今週の相場動向

相場回顧 BTCは投資家心理改善せず続落

BTCは業界各所で新しいサービスローンチの動きが相次ぐ中、依然投資家心理は改善に向かわず軟調な推移が続いた。

週後半にかけては、米中摩擦の激化懸念を理由に株式市場が大きく下落したことを受け、リスクオフムードの高まりから下げ圧力が強まった。BTC=40万円を割り込む場面も見られ、週足では10%以上の下落となっている。

XRPはR3が開発する決済アプリでのサポート等材料も見られたが、大きな買いには繋がらずBTC建てで横ばいとなった。BCHは騒動に進展見られず下落基調が継続しBTC建てで大きく下落した。その他、先週に続きFCTが強い動きとなっている。

 
 

今週のトピックス

  • 博報堂とALIS、トークンエコノミーで共同研究を行うと発表。(11/30)
  • Bittrade、来年1/8からHuobiとして新サービスを展開。(11/30)
  • NASDAQ、BTC先物のローンチ計画を正式発表。(12/3)
  • OKEX、新しいデリバティブ商品Perpetual Swap立ち上げを発表。(12/3)
  • MoneyForward、2019Q1の仮想通貨交換事業開始を目指す。(12/3)
  • Poloniex、機関投資家向けの専用サービスを開始。(12/4)
  • Binance、同社が開発を進めるDEXのデモ映像を公開。(12/4)
  • Bitwise、BTCとETHの仮想通貨ファンドを新たに立ち上げ。(12/5)
  • Bitfinex、主要ステーブルコイン5種の取引を開始すると発表。(12/5)
  • Ripple社やNEM財団等、欧州ブロックチェーン協会を設立。(12/5)
  • 米SEC、現在申請中の仮想通貨ETF審査期限を来年2月に延長。(12/6)

来週の相場予想

来週の相場予想

BTCは下落基調継続となるか。

BCH界隈の混乱により価格が下落して以降投資家心理が冷え込む中、今週米SECが現在申請中の仮想通貨ETF審査をさらに延期したことを受けて、売りが強まると思われる。その期限が来年であることから年内の回復は期待しづらい状況となった。

RSI指標は依然売られすぎとの見方を示しており、一定の買い戻しは入るかもしれないが、企業のサービス拡大に対する市場の反応も薄い状況で大きな上昇は見込まれないだろう。

BTC=35万円を割り込むか注目である。

来週のトピックス

  • HardFork Decentralizedが英国ロンドンで開催。(12/12-14)
  • Blockchain Summiが香港で開催。(12/12)
  • Blockchain Day Emiratesがドバイで開催。(12/15)
  • DEXON Hackathonが台北で開催。(12/15-16)

業界関連動向

規制動向 FINMAがフィンテックライセンス制度導入

12/3、スイス金融市場監督局(FINMA)はフィンテック企業の発展を促進する為のライセンス制度を導入し、その申請に関するガイドラインを公表した。

このガイドラインによれば、申請企業が国内に登録事務所を構え事業展開を行なっていることを前提に、企業の組織構成や役員の経歴、この先3年間の事業計画(P/L、B/S)等総合的な審査によってライセンスの取得可否が決定される。

そして、ライセンス取得企業は、資金を投資に回さずそこから金利支払いも発生しないという条件で、最大1億スイスフランの公的預金を受け入れることが可能となる。この制度は来年1/1に施行される予定であり、仮想通貨関連企業にとって比較的要求水準が緩やかなものと注目されている。

スイスは、これまでもICOや仮想通貨投資ファンドに関するガイドラインを公表しており、国全体として業界の発展に力を入れている。

個別企業動向① R3によるCorda普及に向けた取り組み

独自ブロックチェーン技術Cordaの開発を進めるR3は、企業向け仮想通貨決済アプリCorda Settlerを立ち上げ、まず初めにXRPをサポートすると発表した。

このアプリはCorda上に開発されたオープンソースのDappであり、企業はこれを使いCorda上で発生する支払い義務を仮想通貨で決済することが可能となる。R3とRipple社は、昨年にXRP購入のオプション契約を巡って訴訟争いにまで発展していたが、今年に入って関係が好転し和解に至った。今回の報道も両社の和解を表すものとしてXRPコミュニティでは好意的に捉えられている。

12/6には、Ripple社と関わりが深くR3の筆頭株主でもあるSBI HDとR3コンソーシアムが、Corda普及を促進する為、来年1月に合弁会社を設立する計画であることが報じられた。今後のR3、Ripple社、SBI HDの取り組みからは目が離せない。

個別企業動向② 問われるEOSの分散性

ETHに並ぶDappsプラットフォームとして業界で注目されるEOSだが、そのコンセンサスアルゴリズムDPoSに関して分散化を疑う議論が湧き上がっている。

EOSではトークンホルダーの投票によって選ばれた21のブロック生成者(BP)がトランザクション(TX)の承認を行うが、今回その内の一つであるStarteosがブログ上で自身への投票者に対して経済的インセンティブを与えることを示唆した。これを受けて、EOS界隈では彼らが目指す分散化や民主主義の概念に反する行為だと批判の声が上がっている。

特定のノードがその資金力を武器に権力を維持することになれば、それはこれまでの現代社会と変わらない中央集権的な構造となる。EOSは確かにTX処理速度の面で他通貨との優位性を保つが、ガバナンスの面ではBPへの権限集中が不安視されており、安全性を保証する意味で解決すべき課題は多い。

コラム 業界人のBTC価格予想は正直当てにならない

2018年も残りあとわずか、年末に差し掛かると思い出されるのがこれまで数々の業界人たちが予想してきたBTCの年末価格である。

大手取引所のCEOや著名投資家らが「2018年末にはBTC価格は~だろう。」などと一丁前に自信を持ってメディアのインタビューに答えるのだが、正直当たっていた試しがない。今年で言えば、米国の著名投資家であるMike Novogratz氏は昨年末にBTC=4万米ドルとの予想を立て、途中でBTC=9千米ドルと大幅に予想を下方修正したにも関わらず、それすら今の相場環境では外れそうである。

その他にも、機関投資家による仮想通貨市場参入を期待してか、今年の年末価格上昇を予想する人が大半であったが、実際には大きく下落している。

潜在的にはまだまだ上昇余地があるBTCだが、その予想は10年後の自分の未来を想像する程に難しいのかもしれない。

株式会社Baroque Street アナリスト 松嶋 真倫(編集校正:マネックス仮想通貨研究所