このレポートのまとめ
1.総括としてはジェイピー・モルガン・チェースの決算の内容が抜きん出て良かった
2.ジェイピー・モルガン・チェースの決算は良かった
3.シティグループの決算は良かった
4.モルガン・スタンレーの決算は良かった
5.ゴールドマン・サックスの決算は悪かった
6.バンク・オブ・アメリカの決算はいまひとつだった
7.ウェルズ・ファーゴの決算は悪かった
8.デルタ航空の決算は良かった
9.ユナイテッドヘルス・グループの決算はまちまちだった
総括
米国の第4四半期決算発表シーズンが始まっています。まずメガバンクが相次いで決算を発表しました。去年の第4四半期は長期金利が上昇し株式市場が急落するなどメガバンクにとって難しいトレーディング環境でした。このため今回は前年比較が容易でした。従って各社とも楽々と去年を上回る決算を出しています。
その中でもジェイピー・モルガン・チェースの債券部の好調が目を引きました。また、消費者バンキングの部門では相変わらずクレジットカードのビジネスが好調でした。全体としてそつのない決算だったと思います。
シティグループはグローバルなネットワークを生かした国際業務に強く、それが今期も寄与しました。
モルガン・スタンレーも良い決算を出しています。
ゴールドマン・サックスはマレーシアのスキャンダルに絡んだ訴訟費用を計上したため一株利益(EPS)が予想を下回りました。投資銀行部門、トレーディング部門は好調でした。
バンク・オブ・アメリカは投資銀行部門が期待外れでした。また消費者バンキングの部門もいまひとつ冴えませんでした。
ウェルズ・ファーゴは架空口座開設スキャンダルの後、現在もまだ米連邦準備制度理事会から総量規制を解かれていません。その関係で営業に力を入れることができない状態が続いています。
■ジェイピー・モルガン・チェース(JPM) 良かった
ジェイピー・モルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)の第4四半期決算は一株利益(EPS)が予想2.36ドルに対し2.57ドル売上高が予想276.9億ドルに対し283億ドル、売上高成長率は前年同期比+8.4%でした。
純金利収入は前年同期比-1%の142億ドルでした。非金利収入は前年同期比+21%の141.7億ドルでした。
純利益は前年同期比+21%の85.2億ドルでした。
純金利イールドは2.38%でした。前年同期は2.55%でした。
貸倒引当金は14.3億ドルでした。これは前年同期比-8%でした。
平均コア・ローンは9,037億ドル、平均預金は前年同期比+6%の1.56兆ドルでした。
ローン・ツー・デポジット・レシオは61%でした。前年同期は67%でした。
オーバーヘッド・レシオは58%でした。前年同期は60%でした。
【消費者&コミュニティー・バンキング部門】
消費者&コミュニティー・バンキング部門売上高は前年同期比+3%の140.4億ドルでした。利益は前年同期比+21%の85.2億ドルでした。
クレジットカード・ローン残高は1,621億ドルでした。前年同期は1,506億ドルでした。クレジットカード・セールス・ボリュームは2,042億ドルでした。前年同期は1,853億ドルでした。
カード・ネット・チャージオフ比率は3.01%でした。前年同期は2.93%でした。
【コーポレート投資銀行部門】
コーポレート投資銀行部門売上高は94.7億ドルでした。これは前年同期比+31%でした。利益は前年同期比+48%の29.3億ドルでした。
うち投資銀行フィー売上高は前年同期比+5%の19億ドルでした。トレーディング(principal transactions)は前年同期比+97%の29.3億ドルでした。
市場インベスターサービス部門売上高は前年同期比+55%の61.4億ドルでした。内訳は債券部売上高が前年同期比+86%の34.5億ドル、株式部売上高が前年同期比+15%の15.1億ドルでした。
【今後のガイダンス】
2020年第1四半期の純金利収入は140億ドル前後を見込んでいます。第1四半期の費用は170億ドルを見込んでいます。実効税率は17%を見込んでいます。
【各種レシオ】
株主資本利益率(ROE)は14%でした。前年同期は12%でした。
総資産利益率(ROA)は1.22%でした。前年同期は1.06%でした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は17%でした。前年同期は14%でした。
