今週の相場動向

相場回顧 BTC:抵抗線の突破を契機に急騰し一時BTC=60万円に迫る

BTCは、週初より緩やかな上昇基調となる中、4/2に年初来高値で抵抗線と見られていたBTC=46万円を上抜けると買いが強まり急騰した。急騰に伴うショートポジションの解消およびロスカットが相場を押し上げると、さらなる上昇期待からBTCは価格を伸ばし一時BTC=60万円に迫った。週末にかけては短期筋による利益確定売りが優勢となりやや価格を下げたが、週足では20%を超える大幅上昇となった。

今回の急騰の要因としては、グローバルマーケットにおけるリスクオンムードの高まりが第一に挙げられるだろう。FRB政策転換による為替市場への影響は限定的で、株式市場も米国株が牽引する展開となっている。懸念材料として見られていた米中通商協議についても合意への期待が強まり、市場全体として攻めに動きやすい環境となりつつある。そのような中、BTCが抵抗線を突破し急騰したことを受けて様子見姿勢を取っていた投資家らが揃って動き出したと見るのが妥当か。

BCHも、BTC急騰の局面でさらに強い動きを見せ、週足で50%を上回る暴騰となった。具体的な要因は不明だが、BCHの暴騰により4/2以降ハッシュレートがBTCからBCHに移行する動きが確認されている。

 

今週のトピックス

  • 米SECが現在申請されている2つのBitcoin ETFの可否判断を延期。(3/29)
  • 楽天ウォレット、今夏より仮想通貨取引サービス「楽天ウォレット」を開始。(3/29)
  • ゼロテンパークが中洲にブロックチェーン関連シェアオフィスを開業。(3/29)
  • Coinbase CustodyがTezos(XTZ)をサポート、近日MakerDao(MKR)もサポート予定。(3/29)
  • NEM.io財団がカタパルトのロードマップと展望を公開。(3/29)
  • Bakktが取締役組織の詳細をブログ上で公表。(3/30)
  • OmiseGoが買収報道を否定、メディアも「フェイクニュースではない」と譲らず。(3/30)
  • Bithumbが仮想通貨流出のため入出金サービスを一時的に停止。(3/30)
  • Coincheckが大口OTC取引サービス提供開始。(4/1)
  • スイスの食品製造設備大手Bühlerがブロックチェーン技術対応製品を発表。(4/1)
  • 合弁会社SBI R3 Japanがキックオフイベントを開催。(4/1)
  • Binanceトークンセール第四弾の詳細が発表。(4/1)
  • 金融庁が仮想通貨の「疑わしい取引の参考事例」を発表。(4/1)
  • マルタ金融サービス局(MFSA)が仮想通貨金融資産法(VFA)に基づき14のエージェントを承認。(4/2)
  • スイス証券取引所(SIX)がXRP価格に連動したETPを上場。(4/2)
  • ビットコイン価格急騰で5,000ドル突破、他通貨も追随。(4/2)
  • 米決済大手PayPalがブロックチェーン企業Cambridge Blockchainに出資。(4/2)
  • 米SECが仮想通貨専門の法務顧問採用を希望。(4/2)
  • スイスの5つ星ホテルDolder GrandがBTC決済を受け入れ。(4/2)
  • ㈱セレスが慶應義塾大学SFCでブロックチェーン寄附講座を開設。(4/3)
  • リキッドグループがシリーズCでの資金調達を終えユニコーン企業へ。(4/3)
  • EUがブロックチェーンの普及を目指す国際機関INATBAを立ち上げ。(4/3)
  • 米SECがトークン発行者向けの新たな規制ガイダンスを発表。(4/3)
  • 米SECがICO予定の企業に対し初となるNo-action Letterを発行。(4/3)
  • BinanceがBinance SingaporeおよびBinance DEXのサービスを月内に開始予定。(4/4)
  • シュツットガルト証券取引所傘下にXRPとLTC連動のETPが上場。(4/4)
  • カナダ仮想通貨取引所がCAD連動のステーブルコインをローンチ。(4/4)
  • Digital Assetが独自言語Digital Asset Modeling Language(DAML)をオープンソース化。(4/4)

