています。
修正EBITDAは+22%の2.15億ドルでした。予想は2.09億ドルでした。
ティンダーは「ヌーンライト」と呼ばれる緊急アラーム機能を実装しました。またプロフ写真が本人であることを証明する機能を導入しました。またアプリ上でのハラスメントを察知する機能も実装しました。
新興国ではサブスクリプション・モデルは人気が無いので、ペイ・アズ・ユー・ゴーのモデルも導入する考えです。
ヒンジは急速にダウンロード数を増やしています。
第1四半期の売上高は予想5.62億ドルに対し新ガイダンス5.45~5.55億ドルが提示されました。
■メルク(MRK) 良かった
グローバル・ヘルスケア企業であるメルク(ティッカーシンボル:MRK)の第4四半期決算は予想を上回りました。
主な薬の売上高と前年同期比成長率は以下の通り:
キイトルーダ 31.1億ドル +45%
ガーダシル 6.93億ドル -17%
プロクァド 4.81億ドル +6%
ジャヌビア 9.43億ドル +1%
ジャヌメット 4.75億ドル -11%
アニマル・ヘルス部門の売上高は43.9億ドル、前年同期比+8%でした。
メルクは2021年上半期をメドに皮下埋込型避妊薬インプラノンなどを作っているウイメンズ・ヘルス部門を別会社としてスピンオフすると発表しました。
ウイメンズ・ヘルス部門はメルクの売上高の15%を占めるに過ぎませんが、製薬工場のキャパシティの25%、SKUの60%を占めており、雑多な商品が生産キャパシティの少なからぬ部分を占有していたことを示唆します。
■トゥイリオ(TWLO) ガイダンスが悪かった
クラウド通信サービスを手掛けるトゥイリオ(ティッカーシンボル:TWLO)の第4四半期決算はガイダンスが悪かったです。
ドルベースのネットエクスパンション率は124%でした。前年同期は147%でした。
今年のEPSガイダンスが低い理由は、(1)インドにR&Dセンターを新設するための準備、(2)請求システム、エンジニアリング・プロセスなどのインフラを改善、(3)営業部隊の雇用を強化するなどによります。
■ツイッター(TWTR) まちまちだった
インターネットサービスのツイッター(ティッカーシンボル:TWTR)の決算はまちまちでした。
mDAUは前年同期比+21%の1.52億人でした。
広告売上高は前年同期比+12%の8.84億ドルでした。データ・ライセンシング売上高は前年同期比+5%の1.23億ドルでした。
地域別で見ると米国広告売上高は前年同期比+20%の5.09億ドルでした。海外広告売上高は前年同期比+3%の3.75億ドルでした。
営業利益は1.53億ドルでした。事前ガイダンスは1.3~1.7億ドルでした。
第1四半期の売上高は予想8.72億ドルに対し新ガイダンス8.25~8.85億ドルが提示されました。営業利益は予想7,100万ドルに対し新ガイダンス0~3,000万ドルが提示されました。
■ウーバー(UBER) 良かった
ライドシェア企業であるウーバー(ティッカーシンボル:UBER)の第4四半期決算は予想を上回りました。
月次アクティブ・プラットフォーム・コンシュマーは前年同期比+22%の1.11億人でした。
トリップ数は+28%の19.1億回でした。
グロス・ブッキングスは+28%の181.3億ドルでした。うちライドは+18%の135.1億ドル、イーツは+71%の43.7億ドル、フレートは+74%の2.19億ドルでした。
GAAP売上高はライドが+27%の30.6億ドル、イーツが+68%の7.34億ドル、フレートが+75%の2.19億ドルでした。
修正EBITDAはライドが+281%の7.42億ドル、イーツが-66%の-4.61億ドル、フレートが-139%の-5,500万ドルでした。
地域別売上高は米国カナダが+41%の25.4億ドル、南米が+31%の5.5億ドル、欧州中東アフリカが+27%の6.21億ドル、アジア太平洋が+34%の3.6億ドルでした。