第三部:「株主優待でエンジョイライフ」講師:桐谷広人氏(株主優待家)

>>桐谷広人氏(1)「株主優待は農業のようなもの」――マネックス20周年特別イベント

株主優待と配当金はどう違うか?

まず配当は持っている株数に応じて支払われます。例えば100株持っている人には100円、1,000株持っている人には1,000円、1万株持っている人には1万円と、たくさん株を持っている人がたくさんもらえるのが配当金です。

また1円の配当だったら、1年目でも1円で、30年目でも1円と変わりません。ただし優待は長く持っていると増えて行く企業が多いんです。

例えばJPXという証券取引所を運営する会社(日本取引所グループ(8697))は、10数万円で株主になれます。初年度3月に持っていたら、優待が1,000円分のQUOカード、1年以上で2,000円分、2年以上で3,000円、3年以上は一律4,000円のQUOカードがもらえます。

現在上場企業でいつでも株式市場で株が買えるのが3,700社くらい。そのなかで、株主優待を設けているのは1,500社、約4割になります。そのうち長期保有優遇といって、長く持っていると優待の優遇があるのが、百数十社あります。

投資で一番大事なこと

東大の経済学の先生が「世界一受けたい授業」に出演していて、「投資で一番大事なことは1に分散2に分散、3、4がなくて5に分散」と答えていましたが、その通りだと思います。

ひとつの会社に投資して、大儲けするときもありますが、会社がつぶれたら大損ですから。なかには500株、1,000株買わないと優待がもらえない会社もありますが、5万円以下でも買える優待を提供している会社も150社位あります。

バブル崩壊後、株主優待を新設する会社が増えている理由

企業がなぜ株式を上場するかというと、株券を投資家に買ってもらって、そのお金で工場を作ったり、新製品を開発したりしたいわけです。

ところが日本は1990年代にバブルが崩壊して以降、日本人投資家が減り、6~7割が外国人投資家になってしまいました。そのため、日本人投資家にもっと株を持ってもらおうということで株主優待を新設する会社が増えています。

かつては企業が儲けを出してもあまり配当には回さず、内部留保をしていました。例えばバブルの時代は平均して2%も配当は出ていませんでしたね。でも現在は4%程度の配当を出す企業が400社くらいあります。

2018年の税収がバブル期を越えて過去最高になったというのは、株の配当金の影響が大きいと聞いています。株主優待を実施していなくても、利回りが高い企業に分散投資をすれば、割と安定的に収益が得られると思います。

どのくらいの資金があれば優待生活ができるか?

私は今賃貸に住んでいます。優待だけで賄うのは大変ですが、持ち家があったとしたら、3,000万円位を優待株に分散投資したら質素な生活はできると思っています。4%くらいの配当で、配当と優待を合わせて、税金を引かれても150万円位は残りますから。

3,000万円を定期預金しても金利は0.01%ですから、1年で3,000円しか利息がつきません。そこから税金を引いたら2,400円になり、1週間も生活できないですね。

日本は今、法人税がどんどん下がって、逆に消費税が8%、10%と上がっていきます。消費税が上がった分と大企業の法人税が下がった分が同じ位なので、貧乏人が税金を穴埋めしていることになります。

これに対抗する手段はただひとつ。今日は無料の講演会だからあまりお金持ちの人はいないと思うんですが(笑)、5万円くらいは余っていますか?

そしたらまず、5万円で優待株を買ってみる。1,000円のQUOカードがもらえて、配当金が5%位という会社を検討してみる。1,000円のQUOカードでコンビニで買い物して節約して、ちょっとお金が貯まったら、もうひとつ優待株を買ってみる。

消費税率引き上げを目前にして生活を良くしようと思っても厳しいので。まずは優待株を100株位ずつ買って行くことで、お金持ちとの貧富の差を縮めていければいいですね(笑)。

お金はあるけど、株はリスクがあるからやらないと言う人も、20万円あれば、5万円位の株に分散投資ができますから。これを利用するのも選択肢の1つだと思います。

私と同年代の方は、引退して家でテレビを観ている人が多いですけどね。優待券には期限がありますから、使わなければならないんです。そのため、外を歩いたり、自転車で走ったりしていると、健康にもなれます。株主優待は個人投資家にいろいろな恩恵があります。

 

本コンテンツは2019年8月3日(土)開催のマネックス20周年特別イベントの書きおこし記事です(イベントの内容を一部抜粋して掲載しています)。

次回は、桐谷広人氏(3)「アラサー女子にオススメの優待銘柄」――マネックス20周年特別イベント についてお届けします。

 

ライター 阿部桃子
出版社、テレビ局勤務等を経て、フリーランスの編集・ライターに。主なジャンルはビジネス・教育・子育て。AERA with Kids「子どものお金教育」「子育て世代の初めての投資」特集ほか、起業とお金をテーマに執筆することが多い。株主優待券好きの家庭で育ち、子どもの頃から映画鑑賞にお金を払ったことがない。