ふと気が付くと、一気に寒くなっています。秋深し、という感じです。秋といえば芭蕉の句。「物言えば唇寒し秋の風」ーしかし何でこの句は秋なのでしょう?秋風って、冬と違って油断していて、すぅっと隙を突いてきてぶるっと震えるからでしょうか?

余計なことを言って災いを招くのは、油断の隙を突かれるからです。実際油断から生まれたと思われる”口は災いの元”は多く散見されます。しかし偶に、油断からではなく、確信的に生まれる災いもあります。強く印象に残っているのはイギリスのキャメロン元首相。いきなり唐突に、ブレグジットを賭けにした総選挙を行いました。国民の投票を道具に、賭けに勝とうと思ったのでしょう。政治家、特に行政のトップが主権者を利用した賭けをするという愚行は惨敗に終わり、未だにその問題は尾を引いています。

香港のキャリー・ラム行政長官も、逃亡犯条例を敢えて成立させる必要はなかったにも関わらず、”通るだろう”という賭けに出て、これも惨敗し、今、多大なツケを払っています。韓国の文大統領も、国民の反対も多かったにも関わらず、敢えてチョ氏を法相に任命するという賭けに出て、結局今、大きな混乱を招いています。いずれの場合も、行政のトップが国民の意見が分かれているにも関わらず、”勝てるだろう”という賭けに出て、事態を混乱させています。

トップがすべきことは、主権者の考えを読んで賭けをすることではなく、主権者に対して自らの考えを説明し、理解を得られるまで説明を続けることなのでしょう。もって他山の石とすべし。物を言う時は、覚悟が必要ですね。