企業型確定拠出年金とは退職金の進化系

こんにちは、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝です。世の中には、一見自分に関係がないと思っても、将来大切な意味を持つことがあります。

今回お伝えする企業型確定拠出年金もそのひとつです。確定拠出年金は、退職金の進化系です。ここでいう退職金とは定年退職まで勤め上げたサラリーマンが、老後の蓄えとして会社から受け取るお金です。若い皆さんにはピンとこないかも知れませんが、将来の自分のために今しっかり取り組むべきことです。

定年時の退職金はとても大きなお金が一時金で支払われることもあります。また昭和の時代に一世を風靡した厚生年金基金のように、終身で年金が支払われる手厚い制度もありました。しかしこれらの制度を維持する会社の負担は相当なもので、平成の中頃には、確定拠出年金という新しいタイプの退職金制度に切り替える会社が多くなりました。

退職一時金や厚生年金基金は、「将来支払う金額」をあらかじめ決めて、会社がお金を準備する仕組みでした。将来の「給付額」が「確定」しているので「確定給付型」と呼ばれたりします。会社はお金を準備するために、資金を運用するのですが、運用に失敗すると責任を負わなければならず、経済環境の変化の中でそれがだんだん難しくなりました。

そんな時に登場したのが、確定拠出年金です。これは会社が毎月「確定」した金額を従業員に「拠出」して、従業員に将来の退職金の原資を運用してもらおうというコンセプトの退職金です。

確定拠出年金は、毎月の掛金は「確定」ですが、将来の額は「不確定」、自分の運用次第で、うまくいけばプラス、失敗すればマイナスです。運用次第で将来の受け取り額が変動します。

確定拠出年金の掛金は特別お得

自分で運用するとなると不安もあるかもしれませんが、確定拠出年金にはメリットがいっぱいあります。まず会社からの掛金は、税金も社会保険料もかかりません。例えば給与には、所得税がかかります。超過累進課税なので段階的に税率は高くなります。例えば、年収300万円から400万円くらいの方はおおよそ5%が所得税です。また住民税は10%、社会保険料は約15%ですから、手取りは約30%少なくなる計算です。しかし確定拠出年金の掛金はこれらが一切かからない、つまり30%お得に老後の資産形成ができるということです。

会社によって確定拠出年金の掛金の決め方は異なります。会社が勤続年数や役職などによって掛金を決めるところもあれば、自分の給料の中から、自分で掛金を決める会社もあります。でも共通する点は、「自分で運用する商品を選ぶ」というところです。

お金を運用する方法はいろいろあります。銀行や保険、証券会社にも様々な金融商品・サービスがあります。通常、資産運用をして利益が出るとその利益に対し20.315%(※)課税されますが、確定拠出年金はこの税金がかからないのです。税制優遇制度をうまく利用して、少しで将来のお金づくりの準備をするとよいでしょう。次回は、確定拠出年金で失敗しない資産運用の心得についてお伝えします。

なお、お勤めの会社で企業型確定拠出年金が提供されていない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用することができます。今後この連載でも紹介していきます。

(※)通常、売買益、配当等にかかる税率は、20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)です。