中国人の日本旅行は体験型が人気、花見はその典型例

3月も終わりとなり、北京でも最高気温が20℃前後にまで上がり、所々に花をつけた桜の木が見られるようになりました。冬の寒さが厳しいだけに、陽射しの明るさと合わせ、春のありがた味が倍増と言ったところです。

東京では早くも満開となるなど、日本では各地でソメイヨシノが開花し、桜前線が順調に北上中です。今週末を皮切りに、本格的なお花見シーズン到来といったところでしょうか。

近年、中国では訪日観光客の急増に伴い、SNSで各地の桜の名所が広く知れ渡ることとなり、「花見」が日本旅行の大きな動機、目的の1つになりつつあります。

中国最大手のオンライン旅行代理店Ctripによると、同社グループのサービスを利用し3~4月に日本に旅行した中国人の数は、昨年までの3年間に、毎年30%以上伸びているそうです。Ctripグループの幹部は、中国人の日本旅行について、「体験型など特定の目的を持った旅が人気を集めており、花見はその典型例となっている」と述べています。

旅行客の約6割が女性、シニア層も近年伸びている

花見の名所は日本各地にあり、また開花から満開の時期も異なるため、旅行客は早目に情報収集と比較検討を行い、だいたい出発の1ヶ月前くらいに手配を完了するそうです。

中国人は、大型連休などの時期を除き、旅行については直前に計画し、手配することが多いのですが、こと日本旅行、特に花見については特定の時期に航空便やホテルの予約が集中するため、「先手必勝」の様相を呈しています。

Ctripによると、旅行客の61%が女性で、年齢別では24歳から35歳の層が半数を占めています。加えて50代以上のシニア層も近年伸びているそうです。

北京で東京行きの便に乗りますと、まず目立つのは小さな子どもを伴った家族連れで、次いで若い女性のグループなのですが、旅行客の増加に伴い、小売、飲食などの業界では、より幅広い年齢層への訴求が必要になりそうです。

通年での旅客数も年々増加しており、昨年は11月までに800万人と既に記録を更新し、年間の消費額は1000億元(約1.65兆円)を超えたと見られています。

「景気急減速」と言われても日本への旅行人気は根強い

需要の増加に伴い、航空券の価格上昇が気になるところですが、近年、中国の航空会社が日中の地方都市間を結ぶ便を増やしており、Ctripによると、目立った値上げはないとのことです。
それでも、北京から東京への航空券の予約は、数年前と比べ明らかに早くから入るようになり、安価なチケットは争奪戦になっています。

また、搭乗客を見ますと、年を追うごとに中国人の割合が増え日本人が減っており、その日本人も見るからにビジネス関係者ばかりで、家族連れなど観光客の姿は極めて少なくなっています。
私も、友人たちに「美味しい中華料理をご馳走するので北京に遊びに来て欲しい」と勧誘に努めているのですが、反応は鈍いです。

航空券が安いこともあり、特に日本女性には台湾が人気です。大陸へとなると、中国の歴史あるいは書画骨董など、特定の分野への関心あるいは造詣がないと、なかなか足が向かないようです。

「爆買い一巡」あるいは「景気急減速」など、中国についてはこのところ暗い話が多くなっていますが、日本への旅行の人気は根強く、今後は北京などの大都市に加え、地方からの旅行客が増えることが見込まれています。

関連業界にとっては、まだまだチャンスが続くというところでしょうか。中国の社会構造、消費行動が単純なものでないことがうかがえます。

私は残念ながら花見のシーズンには帰国の予定がないのですが、多くの中国人旅行客が、またもちろん日本の皆様も、美しい桜を堪能できますよう、願いたいと思います。