このレポートのまとめ

  1. 米国株式市場は下げ局面を迎えている
  2. 関税率の引き上げの影響は限定的
  3. ファーウェイへの輸出規制は米国のハイテク企業の業績に響く

米国株式市場は下げ局面を迎えている

5月4日にトランプ大統領がツイッターで「中国との貿易に関する話し合いが上手く行っていないので関税を25%に引き上げる」と発表しました。

それ以来、米国の株式市場は調整局面に入っています。

出所:ヤフー・ファイナンス

米国は中国からの2000億ドルの輸入品に対する関税をこれまでの10%から25%へ5月10日付で引き上げました。

さらに1. ファーウェイ(華為技術)製品を輸入し米国の通信インフラに使用することを大統領令で禁ずる、2. 米国企業が部品をファーウェイに輸出する際は先ず商務省の許可を得ること、という措置を発表しました。なお2. に関しては混乱を避ける意味で60日間の猶予期間を設けてあります。

関税の影響

まず2000億ドルの輸入品に対する関税率を25%に引き上げた事が米国のGDPに与える影響は-0.2%程度だと言われています。つまりこれは大騒ぎする事ではありません。

 

また今回関税率が上がった輸入品(下図の「第二ラウンド」)の多くは中間品と資本財であり消費財を多く含んでいません。

出所:USITC(アメリカ国際貿易委員会)

そのことはインフレを誘発するリスクは限定的であることを示唆しています。

ファーウェイに関して

次にファーウェイ製品を米国の通信会社が購入することを禁ずる措置に関しては、もともとアメリカではファーウェイ製品はほとんど売れてないので実害はありません。

ただ最後の米国企業がファーウェイに部品などを売り渡す際、商務省から許可を得なくてはならないという点に関しては下記の個別企業にかなり影響が出ます。

トランスミッター、レシーバーなどの光学エレクトロニクスのメーカーであるネオフォトニクス(ティッカーシンボル:NPTN)は売上高の46%をファーウェイが占めています。同社は5月23日の決算発表の際、第2四半期の売上高予想をこれまでの8800万~9300万ドルから7500万~8000万ドルへと下方修正しました。

トランスミッション部品、レーザー部品などを製造している光学部品メーカー、ルメンタム・ホールディングス(ティッカーシンボル:LITE)の場合、売上高が11%をファーウェイが占めています。同社も6月期の売上高ガイダンスをこれまでの4.05~4.25億ドルから3.75~3.9億ドルへと引き下げました。

インフィ(ティッカーシンボル:IPHI)は高速アナログ/ミックスト・シグナル半導体のデザイン会社です。同社の半導体は帯域幅ボトルネックを解消し、レイテンシーを最小化するために使用されます。ファーウェイが売上高の14%を占めています。同社も6月期のガイダンスをこれまでの8680万~9080万ドルから8230万~8630万ドルに引き下げました。

クォルボ(ティッカーシンボル:QRVO)は化合物半導体メーカーでガリウムヒ素などに基づいた半導体を一貫生産しています。ガリウムヒ素半導体はミサイルに代表される防衛関連産業で使用されるため、歴史的に同社ならび同社製品は国策の見地から特別な扱いを受けてきました。ファーウェイが売上高の12%を占めています。同社は6月期の売上高ガイダンスをこれまでの7.8~8億ドルから7.3~7.5億ドルに下げました。

アンプ、チューナーなどのアナログ半導体のデザイン会社、スカイワークス・ソリューションズ(ティッカーシンボル:SWKS)の場合、ファーウェイ比率は約10%です。

スマホに使用されるCDMAチップのデザイン会社、クアルコム(ティッカーシンボル:QCOM)のファーウェイ比率は10%以下です。

ザイリンクス(ティッカーシンボル:XLNX)はFPGAのデザイン会社です。同社の半導体はネットワーク機器その他に使用されます。同社は売上高の約半分を代理店経由で販売しているため、最終顧客の厳密なデータは取りにくいです。地域別では日本を除くアジア太平洋が売上高の45%を占めています。