みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場はかなりボラティリティの激しい様相を呈してきました。
日米の貿易交渉は無難な決着となりそうですが、その反面、米中貿易摩擦はより深刻さを増してきています。欧米の景気動向も不透明となり、東アジアでは韓国ウォン安が進行し始めました。波乱の展開といった様相は否定できず、当面の株価は引き続き、悪材料に対して過敏に反応する展開が続くと筆者は予想しています。
消費税増税を契機とした景気後退局面入りを懸念
いよいよ10月から消費税が現行の8%から10%に引き上げられます。筆者は景気動向を考えて今回も最終的には引き上げ見送りの可能性が高いと見ていましたが、直近の参院選でもそれが論点に取り上げられることはなく、消費税増税はほぼ確定という状況になってきました(もちろん、リーマンショック級の波乱があれば引き上げ延期となる可能性もゼロではありません)。
そこで今回は、その消費税をテーマに取り上げてみたいと思います。このテーマは8%への増税時に2回ほどこのコラムでも書いており、そこでは電子マネーの普及および駆け込み需要の反動への留意というものに焦点を当てました。
結果論ですが、この時の見方はほぼ読み通りとなり、電子マネーはその後に大きく浸透したうえ、駆け込み需要の反動減は当時かなり景気のブレーキとなりました。
では、今回はどうでしょうか。筆者はまず、景気減速を依然として強く懸念しており、それを前提に考えておく必要があると想定します。つまり、消費税増税を契機とした景気後退局面入りです。
これに対して、景気に大きな影響はないとされる向きも少なくありません。この考え方の主たる論拠は、主に以下の点に集約されます。
1.上げ幅はわずか2%ポイントであって金銭的な負担増はそれほど大きくない
2.既にこのことは周知徹底されていて消費者への心理的抵抗もかなり小さい
3.増税と同時にキャッシュレスではポイント還元などもセットで打ち出されており、その効果も期待できる
4.むしろ、1,000兆円を越える財政赤字の方が深刻であり、税収増で赤字圧縮を図ることの方が健全化には適っている
確かに、こういった見方にもっともな点は多々あると言えるでしょう。
ポイント還元などの救済措置は痛税感を相殺しない
しかし、税率を5%から8%に引き上げる際も、「景気への影響は軽微」とする識者が多くいたことを忘れてはいけません。そもそも消費税率1%とは、およそ2.2兆円の税収に相当します。2%ポイントの引き上げとは、消費に出回っている資金の4.5兆円ほどを毎年税金として吸い上げるということに他ならないのです。
これは、(お金を市中に供給する)景気刺激策とは真逆のアクションであり、マクロ的には4.5兆円の景気抑制策を実施することに他なりません。そして、景気は最終的に人間の気持ちが決めるものであり、痛税感は理屈・理論で緩和はされません。
ポイント還元などによる救済措置も対象が限定されるうえ、複雑怪奇な仕組みやポイントなどの後付けでは日常的な痛税感を相殺するものにはならないと予想します。国民には周知徹底されているとしても、現実の痛みは理性を失わせがちです。
「ラクダの背を折った最後の1本の藁」との諺がある通り、わずか2%ポイントの増税であっても、積み重なった痛税感が限界点を越えてしまう可能性は十分あると筆者は考えています。
株式投資戦略として注目すべき2つの企業群
とすれば、今回は株式投資戦略として何に注目すべきでしょうか。まず、筆者は生活必需品領域を挙げます。
痛税感を感じる消費者は、不要不急の消費を抑制する生活防衛の徹底へとまず大きく舵を切ると予想します。実際、今回は駆け込み需要があまり見られません。
消費者は既に生活防衛モードに入っており、現行消費税率でも「十分に高い」と見ているように思えます。しかし、食品や医薬品といった生活必需品は生活防衛下においても出費を切り詰める訳にはいきません。消費が盛り上がってくるまでは、必然的にこういった必需品領域の相対優位性が増してくると考えます。
また、筆者は「痛税感をダイレクトに緩和させる仕掛け」を打ち出す企業群を2番目の注目点に挙げたいと思います。例えば、一部コンビニでは買い物と同時にキャッシュレスポイントで「値引き」還元する動きが出てきましたが、こういった動きは増税下ではかなり効果を発揮する可能性があるのではと予想します。
さらに、これは想像したくもないですが、大規模な景気抑制策となる以上、再びデフレ圧力が高まるというシナリオも拭えません。その場合は新たなデフレ銘柄が台頭してくるはずです。ただし、これはマクロ的には望ましいとは言い難い状況であることも確かです。消費税増税の影響は慎重に見極めていくべきでしょう。
今回はかなり弱気なスタンスのコラムとなってしまいました。それだけ病み上がりの日本経済に増税は荷が重いと筆者は感じています。どうかこれが杞憂であって欲しい、と強く願って止みません。