条件を満たせば住宅ローン控除の期間が13年に

ご記憶の方も多いと思いますが、消費税が5%から8%に引き上げられた2014年4月前は、住宅、自動車、大型家電など高額商品の“駆け込み特需”に沸きました。しかし、それに比べると、2019年10月の増税前はずいぶんと静かだった印象があります。

不動産経済研究所の発表によれば、今年上半期の首都圏1都3県のマンション新規供給戸数は1万3436戸で前年同期比13.3%減、上半期としては3年ぶりに減少に転じています。初月契約率の平均は前年同期比0.2%減の66.5%とほぼ横ばいでした。

前回の消費税増税時はタワーマンションが一大ブームでした。それに対し、今は首都圏のマンション価格が高止まりする一方、30~40代を中心とするマイホーム一次取得者層の人口が減少しており、こうした状況変化の影響もあるかもしれません。

しかし、より大きな理由として、住宅購入を考えている方の多くが消費税引き上げに伴う政府の住宅取得支援策を踏まえ、「増税前に焦って買う必要はない」と判断したことが挙げられるのではないでしょうか。

この住宅取得支援策の柱となるのが、「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」の延長です。消費税10%が適用される住宅を購入した場合、所定の条件を満たせば減税を受けられる期間が現在の10年から3年上乗せされ、13年になるというものです。

今回は、この住宅ローン控除の延長措置についてお話ししたいと思います。

多くの人は「増税分+α」を取り戻すことができる

住宅を購入する際、土地の部分に消費税は課税されません。つまり、2%の増税となるのは建物の取得価格のみです。そして、住宅ローン控除の延長措置は原則、この建物部分の負担増が取り戻せる仕組みになっています。

具体的には、当初の10年間は増税前の住宅ローン控除と同じく毎年末のローン残高の1%が所得税や住民税から控除されるのですが(控除額は一般的な住宅が最大で年40万円、認定長期優良住宅などは同50万円)、11~13年目は年末のローン残高の1%と建物の取得価格の2%を3等分した額とを比べ、どちらか少ない方を所得税や住民税から控除する形です。

首都圏など地価の高いエリアでは年末の住宅ローン残高の1%の方が「建物の取得価格×2%÷3」を上回る可能性が高く、多くの方は「増税分+α」を取り戻すことができるというわけです。

2020年末までの入居が前提、購入するならスケジュールに余裕を

利用に際しては注意点もあります。

1つ目は、通常の住宅ローン控除と同様に、幾つかの条件を満たしていなければならないことです。例えば、住宅を取得してから6ヶ月以内に入居して年末まで引き続き住んでいる、控除を受ける人のその年の合計所得が3,000万円以下――といった条件です。

気を付けたいのはマンションを購入した場合で、登記簿面積は壁の内側を測った内法ベースですが、チラシ広告などでは壁の中心線を基準に測った壁心ベースの面積が表示されていることがあります。住宅ローン控除の適用条件の1つが「住宅の床面積が50㎡以上」というもので、広告が50㎡以上だからと安心していたら、実際は50㎡に満たなくて控除を受けられないという事態が起こり得ます。

新築物件と中古物件、リフォームなどローンの対象によってそれぞれ異なる要件もあり、詳細は国税庁のウェブサイトで確認しておくといいでしょう。

もう1つは、この措置があくまで“期間限定”で、未来永劫続くものではないということです。対象となるのは、2020年12月31日までに該当物件に入居するケースです。

住宅ローン控除を受けるには、ローン借り入れの契約をし、売り主に代金を払って引き渡しを受けたうえで実際に居住している状態でなければなりません。ローンの申し込みから融資の実行までには最低2週間、場合によっては1ヶ月以上かかることもあります。

物件を決めるのが来年末ギリギリになると、融資の実行や入居が2021年の年初にずれ込んでしまう可能性もあり、事前におおまかなスケジュールを把握しておきたいところです。

まだある政府の住宅取得支援策

政府の住宅取得支援策には、住宅ローン控除のほかにも次のようなものがあります。

【1】「すまい給付金」の要件緩和

年収が一定額以下の人に住宅購入の際に現金を支給する「すまい給付金」の対象者の収入要件(目安)が510万円以下から775万円以下に緩和され、給付額も最大30万円から50万円に引き上げられています。

【2】「次世代住宅ポイント制度」が創設

一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能を満たす住宅や家事負担の軽減に貢献する住宅の新築、リフォームに対し、省エネ家電や家具などと交換可能なポイントを付与する「次世代住宅ポイント制度」が創設され、新築物件で最大35万円相当、リフォーム物件で最大30万円相当がもらえます。

【3】住宅資金贈与の非課税枠が拡大

「住宅取得等資金の贈与における非課税制度(特例)」において、父母や祖父母など直系尊属からの住宅資金贈与の非課税枠が最大1,200万円から3,000万円に拡大されました(別稿で詳説する予定です)。

 

近々に住宅購入を検討されている方ならこれらを最大限に活用し、2%の増税分を大きく上回るメリットを享受したいものです。