いよいよ令和の時代となりました。平成天皇の生前退位に伴う改元ということで、日本では祝賀ムードにあふれていることと思います。

このコラムは連休の前に執筆しておりますが、連休中に内外で事件など大きな動きがなく、来週休み明けの市場の取引が平穏なものとなることを願いたいと思います。

ゴールデンウィークということで、いつもとは少し趣向を変え、日本ではあまり知られていないと思われる中国の株式市場の特徴や、主たる取引参加者である個人投資家の動向などをご紹介したく思います。

なお、以下の内容は、私が得ております知識、情報の限りにて記載するもので、正確を期してはいますが、事実誤認等が含まれている可能性があります。ご容赦ください。

国内でクローズされた中国の株式市場、対外開放は徐々に進む

まず、中国の株式市場の大きな特徴として挙げられるのが、海外投資家の参加が厳しく制限されており、基本的に国内でクローズした市場であることです。

当社の取扱商品に「中国株」がありますが、これは中国の企業が発行する株式であっても、香港市場に上場されている「H株」と呼ばれるものです。そのため、株価(呼値)は香港ドル建てで、香港ドルで購入することになります。

中国大陸には、上海と深圳に証券取引所があります。そちらに上場されている人民元建ての「A株」と呼ばれる株式は、基本的に中国国内の個人及び法人のみが購入でき、外国人は適格海外機関投資家(QFII)と呼ばれる、中国政府より個別に認可を受けた投資家が、付与された投資枠内でのみ株式を取得することができます。

逆に、中国国内の投資家は、適格国内機関投資家(QDII)と呼ばれる、QFIIと同様に政府の認可を取得した者を除き、日本株や米国株など、中国外の株式に投資することができません。

実際には、富裕層などが香港の証券会社に口座を開設し、海外の金融商品への投資を行っているそうですが、中国では外貨管理、特に人民元から外貨への両替が厳しく制限されているため、このような規制が存在します。

なお、現在は上海と香港、ならびに深圳と香港の取引所間で相互乗り入れが行われています。中国の投資家は香港市場上場株式への、また香港の投資家は上海と深圳市場の上場株式への投資が可能となっているほか、上海とロンドンの両取引所の上場株式について、預託証券形式で相互に取引を可能とする制度が設けられており、徐々に対外開放が進みつつあります。

短期売買、大相場の到来を待つ個人投資家が中心の中国市場

一方、投資家に関する特徴としては、日本とは対照的に、個人が主たるプレイヤーとなっていることが挙げられます。

東京市場では、機関投資家、特に海外投資家の取引動向が相場を左右していると言われますが、中国では上述の通り海外投資家の参加が制限されており、また年金制度が未発達で保険の普及も道半ばのため、機関投資家の存在が希薄なものとなっています。

5年ほど前の古いデータになりますが、東京、香港と上海の各取引所の比較を行った時に、株式時価総額は三市場の間に大きな差がなかった一方、売買代金は上海が一桁多くなっており、大変驚いたことを記憶しています。

すなわち、上海では、東京や香港の10倍の頻度で株式が売買されているということです。個人投資家による短期売買が取引の中心となることで、投機色が強まり、相場が一方向に動きやすいと指摘されています。

また、投資家も、証券会社も、数年に一度訪れる大相場に勝負を賭けているところがあり、例えが適切かどうか「?」ですが、ひたすら大物を待つマグロ一本釣り漁師のような様相を呈しています。

中国にも、日本と同様インターネットでの株価情報サービスやニュースサービスなどが多数存在しています。短期売買の個人投資家が中心ということで、どうも親族や親しい友人などからの「耳寄り情報」が投資判断の重要な材料になっているようです。

また、「大相場の到来を待ちそれに乗る」という投資家も多いようです。

加えて、株価操作や風説の流布、インサイダー取引なども横行しているとされ、「昭和の日本」の株式市場に近いものとなっています。市場の浄化が求められるところです。

中国企業の中でも、海外展開を進めている企業などは、上海や深圳ではなく香港市場での株式上場を選択する傾向があり、H株銘柄もバラエティ豊かなものとなっています。当社の中国株をきっかけに、中国の株式市場にご関心をお持ちいただけましたらうれしく思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。