普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は12.4%でした。前年同期は12.0%でした。
一株当たり有形簿価は60.98ドルでした。前年同期は56.33ドルでした。
■シティグループ(C) 良かった
シティグループ(ティッカーシンボル:C)の第4四半期決算は一株利益(EPS)が予想1.83ドルに対し1.90ドル、売上高が予想179.5億ドルに対し183.8億ドル、売上高成長率は前年同期比+7.3%でした。
グローバル・コンシュマー・バンキング(GCB)売上高は84.6 億ドルでした。これは前年同期比+5%でした。そのうち北米売上高は前年比+4%の52.5億ドル、南米は+10%の13.8億ドル、アジアは+4%の18.3億ドルでした。
インスティチューショナル・クライアント・グループ(ICG)売上高は93.8億ドルでした。これは前年同期比+10%でした。そのうち北米は+12%の33.1億ドル、欧州中東アフリカは+4%の27.4億ドル、南米は+9%の13億ドル、アジアは+15%の20.3億ドルでした。
債券部売上高は29億ドル、前年同期比+49%でした。債券引受けフィーは7.4億ドル、前年比+16%でした。
株式部売上高は5.2億ドル、前年同期比-23%でした。株式引受けフィーは2.4億ドル、前年同期比+33%でした。
M&Aアドバイザリーは3.7億ドル、前年同期比-19%でした。
シティグループ全体の営業費用は104.5億ドルでした。前年同期比+6%でした。
エフィシェンシー・レシオは57.8%でした。前年同期は56.9%でした。
純金利マージンは2.63%でした。前年同期は2.71%でした。
貸し倒れは19.4億ドルでした。これは前年同期比+9%でした。
純利益は5.0億ドルでした。これは前年同期比+15%でした。
【各種レシオ】
総資産利益率(ROA)は0.99%でした。前年同期は0.88%でした。
株主資本利益率(ROE)は10.6%でした。前年同期は9.0%でした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は12.4%でした。前年同期は10.3%でした。
普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は11.7%でした。前年同期は11.86%でした。
一株当たり有形簿価は70.39ドルでした。前年同期は63.79ドルでした。
■モルガン・スタンレー(MS) 良かった
モルガン・スタンレー(ティッカーシンボル:MS)の第4四半期決算は一株利益(EPS)が予想1.02ドルに対し1.20ドル、売上高が予想97.2億ドルに対し108.6億ドル、売上高成長率は前年同期比+27.0%でした。
インスティチューショナル・セキュリティーズ部門の売上高は50.5億ドルでした。前年同期は38.4億ドルでした。
内訳としてインベストメント・バンキング売上高は15.8億ドルでした。前年同期は14.2億ドルでした。
そのうちM&Aアドバイザリーは6.54億ドルでした。前年同期は7.34億ドルでした。
株式引受けフィーは4.22億ドルでした。前年同期は3.23億ドルでした。
債券引受けフィーは5.0億ドルでした。前年同期は3.6億ドルでした。
セールス&トレーディング売上高は31.9億ドルでした。前年同期は24.8億ドルでした。
そのうち株式部売上高は19.2億ドルでした。前年同期は19.3億ドルでした。
債券部売上高は12.7億ドルでした。前年同期は5.6億ドルでした。
ウエルス・マネージメント部門売上高は45.8億ドルでした。前年同期は41.4億ドルでした。
インベストメント・マネージメント部門売上高は13.6億ドルでした。前年同期は6.8億ドルでした。
コンペンセーション対売上高比率は48%でした。前年同期は44%、前期は44%でした。
エフィシェンシー・レシオは75%でした。前年同期は78%、前期は73%でした。
【各種レシオ】
株主資本利益率(ROE)は11.3%でした。前年同期は7.7%、前期は11.2%でした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は13.0%でした。前年同期は8.8%、前期は12.9%でした。
普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は16.5%でした。前年同期は16.9%でした。
