子どもが独立した夫婦2人世帯に高額の死亡保障は不要

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2018年)を見ると、世帯主が60~65歳の世帯が1年間で支払う保険料は約44万円にも上っています。1ヶ月あたり約3万6500円。リタイア世代には決して軽くない負担です。

驚いたのは、60代前半の世帯主が平均で2493万円もの死亡保険に加入していたこと。ちなみに、この額は働き盛りの30代後半や40代前半の世帯よりも多いのです。果たして60代になっても、これほど高額の死亡保障が必要なのでしょうか?

もちろん、中には必要な人もいます。例えば、晩婚で50歳以降に子どもが生まれた人。還暦を過ぎても子どもはまだ小中学生ですから、もしもの時に備えてそれなりのお金を準備しておかなければなりません。

しかし、子どもが独立して夫婦2人の世帯なら、2500万円近い死亡保障ははっきり言って“掛け過ぎ”です。ご主人が突然亡くなるようなことがあったとしても、会社員時代に25年以上厚生年金に加入していれば、残された奥さんには遺族厚生年金が支給されます。住宅ローンの支払いが残っていても団体信用生命保険で相殺されますから、自宅も丸々残るのです。

いっそのこと死亡保障は半分程度に減らして、浮いた保険料を投資や趣味に活用した方が、今後の生活の充実につながるかもしれません。

安易に解約・減額すべきでない“お宝保険”もある

その際気を付けたいのは、若いときに加入した生命保険をずっと継続している人です。保険の運用利回りを示す予定利率はバブル期には5%を超えていました。この頃に加入した終身保険は、持っているだけで解約返戻金が増えていく“お宝保険”。65歳まで保険料を払わなければならないとしても、こうした保険については安易に解約したり減額したりしない方がいいでしょう。

定年は生命保険を見直す絶好のチャンスです。自分や家族のための生命保険なら、そろそろ“卒業”を考えましょう。しかし、70代になると生命保険の別の活用を考える必要が出てきます。それは、次世代への相続です。

相続税の本来の非課税枠(税金がかからない上限)は『3000万円+(600万円×法定相続人数)』ですが、生命保険はそれとは別枠で『500万円×法定相続人数』まで課税されません。子どもや孫に資産を残したいと考えている人なら利用価値は高いと言えるでしょう。

とりわけ日本では財産の大部分が不動産で現預金が少なく、子どもが高額の相続税を払えないという話をよく聞きます。こうしたケースでも、親が子を受取人にして生命保険に加入しておけば、子どもは死亡保険金を相続税の支払いに充てることができるのです。