英ポンドの「客観情報」を確認する
12月12日予定の英総選挙が注目されている。ではそれは英ポンドにどう影響するのか。選挙結果を受けて、英ポンドは一段高に向かうのか、それとも急反落するのか。
英ポンド高の障害要因
英ポンド/円が、目先時にそれほど上がらない、逆に反落するリスクとしては、この間比較的早いピッチで上昇してきたことから、短期的に「上がり過ぎ」懸念が出てきたことだ。
90日MA(移動平均線)からのかい離率は、足元で5%以上に拡大した(図表1参照)。これは、経験的には「上がり過ぎ」懸念が強くなっていることを示すものだ。
そして、この間の英ポンド/円の上昇は、金利差からかい離している(図表2参照)。金利差の裏付けが乏しい中で、短期的に「上がり過ぎ」懸念が強くなっていることが、「英ポンド/円が、目先時にそれほど上がらない、逆に反落するリスク」の本質といえるのではないか。
英ポンド安の障害要因
ただそんな英ポンドは、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションを見る限り、まだ売り越しだ(図表3参照)。今年8月の10万枚超の売り越しが、足元では3万枚程度まで縮小したものの、買い越しに転換したわけではない。
以上のように見ると、この間の英ポンド/円の上昇は、「売られ過ぎ」の修正に伴う英ポンド買い戻しが後押ししたものであり、とくに「買われ過ぎ」が拡大しているということではなさそうだ。
たとえば、選挙結果を受けて英ポンド売りが再燃したとしても、「買われ過ぎ」の反動と、「売られ過ぎ」を再拡大するのでは、売りの持続力には差があるだろう。私は、今回は後者の状況にあるので、売り余力には自ずと限度があり、過去の短期的な「上がり過ぎ」修正の値動きを参考にすると、最大でも1ヶ月以内10円以内の下落リスクではないかと考えている。
英ポンド/円は2016年6月のBrexit(ブレグジット=英国のEU離脱)ショックを前後した200円手前から120円割れ寸前まで70円以上の大暴落となった。この始まりは、中長期的な「上がり過ぎ」の反動だった。
英ポンド/円の5年MAからのかい離率は、2015年には30%前後に拡大していた(図表4参照)。これは、記録的な「上がり過ぎ」の可能性を示すものだった。その「上がり過ぎ」修正の途上で、「Brexitショック」が中押し役となって、英ポンド/円の大暴落となったわけだ。
そんな英ポンド/円の5年MAからのかい離率は、足元ではなおマイナス圏で推移している。先にみたように、英ポンド/円は短期的には「上がり過ぎ」懸念が強くなってきたが、中長期的にはなお「下がり過ぎ」修正の途上にあるようだ。そういった中で、仮に「下がり過ぎ」再拡大となって、それには自ずと限度があるのではないか。