株主優待とは
株主優待とは「株を持っていてくれてありがとう」という感謝の意を含み、会社が株主に対して贈るものです。株主優待の内容は「自社製品」や「食事券」など、会社によって工夫を凝らしたものになっています。また、贈る頻度については年に1回、もしくは2回とする会社が多くを占めます。
株主優待は、持っている株数によってもらえる内容が違ってきます。おおまかに言うと、たくさん株をもっていれば、それだけよい優待品がもらえるのですが、「持っている株数」と「株主優待の質」が完全に比例するわけではないので、この点は注意が必要です。
例えば「1人で500株を持つ」よりも「家族5人で100株ずつを持つ」方が、優待品を効率よくもらえる場合があります(むしろ、このケースの方が多いです)。同じ株数でも保有している状況によって優待をもらう上での損得は異なるため、一番お得にもらえる株数を把握して投資を検討するというテクニックもあります。
なお、株主優待制度を実施している会社は2020年8月現在で1,517社となっており、上場企業の3分の1以上は株主優待を実施している計算となります。そのうち、10万円以下で買える株は503社あり、投資初心者でも手掛けやすくなっています。株主優待制度を採用する会社は、毎年少しずつ増えているので、これからどんな株主優待が誕生するのか楽しみですね。
株主優待のメリット・デメリット:企業目線と投資家目線
株主優待のメリット・デメリットは、「企業側」と「投資家側」で分けて考える必要があります。
まず企業側のメリットは、株主優待を目的に個人投資家の株主数を増やし、安定株主を確保できる点があります。個人投資家は株を長く持つ傾向にあるので、買収の防衛にうってつけの存在となり、経営がしやすくなります。
反対に企業側のデメリットとしては「株主優待にかかる経費」の問題があります。株主数が少ないうちはあまり気になりませんが、優待目当ての投資家が増えてくると、費用がバカにならなくなってきます。例えば、人気のカゴメ(2811)の優待の場合、100株保有で2,000円相当の自社製品詰め合わせがもらえるのですが、株主数は19万人もいるので、単純計算で3.8億円分の費用がかかります。
もちろん自社製品なので、そこまでの費用はかからないにしても、梱包や配送などの費用も考えると、近い数字にはなってきます。このような事態になると、会社としては、株主優待の内容を変更したり、贈る対象を株の長期保有者のみにしたり、はたまた優待制度そのものを廃止・縮小するという判断をしなくてはなりません。
一方、投資家側のメリットは、なんと言っても株主優待のお得感です。投資家が株を買う理由は、株価上昇や配当がメインとなりますが、株主優待はそれに続く3つ目の権利とも言えます。そのお得感の評価ですが、一般的には「優待利回り」という指標を使って評価をします。例えば、とある株を100株、10万円分買い、株主優待として年1回3,000円分の自社製品をもらったとします。この場合の優待利回りは3%(=優待3000円分÷10万円)となり、株主優待の中でも高利回りといえる水準になります。もしそれが普段の生活で使える株主優待であれば、なおさらお得感も増しますね。
反対に投資家側のデメリットとしては、保有株数と優待内容が比例しない点が一番のデメリットと言えます。例えば、大量に株を保有する機関投資家の場合、そもそも優待自体を必要としませんし、自分たちが享受できない優待費用が会社から出ていってしまうことを嫌います。こういったことから「株主優待制度はやめて、配当で株主還元をしてほしい」という声が多くあがっているのが実情です。
また、個人投資家の場合、例えば優待品が「地方で展開しているお店の割引券」だったりすると物理的に使うことができません。株主にとって不必要な優待が届いてしまうというのもデメリットと言えるでしょう。
株主にかかわる重要な情報は、企業サイトのIR情報などでも確認できる
企業側のデメリットとして紹介した「優待制度そのものを廃止・縮小するという」ことが実際に発生した場合、これは優待狙いで投資をしていた個人投資家には大きなデメリットになります。投資をしてから「知らなかった!」とならないように、株主優待が廃止される際、その情報はどのように展開されるものかを直近の実例をもって紹介します。
2020年8月21日に株主優待の人気銘柄であったトラスコ中山(9830)が、費用の増加を理由に優待廃止を発表しました。
トラスコ中山(9830)の株主優待は、令和元年(2019年)12月末日現在の株主名簿記載の株主様への株主優待制度をもって廃止が発表されました。こうした株主にとっての重要な情報は上場企業の取締役会で決議され、決定内容が企業のIR情報として各企業のサイトに掲載されます。
株主優待はその認知度があがり、いろいろなメディアに紹介されるようになりましたが、こうした実際の企業サイトで株主へのお知らせや、株主優待の情報を直接確認することはとても重要です。