金融市場で夏のホラーストーリーと言えば、度々発生する脆弱国の問題です。週末にも、人口の2割に当たる170万人規模のデモが行われた香港が不安材料ですが、こうした動きを受け、先週末、ゴールドマン・サックスが、香港、シンガポール、韓国、台湾という「アジアの虎」の経済成長見通しを引き下げました。

この中で足元で懸念が増してきたのは、急速なウォン安と景気鈍化が進む韓国です。韓国の不安材料は大きく2つあります。まずは企業業績。先週、大韓航空が米中問題等から4-6月期が1000億ウォン(=88億円)の赤字に転落したと発表、サムスンも半導体の不振等で前年同期比55.6%の大幅営業減益を発表しました。既に昨年は、元利払いが利益で賄えない「ゾンビ企業」が全上場企業に占める割合も、前年から4ポイント上昇の18%と、日本の5.5倍となっています。韓国は、ドル建ての対外債務額が高めなので、ウォン安は返済負担を一層増加させます。

韓国のもう一つの不安要素は家計債務です。韓国の家計債務はGDPに対して97%と世界有数で、かつ直近の伸びもOECD諸国では最も高くなっています(BISデータ)。しかも、韓国のカード利用率は世界一といわれ、カードローンも相対的に大きいとみられます。既に自営業者の借金の延滞率が急上昇しており、景気減速は個人の債務返済能力にも影響を及ぼしそうです。

そんな中で、日韓が互いに貿易の優遇国である「ホワイト国」から除外しました。格付会社は韓国を日本より高い「AA」レンジ(日本は「A」レンジ)としていますし、韓国リスクは今のところそこまで意識されていません。しかし、日本との関係も深いだけに、若干警戒レベルを高めておいた方がいいかもしれません。