11月28日付の日経新聞に「米利下げでも進まぬ円高」という見出しがありました。
金利政策と為替相場、そして債券相場のみならず株式相場も互いに深く関係し連動します。それがセオリーであり、また市場の慣習的な傾向としての動きもあります。改めて金利について、他の市場との関連、景気循環について簡単に解説していきましょう。
金利の高い通貨にお金が集まるのが基本的なセオリー
基本的に市場においては金利の高い通貨にお金が集まります。為替というのは通貨ペアですから一方の金利が高くなれば(金利差が拡大すれば)金利が高い方の通貨が買われ、他方は通貨安となります。
景気がよく、加熱気味と判断されると中央銀行はインフレ抑止策として利上げを行いますが、それは景気が強いということで、そうした金利高は通貨買いに繋がります。利上げにも例外があって、例えばインフレがひどい国がハイペースで利上げをしているような場合はその国の通貨の信用が下がり、売られたりします。
現在の日本は世界的に見ても超低金利であり、対する米国は景気上昇に伴い利上げをした経緯がありますが、景気減速懸念とともに米国は利下げに舵を切り、今年は3回の利下げを行っています。結果、日米金利差は縮小してきていますので、利下げと共にドルが売られる=ドル安=円高の基調があったのですが、8月以降円安方向に変わりつつあります。
米利下げでも日本国債より米国債に運用メリットが
前述の通り日米金利差は縮小してきたとはいえ、米国金利の方がまだ高く、日本円を買っても日本国債で運用するメリットはなく、同時にマイナス金利の欧州にお金を持って行ってもやはりメリットはない、であれば米国ドルで、すなわち米国債で運用する方がまし、という判断になっているとのことです。機関投資家などの巨額資金の動きに市場は振れるものです。
利下げすると債券より株式で運用する方が選好され株価上昇すると言われます。米国において、株価は過去最高値圏にありますが、それは利下げだけが要因ではなく、米中貿易交渉の進展具合に大きく左右されています。
市場参加者の注目度やトレンドでセオリーとは逆の動きをすることも
米国の株価が上昇すると日本の株価も上昇する傾向にあり、また円安になると日本の株価が上昇する傾向もあります。とはいえ、市場参加者が何に最も注目をしているのか、何がトレンドになっているかで相場は変わることがあり、セオリーとは逆の動きをすることもあります。
教科書的なセオリーは経済状況が危機的ではなく、かつ一定の金利水準のある国と国の間においてのお金の動きの解説です。そもそもの金利政策も行えないほどの超低金利水準が続きながら、実感のない景気拡大が続き(今年になって下方への局面変化と判断されていますが)、世界において安全通貨として買われる日本円は一般的なセオリーから外れていると言えるでしょう。
投資を行う、市場に参加するのであれば、セオリーはセオリーとして知っておくことは必要な前提ではありますが、それ以上に最新の情報を収集して、その時々に注目されているニュースを捉えておくことが必要だと言えますね。