このレポートのまとめ
- ニューヨーク株式市場が過去最高値に挑戦
- アメリカ人の好きなチャート・パターンに
- 米国経済で好調なのはGDPと消費
- 米国経済の不安要因はISM製造業景況指数とドル高
- 消費は遅行指標
- 最高値更新時はテクニカル的な買いが入る
- 強気一色になったときは製造業の景気指標の点検を怠るな
ニューヨーク株式市場が過去最高値に挑戦
ニューヨーク株式市場が過去最高値に挑戦しています。アメリカを代表する株価指数であるS&P 500指数は過去最高値とほぼツラ合わせの水準に来ています。
アメリカ人の好きなチャート・パターンに
もう1つ上のチャートに関して指摘したいことは、いわゆる「カップ・ウィズ・ハンドル(Cup with handle=紅茶カップ)」と呼ばれる、アメリカの投資家が大好きなチャート・パターンが形成されつつあるということです。
いまは紅茶カップの右半分が完成しつつあるところです。もし過去最高値前後の水準でしばらく株価が揉めば、それは紅茶カップの柄、すなわちハンドルを形成する展開です。言い直せば過去最高値付近でいったん地固めし、エネルギーを蓄えたうえで一段高するのがもっとも力強いチャート・パターンというわけです。
このようにテクニカル・チャート的にはニューヨーク市場はだいぶ良い形になりつつあります。それではそのような株価の上昇を裏付けるだけのファンダメンタルズ(経済や業績の基礎的要件)は本当に整っているのでしょうか?
米国経済で好調なのはGDPと消費
まず米国のGDPは堅調に推移しています。
好調な米国経済を支えているのはGDPの70%を占める消費です。
消費が堅調な理由は、1. 失業率が低く 2. 賃金が上昇しはじめているからです。
米国経済の不安要因はISM製造業景況指数とドル高
ただアメリカ経済に不安要因が無いわけではありません。まず米中貿易戦争がもたらす不透明感は経営者を将来の投資に消極的にさせています。
先日発表された8月のISM製造業景況指数も景気拡大と景気縮小の分水嶺である50を割り込みました。
もうひとつ経営者を用心深くさせている理由にドル高があります。いまは世界の景気に比べてアメリカの景気のほうが堅調なので、どうしても為替はドル高になりがちです。
ドル高は米国の輸出企業を苦しめます。
つまり製造業を中心としたアメリカ企業はギリギリのところで踏みとどまっているような状態なのです。
消費は遅行指標、今後の投資戦略
それでは消費と製造業では一体どちらが重要か?という問題ですが、上に述べたように経済に占める割合の大きさでは圧倒的に消費が重要です。
しかし消費はいわゆる遅行指標であり、景気の先行きを占うデータポイントとしてはいつもタイミングが遅くなってしまうことが知られています。
むしろ今後の景気の行方を考える場合、ISM製造業景況指数のようなメーカーの動向に密着した統計の方が行動の指針としては信頼できます。
すると冒頭の「現在の株高は経済のファンダメンタルズに裏付けられているのか?」という問いへの答えは「いまは裏付けられている。でもいつ暗転してもおかしくない」という結論になると思います。
往々にして株価が過去最高値を更新した局面では戻り待ちの売り物が無くなるので需給関係は良くなり、株価がグッと急伸するケースが見られます。したがって今回もそのパターンにならないとも限りません。
ただそういう感じで「カーッ!」と市場全体が強気一色に包まれた際は、もう一度足下の経済が崩れ始めてないか再点検することをお勧めします。