一株当たり有形簿価は40.01ドルでした。前年同期は36.99ドルでした。
■ゴールドマン・サックス(GS) 悪かった
ゴールドマン・サックス(ティッカーシンボル:GS)の第4四半期決算は一株利益(EPS)が予想5.56ドルに対し4.69ドル(※)、売上高が予想85.6億ドルに対し99.6億ドル、売上高成長率は前年同期比+23.2%でした。
(※)訴訟に対する引当金10.9億ドルを計上しました。前年同期は5.16億ドルでした。さらに貸倒引当金3.36億ドルを計上しました。これは前年同期比+51%でした。
投資銀行部門売上高は前年同期比-6%の20.6億ドルでした。
うちM&Aフィーは前年同期比-29%の8.55億ドルでした。
株式引受けフィーは前年同期比+23%の3.78億ドルでした。
債券引受けフィーは前年同期比+37%の6億ドルでした。
グローバル・マーケッツ(注:旧インスティチューショナル・クライアント・サービス部門)売上高は+33%の34.8億ドルでした。
うち債券部取次売上高は+83%の13.8億ドルでした。債券部ファイナンシングは+17%の3.87億ドルでした。
株式部取次売上高は+9%の9.8億ドルでした。株式ファイナンシングは+17%の7.32憶ドルでした。
営業費用は73億ドル、前年比+42%でした。(上記の訴訟費用に注意)
エフィシェンシー・レシオは年初来の累計で68.1%でした。
地域別では、米州売上高は63.1億ドル(全体の63%)でした。去年同期は51.8億ドルでした。
欧州中東アフリカは22.7億ドル(全体の23%)でした。去年同期は17.7億ドルでした。
アジアは13.8億ドル(全体の14%)でした。去年同期は11.4億ドルでした。
【各種レシオ】
株主資本利益率(ROE)は8.7%でした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は9.2%でした。
普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は13.3%でした。前年同期は13.3%でした。
一株当たり有形簿価は218.5ドルでした。
■バンク・オブ・アメリカ(BAC) いまひとつだった
バンク・オブ・アメリカ(ティッカーシンボル:BAC)の第4四半期決算は一株利益(EPS)が予想69セントに対し74セント、売上高が予想223億ドルに対し223億ドル、売上高成長率は前年同期比-1.8%でした。
純金利収入(FTEベース)は123億ドルでした。前年同期は127億ドルでした。前期は123億ドルでした。
純金利イールド(FTEベース)は2.35%でした。前年同期は2.52%でした。前期は2.41%でした。
貸倒引当金は9.41億ドルでした。前年同期は9.05億ドルでした。前期は7.79億ドルでした。
損金計上は9.59億ドルでした。前年同期は9.24億ドルでした。前期は8.11億ドルでした。
ネット・チャージオフ・レシオは0.39%でした。前年同期は0.39%でした。前期は0.34%でした。
消費者部門損金計上は8.38億ドルでした。前年同期は8.04億ドルでした。前期は6.22億ドルでした。
消費者部門ネット・チャージオフ・レシオは0.72%でした。前年同期は0.71%でした。前期は0.55%でした。
平均融資残高は9,834億ドルでした。前年同期は9,469億ドルでした。前期は9,729億ドルでした。
預金残高は1.43兆ドルでした。前年同期は1.38兆ドルでした。前期は1.39兆ドルでした。
エフィシェンシー・レシオは59%でした。前年同期は58%でした。
グローバル・マーケッツ部門セールス&トレーディング売上高は28.6億ドルでした。前年同期は25.4億ドルでした。前期は32.2億ドルでした。
うち債券部売上高は前年同期比+25%の18.4億ドルでした。前年同期は14.7億ドルでした。前期は20.7億ドルでした。
株式部売上高は前年比-4%の10.2億ドルでした。前年同期は10.6億ドルでした。前期は11.5億ドルでした。
【各種レシオ】
株主資本利益率(ROE)は11.0%でした。前年同期は11.6%でした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は15.4%でした。前年同期は16.3%でした。