来週の相場予想

BTCは上値を探る展開となるか

今週の急騰を受け、4/2以降CoinMarketCapで確認されるBTCの日間取引高が2倍以上に膨らんでいることからも、市場を静観していた多くの投資家がアクティブになることが予想される。また、リスクオン環境の中で投資家が、仮想通貨市場のボラティリティによる短期利益を狙って、動きの少ない株式為替市場から資金を寄せる動きも強まると考えられる。

思惑次第ではBTC=5,500ドル(61万円付近)まで上昇することもあり得るだろう。直近下値としてはBTC=5,000ドル(56万円付近)を意識。

ただし、大口売りにより急落することがあれば、一気に資金が市場から離れ大きく価格を下げる恐れがあることは警戒しなければならない。

来週のトピックス

  • Security Token Summitがロサンゼルスで開催。(4/8)
  • Crypto Invest Summitがロサンゼルスで開催。(4/9-10)
  • OKEx C2Cローンチイベントがベルリンで開催。(4/10)
  • Odyssey Hackathon 2019がオランダで開催。(4/11-15)

業界関連動向

規制動向 米SECがトークン発行者向け規制ガイダンスを発表

4/3、米国証券取引委員会(SEC)がトークン発行者向けの新たな規制ガイダンスを発表した。これは、SEC内のイノベーション戦略室FinHubの見解を示したもので、法的拘束力を持つものではない。

発表されたガイダンスでは、トークンが有価証券に該当するか否かの判断基準が述べられている。これまでも度々議論されてきたHoweyテストのデジタル資産への応用を検討する内容で、トークンの発行が投資契約であるかどうかが一つの焦点となった。改めてHoweyテストの概要を説明すると、「第三者の努力に依拠して利益が期待されている」且つ「企業への金銭投資が発生している」場合には、証券法上の投資契約に該当すると判断される。FinHubはトークンの性質を判断する際に前者の論点が特に重要であると考えているようだ。

トークン発行者にとっては、それが証券法の適用対象になるかどうかが大きく事業の行方を左右する。過去には全てのトークンが証券に該当するとの極端な見方もあったが、同日SECがICO予定の企業に対しNo-Action Letterすなわちトークンが証券に該当しない旨の承認を出したように、規制方針の明確化と共にトークンの性質の棲み分けもまた進行している。

技術動向 NEM.io財団がカタパルトのロードマップと展望を公開

3/29、NEM.io財団がNEM(XEM)ブロックチェーンの大幅アップデートバージョンとして注目を集めるカタパルトの開発ロードマップと展望を公開した。

NEM(XEM)とは、開発の容易さが特徴的なパブリックブロックチェーンである。そして、オープンソースでの開発が進められているカタパルトは、その実装によって複数トランザクションの一括処理や複数階層でのマルチシグ設定、他のブロックチェーンとのクロスチェーンスワップなど多くの機能が追加され、ブロックチェーンのスケーラビリティ・セキュリティ・ユーザビリティいずれも大きく改善することが期待されている。

今回のロードマップによれば、2019年Q2までに事前テストを完了させ、2019Q3にテストネットを公開、2019Q3後半からQ4にメインネットを公開する予定となっている。これらの期間には、ウォレット機能の拡充やSDK開発、新たなコンセンサスアルゴリズムの実装など様々な開発工程が存在する。メインネットローンチ後にはSTO、ステーブルコイン、IoT、IPFSのサポートといったアイデアベースの計画も示されてはいるが、まずは計画通り2019Q3にテストネットの公開が行われるかが直近の焦点となるだろう。定期的な開発進捗の報告は随時確認が必要である。

個別企業動向 リキッドグループがシリーズCでの資金調達を終えユニコーン企業へ

4/3、国内外で仮想通貨取引所を運営するQUOINE株式会社をグループに持つリキッドグループ株式会社(Liquid)が、シリーズCラウンドでの資金調達を実施し、評価額が10億ドルを超えたと発表した。2014年設立のLiquidは、設立5年以内にユニコーン企業の地位を確立したこととなる。

