投資をする人たちには、「家計の余剰金で運用をする」ということが鉄則です。ですが、最近投資を始めようとする人の中には、「何とか捻出できるさ」と楽観的であったり、毎月の家計が黒字ではないのに「国が勧めるiDeCoやつみたてNISAなどの良い制度を使わなくてはソン」と言わんばかりに、無理に投資を始めようとする人を見受けます。

そういう人にはまず、投資うんぬんよりも「支出を見直しましょう」とお伝えしていますが、どこから手をつけてよいかわからないことも多いようです。その場合、まずは一度削減するとその効果が長く持続する「固定費」の見直しをお勧めしています。今回はその中でも、削減効果が得られやすく、家計を黒字に導きやすくなる「生命保険の見直し」をする場合のポイントについてお伝えします。

生命保険の種類を知っていますか?

生命保険に関心のある人は多いでしょう。お金に関心のある方なら特に、良い商品に入りたいとアンテナを張っているかもしれませんね。自分に万が一のことがあった時にカバーしてくれる保険に入りたい、お金が増える、貯められる保険に入りたいなど、保険に入りたい理由は様々でしょう。

“生命保険”とは人にかかわる保険の総称です。

その目的は大きくわけて3つあります。

1.「死亡」:死亡した時に遺族の生活を保障する
2.「医療」:生きているときのリスクをヘッジする
3.「貯蓄」:老後資金や教育資金などに備える

考えてほしいのは、「今、この3つの保障の全てが必要だろうか」ということです。もしかすると「全部必要」という状況の人もいるのかもしれませんが、多くの場合はそうではないはずです。自分が必要な保障は何かを、家族状況や生活の仕方、今ある貯蓄などを考えて、総合的に判断することが必要です。

多くの場合に必要な保障は「医療 > 死亡 > 貯蓄」です。

そもそも論ですが、生命保険は基本的に損をすることを前提とした「賭け」のようなものです。保険金を受け取れるかどうかは将来的な健康の度合いにより異なるからです。ずっと健康で保険金をもらうようなことがなければ「入っていなくてよかった」と思うでしょうし、健康に自信があって入らずにいると、思いがけないけがや病気で医療費や休業の負担が重くなり「入っていればよかった」と思うでしょう。

自分の力だけではカバーできないところを見極めながら、必要な保障は何かを考え、付き合ってほしいものです。

今の私に必要な保険、どう選ぶとよい?

基本的に、生命保険は“必須”ではありません。もし、病気をしても、亡くなったとしても、必要なお金が準備できるほど資金があるのであれば、保険は入らなくてもよいでしょう。ですが、多くの方はそれができないから入ります。

日本には公的な医療費補助制度である「高額療養費制度」があります。健康保険が適応される医療費であれば、どんなに高額でもこの制度による自己負担の上限を超えることはありません。

ただ、保険診療外の治療費にはこの制度は使えないので、自由診療など保険診療とはならない治療が多いと言われる「がん、急性心筋梗塞、脳卒中」の三大疾病の保障は、検討しておくべきかもしれません。

家族構成で保険の加入の仕方を考えてみましょう。独身の方、共働きでお子さんがいないご夫婦の場合、まずは医療保障に入るだけでよいでしょう。万が一亡くなるようなことがあっても、生活を保障すべき人はいない世帯です。この場合、死亡保障は基本的に必要ないと言えます。

お子さんが生まれたご家族の場合、ご両親に万が一のことがあった場合の生活の保障という意味で、死亡保障を検討します。遺族年金も出るでしょうから、生活や学業の継続に不足する金額を保障できるように内容を検討します。

そして、お子さんが生まれた時、またはご自分たちの老後を意識した時、学資保険や個人年金保険などの「貯蓄を目的とした保険」を検討するかもしれません。

しかし、この貯蓄を目的とした保険は、昔は予定利率が良いものがあったのですが、近年はそういった商品はあまり見受けられません。何より、満期までに解約すると元本割れすることがありますし、途中で引き出すことができない流動性の悪い貯蓄となってしまいます。

また、使うことができないうちに、お金の価値が変わってしまい、お金を手にした時にはその価値が下がってしまっているということもあります。それであれば、もっと違う貯め方をしてもよいのではないかと思うのです。積み立てる仕組みをどうしても活用したいと思う人もいるでしょうが、多くの場合は、貯蓄を目的とした保険は必要ありません。

必要なものに、必要なだけ入る

このように保険にはライフステージや個人の考え方などにより必要な保障が異なるので、自分には何が今必要かを、きちんと考えて持つべきものだと思います。

よく、必要な保障が全部入っているからと、複数の保障が1つになったパッケージ型の保険に入る人がいると思います。ですが、よく見ると、その中には今の自分には不要だと思える保障が一部入っていることがあります。

ハンバーガーショップなどでいう「セット商品」を思い出してください。いろいろ入っていて割安だと感じ注文しますが、その中身は全部食べたかったものでしょうか。チキンとハンバーガーだけが欲しかったのに、ポテトも付いていて食べきれないとなると、それは“ムダ”と判断できます。無理して食べるかもしれませんが、本当は必要なかったのです。単品で買ったほうが安上がりだったはずです。

保険にもそれと似た部分があって、パッケージ型の保険には自分にとってはいらないものが含まれている場合があります。その料金を支払い続けるのは、意味がないかもしれません。それであれば、必要な保障に単品で入るほうが保険料が安く済み、家計には優しいと言えるでしょう。

こんなことを念頭に置きながら生命保険を見直していくと、保険料の削減が可能となり、家計の黒字化に近づいていくことができます。他にも見直すべきポイントはありますが、高額化しやすいこの支出は、ぜひ見直してほしいものの1つです。