普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は11.2%でした。前年同期は11.6%でした。前期は11.4%でした。
総資産利益率(ROA)は1.13%でした。前年同期は1.24%でした。
一株当たり有形簿価は19.41ドルでした。前年同期は17.91ドルでした。
■ウェルズ・ファーゴ(WFC) 悪かった
ウェルズ・ファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)の第4四半期決算は一株利益(EPS)が予想1.10ドルに対し93セント、売上高が予想201.1億ドルに対し198.6億ドル、売上高成長率は前年同期比-5.4%でした。
純利益は28.7億ドルでした。訴訟費用15億ドル(33セント)が純利益を押し下げました。前年同期の純利益は60.6億ドルでした。
デビットカードの購買ボリュームは+6%、クレジットカードの購買ボリュームは+4%でした。
純金利収入は-4.25億ドルの112億ドルでした。
非金利収入は86.6億ドルでした。前年同期は83.4億ドルでした。
純金利マージンは-13bpの2.53%でした。
非金利費用は156.1億ドルでした。前年同期は133.3億ドルでした。
エフィシェンシー・レシオは78.6%でした。前年同期は63.6%でした。
貸倒引当金は105億ドルでした。
損金計上額は7.69億ドルでした。前年同期は7.21億ドルでした。
損金計上比率は0.32%でした。前年同期は0.30%でした。
支払い遅延ローン残高は56億ドルでした。前年同期は70億ドルでした。
支払い遅延ローン比率は0.59%でした。前年同期は0.73%でした。
平均融資残高は9,565億ドルでした。これは第3四半期より68億ドル増えました。
住宅ローン・オリジネーションは前年同期比+58%の600億ドルでした。
平均預金残高は1.32兆ドルでした。前年同期は1.27兆ドルでした。平均預金コストは0.62%でした。前年同期は0.55%でした。
四半期配当は51セントでした。前年同期は43セントでした。
【各種レシオ】
総資産利益率(ROA)は0.59%でした。前年同期は1.28%でした。
株主資本利益率(ROE)は5.91%でした。前年同期は12.89%でした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は7.08%でした。前年同期は15.39%でした。
普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は11.1%でした。前年同期は11.7%でした。
一株当たり有形簿価は33.5ドルでした。前年同期は31.86ドルでした。
■デルタ航空(DAL) 良かった
デルタ・エアラインズ(ティッカーシンボル:DAL)の第4四半期決算は一株利益(EPS)が予想1.39ドルに対し1.70ドル、売上高が予想113.7億ドルに対し114.4億ドル、売上高成長率は前年同期比+6.5%でした。
DSG部門を除いた売上高は前年比+7.2%でした。プレミアム・チケットが+9%、ロイヤリティー売上高が+18%、サードパーティー・メンテナンス売上高が+31%だったことが寄与しました。その反面、カーゴ売上高は-13%でした。
国内線売上高は+7.7%、大西洋路線は+0.8%、南米路線は+6.7%、太平洋路線は-0.5%でした。
TRASM(有効座席マイル当たり総収入)は+2.4%でした。ホリデー需要が旺盛でした。
非燃料営業費用は+4.4%でした。これはガイダンスのほぼ中心でした。
営業キャッシュフローは9.69億ドルでした。フリー・キャッシュフローは1.41億ドルでした。
第1四半期の売上高は予想111.4億ドルに対し新ガイダンス110~112億ドルが提示されました。
2020年の一株利益(EPS)は予想7.19ドルに対し新ガイダンス6.75~7.75ドルが提示されました。
■ユナイテッドヘルス・グループ(UNH) まちまちだった
ユナイテッドヘルス・グループ(ティッカーシンボル:UNH)の第4四半期決算は一株利益(EPS)が予想3.75ドルに対し3.90ドル、売上高が予想611.7億ドルに対し609億ドル、売上高成長率は前年同期比+4.3%でした。
2019年通年のメディカルケアレシオは82.5%でした。2018年は81.6%でした。
2020年度の一株利益(EPS)は予想16.45ドルに対し新ガイダンス16.25~16.55ドルが提示されました。