今回の投資ラウンドは、CoinbaseやRipple、Bitmainなど多くの仮想通貨・ブロックチェーン企業に出資を行うグローバル投資ファンドIDG Capital(IDG)が主導し、Bitmainもまた出資者として参加した。10億円弱(日経報道)と言われる調達資金は、事業のグローバル展開や取引プラットフォームの開発、セキュリティトークン市場への参入等に使われるという。LiquidでCEOを務める柏森氏は「IDGとBitmainという著名企業が当社に参画したことで、Liquidは今年の仮想通貨市場を牽引する主要企業の1社になることができるだろう」と述べている。

ユニコーン企業とは、評価額10億ドル以上の非上場かつ設立10年以内のベンチャー企業を指すが、日本ではメルカリ上場後AI開発企業Preferred Networksの1社となっていた。仮想通貨業界においてBinanceやCoinbaseといった巨大企業が世界的に生まれる中、日本からもそのような企業が誕生したことは素直に喜ばしいニュースである。

コラム 今週のビットコイン急騰は必然?仮想通貨は価格が動いてこそ面白い?

「えっ、ビットコイン価格めっちゃ上がってませんか!?」

同僚の声が室内に響き渡った。毎度のことだ、上がったと言ってもたかが知れているだろうと思い、何事もなかったかのように私は目の前のデスクトップに集中した。カタカタカタ…カタカタカタ…画面上を文字だけが走る。

「えっ、すごい!どんどん上がっていく!」

ここでも私は微動だにしない。2年以上毎日毎週の相場の動きを追っていると、ここ数カ月の上下数万円程度の変動は過去に比べてあまりに退屈なのだ。

「うぉぉぉぉ!!」

どうやら同僚は頭がおかしくなったらしい。私もさすがにこれは無視することができず、まさか、まさかねと思いながら価格を確認した。あれ、ほんまや。

4月2日のわずか数時間のうちにビットコイン価格が10万円近く急騰した。これまでの企業活動の蓄積、規制環境の改善、グローバルマーケットのリスクオン変化等々複合的な要因があるだろうが、今年入って仮想通貨市場の取引高が増加し着々と価格を伸ばしてきたことを考えれば、今回の急騰は必然であったと言えるのかもしれない。この急騰によって新規参入が増えるとまではいかないが、改めて仮想通貨売買を活発化させる投資家、市場に再参入してくる投資家も多いと思われる。当然価格が上がればスキャム勢も動き出すが、ここ最近の仮想通貨の投資環境整備やブロックチェーンの社会実装に向けた動きを見れば、その信用不安は小さい。

別の観点から感じたことがある。ネットでの煽りについてだ。過去の自分はネットでの煽りに対して反対的であったが、改めて見ると面白い。価格が高騰した途端、ここぞとばかりに「もっと上がるで!」「いや、また暴落くるで!」「また一服して横やで。」などと皆が好き勝手に値動きの予想を口にする。そこに値動きの根拠への言及は一切なく、もはやノリだけの世界だ。おそらく彼らは相場がどっちに振れようが構わないのだろう。彼らは値動きによるリスク感覚を楽しんでいるのだ。ただし“一般”投資家のことを考えれば、やはり煽りを正とするのは難しい。しかし、必ずしもそれは悪ではないと思った。

煽りに動くネット民のように、今回のビットコイン急騰によって、改めて仮想通貨の値動きが気になり始めた人は多いのではないだろうか。私もそのうちの一人だ。今もなお仮想通貨はボラティリティの高さが問題視されているが、改めて仮想通貨は価格が動いてこそ面白いと感じた。仮想通貨を投資活動ではなく暮らしの中で使うことを想定すれば、そのボラティリティは様々な弊害をもたらすだろう。しかし、投資家目線に立った時には仮想通貨ほど投資妙味のあるものはない。この投機と実用とのバランスを最適化する為にも、今週米国SECがトークンの証券該当基準に関する枠組みを発表したように、トークンの性質による棲み分けが必要であると考えた。

私の戯言はさておき、仮想通貨市場が息を吹き返して盛り上がりを見せるのはこれからだ。

 

編集校正:マネックス仮想通貨研究所