中国で和食店が広東料理・上海料理の市場規模を上回る

中国では、日本旅行の経験者の増加と健康志向を背景に、日本食の人気が高まっており、和食レストランも増加の一途を辿っています。

日本貿易振興機構(JETRO)の集計によると、中国国内の和食店は、2013年に10,600店ほどでしたが、2017年には40,800店と、3.85倍に増加しました。また、農林水産省が、2015年から2017年の3年間に、海外で開店した和食店31,000店を調べたところ、その半数は中国国内のものでした。

店舗数の増加に比例して、売上も伸びています。業界団体の推計によると、2016年の中国国内の和食レストランの売上高は1,610億元(約2.6兆円)に達し、中国で最も人気のある広東料理や上海料理の市場規模を上回ったそうです。

近年の傾向としては、日本への旅行者が増えて「本物の味」が広く理解されたこと、また物流網が発達して日本からの鮮魚などの輸入が増えたこと、さらには経済成長で可処分所得が増えたことで、より高級かつ高価格の料理、レストランが人気を集めています。

加えて、地方都市から日本への航空便の新規就航や増便が続き、旅行客が増えたことや、北京、上海などの大都市から帰郷する人が増えたことで、地方都市での伸びが目立っているそうです。

北京では客単価1万円以上の高級寿司店が目立つ

中国の特徴として、20代から30代の若い人たちが高い所得を得て、消費をリードしていることが挙げられます。そのため、和食店も、例えば居酒屋が内装にアニメのキャクターを取り入れるなど、若年層を意識した店造りを進めたりしているそうです。

上海には在留邦人が5万人ほどいるとされ、また南部の広東省は製造業を中心に日系企業が好調と伝えられています。これらの地方では日本人をターゲットにしてもある程度のビジネスが成り立ちそうですが、北京では駐在員やその家族などの減少傾向が止まっておらず、また地方都市に行くほど、地元の中国人を取り込む必要があります。

北京でも、寿司店や居酒屋などを見ますと、もちろん日本人の姿も見られるものの、繁盛店ほど中国人の若い人たちで賑わっています。また、以前から寿司が人気でしたが、ここ数年の傾向として、日本で修業を積んだ中国人の板前が独立開業した店舗、それも客単価が1万円以上になるような高級店が目立っています。

もちろん、家族連れには回転寿司が人気で、日本の「元気寿司」や地元資本の店などが競っています。ショッピングセンター内の店などは、週末には入店待ちの長蛇の列ができています。

ラーメン、とんかつ、焼き鳥などの専門店も

寿司店以外では、種類豊富な酒と料理を提供する居酒屋スタイルの店が人気を集めているほか、これも日本への旅行客の影響かラーメン店、特にとんこつ系の店が増えています。さらには、とんかつ、焼き鳥などの専門店も相次ぎ開業しており、競争はますます熾烈になっています。

価格帯はまちまちで、おそらくクオリティもばらつきが大きいものと思います。日本でも「中華料理」と言えば、本格的なものから、街の中華料理店の「日式中華」までいろいろですので、中国でも様々な日本料理、あるいは「日本風料理」が発展し、人々に広く受け入れられていくでしょう。先々、どのような料理が流行し、人気を集めるのか、ちょっと楽しみではあります。

中国では、「食事は中華、それも故郷の味に限る」という人も多い一方、若年層を中心に世界各国の料理も広く楽しまれています。食に対する欲求、貪欲さは凄いものがあると感心させられます。その中で、日本食が広く受け入れられ、定着することを願いたく思います。